eぶらあぼ 2014.5月号
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157 名匠・福田進一が、ギターで演奏可能なバッハ作品を網羅する取り組みも第4弾となった。今回、第1番を収録したことで、無伴奏チェロ組曲は全曲が完結。チェロでは“暗示”にとどまる和声も、ギターではリアライズされる場合が多いが、福田自身による編曲は、饒舌に過ぎて通奏低音の妨げにならぬよう、細心の注意が払われている。この結果、バッハと親交を結んだリュートの名手ヴァイスの作品を思わせる、独特の響きに。併録のリュート組曲や小品も含め、原曲のイメージを踏まえつつ、ギターならではの色彩感を追求する福田らしいアプローチも相まって、またも魅力ある1枚に仕上った。(寺西 肇)シンフォニア〜J.S.バッハ作品集4/福田進一J.S.バッハ(福田進一編):◎組曲ニ長調(無伴奏チェロ組曲第1番) ◎組曲イ短調(同第2番) ◎組曲ホ短調(リュート組曲第1番) ◎6つの小品「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帖」より ◎シンフォニア(カンタータBWV156より)福田進一(ギター) 東京芸術大学卒業ののち渡独、現在はザルツブルクに暮らし、演奏活動の傍ら母校であるモーツァルテウム芸術大学で教授を務める、ピアニストの三木裕子。ドビュッシーのピアノ作品が求める、鮮烈でありながらどこか霞がかかるかのような、絶妙な音色が響くアルバム。特に前奏曲集第1巻は、個々の作品が持つ真意に迫り、心から湧き出すものを音にしているという、熟慮のうえに自由さを感じる演奏。独特の世界観が余すところなく示されている。ブックレットには三木自身によるドビュッシーの生涯と作品についての充実した解説が掲載されており、これも興味深い。(高坂はる香)ドビュッシー:前奏曲集第1巻/三木裕子ドビュッシー:◎前奏曲集第1巻 ◎月の光 ◎2つのアラベスク三木裕子(ピアノ) ジャルスキーが4月に来日、1730年代のロンドンで聴衆を二分する人気を呼んだ2組の作曲家&歌手コンビによる舞台対決を再現するプログラムを披露する。本盤はそれと呼応する1枚で、先行のヘンデル&カレスティーニ組盤の続編。映画『カストラート』で描かれ、その名を知られた伝説の歌手、ファリネッリと彼を見出したナポリ派の作曲家ポルポラ組の代表曲を集め、その師弟関係に秘められたドラマをも紡ぎ出す意欲作。現代が誇るカウンターテナーの雄の歌唱は世紀のカストラートもかくやの見事さ。ゲストにバロック・オペラの名手バルトリを迎えた二重唱は特に圧巻!(東端哲也)ポルポラによるファリネッリのためのアリア集/ジャルスキーポルポラ:◎「アリアンナとテーゼオ」より ◎「ポリフェーモ」より ◎「アウリデのイフィジェニア」より ◎「オルフェーオ」より 他フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)アンドレア・マルコン(指揮)ヴェニス・バロック・オーケストラチェチーリア・バルトリ(メゾソプラノ/特別ゲスト) わが国を代表するクロマティック・ハーモニカ奏者、崎元讓が謳い上げる“四季”。「早春賦」に始まり、「夏は来ぬ」「赤とんぼ」「冬景色」など、日本人の誰もが何度も耳にし、歌った経験のある旋律に、当盤のピアノや編曲を担当する美野春樹が折々の季節に寄せて綴った、素敵なオリジナル曲が挟み込まれている。芸術にまで昇華された崎元の音色は、奇を衒うようなことは一切なく、ただただ実直。しかし、この色彩の豊かさは、一体どこから来るのだろう。私たちがもともと抱く、この楽器の音色への親近感がそこへ共鳴を起こし、胸へと染み入り、やがて優しく琴線に触れる。(笹田和人)日本の四季〜芳春/崎元讓◎早春賦 ◎夏は来ぬ ◎浜辺の歌〜浜千鳥(メドレー) ◎赤とんぼ ◎冬景色 ◎七つの子〜こもりうた〜汽車ぽっぽ(メドレー) 他崎元讓(ハーモニカ)美野春樹(ピアノ)収録:2014年1月、横浜みなとみらいホールマイスター・ミュージックMM-2177 ¥2816+税収録:2013年4月、稲城市立iプラザナミ・レコードWWCP-7149 ¥2700+税ワーナーミュージックWPCS-12639 ¥2600+税収録:2013年11月、コピスみよしカメラータ・トウキョウCMCD-28301 ¥2800+税CDCDCDCD

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