eぶらあぼ 2014.5月号
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36 世界三大ピアノコンクールの一つに数えられるエリザベート王妃国際コンクール。その2010年の覇者であるデニス・コジュヒンが、2011年、2013年に続いて今年も日本公演を行う。有名コンクールの優勝者だから、圧倒的なテクニックを披露してくれるから、というだけでなく、音楽に悠然と向き合う姿勢、個性的かつ説得力ある解釈で、着実に日本の聴衆を満足させてきたコジュヒン。これまでショパンやプロコフィエフの公演で評価を若き“音の魔術師”が挑む深遠な世界デニス・コジュヒン(ピアノ)固めてきたが、今年のプログラムは多彩だ。ハイドン「ソナタHob.16/23」に続き、フランク「前奏曲、コラールとフーガ」、シューベルト「4つの即興曲op.90」、ヒンデミット「ソナタ第3番」、それにブラームス「7つの幻想曲op.116」という選曲。フランク、シューベルト、ブラームスは作曲家の晩年に書かれた作品で、深く内省的な表現が求められる。今年28歳、勢いに乗るコジュヒンがどう聴かせてくれのるか楽しみだ。文:飯田有抄★5月20日(火)・紀尾井ホール ●発売中問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp/ⒸMarco Borggreve 第5回仙台国際音楽コンクールピアノ部門の優勝者、ソヌ・イェゴンの演奏が、いよいよ東京でお披露目となる。協奏曲を課題の中心とするこのコンクールは、これまでも、フレッシュであると同時にどこか熟達した部分を持ち合わせた若者が優勝する傾向にあった。今年25歳を迎えるソヌもまた、音楽への純粋さと聴衆を魅了する術の両方を兼ね備えたピアニストだ。 その成熟ぶりは、趣向を凝らした渋い選曲にも表れている。自身の音楽性を包み隠さず聴いてもらおうと言わんばかりに、モーツァルト「ソナタ第10“感情の旅”を体感するプログラム第5回仙台国際音楽コンクール 優勝記念演奏会 東京公演 ソヌ・イェゴン(ピアノ)番K330」から始める。前半最後には「強さと弱さ両面の感情を持つ作品で、ずっと演奏したかった」という、リストの「オーベルマンの谷」を据える。後半はロシアもの。演奏会からの季節を巡るように、チャイコフスキーの「四季」より「6月・8月・10月」を取り上げ、ラフマニノフ「ソナタ第2番」へとつなぐ。「感情の旅を経験してほしい」と語るプログラムで、実力を余すところなく発揮してくれるだろう。文:高坂はる香★6月20日(金)・浜離宮朝日ホール ●発売中問 朝日ホールチケットセンター03-3267-9990 http://www.simc.jp ピアノの宇宿真紀子とチェロの宇宿直彰による姉弟デュオ「レ・クロッシュ」が、リサイタル『ピアノ&チェロの世界』を開く。父親の海外赴任に伴って、幼少時に渡仏、パリ高等音楽院やルエイユ・マルメゾン音楽院大学院など共に名門に学んだ2人。修了後はヨーロッパ各国や日本でソリストとして活躍する一方、フランス語で「鐘」を意味する「レ・クロッシュ」の名を冠したデュオとしても幅広い活動を続けている。今回はR.シュトラウスのチェロとピアノのためのソナタを核に、サン=サーンス「あなたの声に心は開爽やかなヨーロッパの風を感じるレ・クロッシュく」やフォーレ「エレジー」、マルティーニ「愛の喜び」と佳品を通じて、響き合う“鐘の音”を披露。さらに、直彰がバッハ「無伴奏チェロ組曲第5番」、真紀子が同じく「イタリア協奏曲」やドビュッシー「子供の領分」を披露するなど、それぞれのソロでの聴かせどころもたっぷりと用意。今回のステージでも、2人の俊英が、爽やかなヨーロッパの風を吹かせてくれる。文:笹田和人★5月16日(金)・ルーテル市ヶ谷センター ●発売中問 及川音楽事務所03-3981-6052 http://maki-nao.com

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