eぶらあぼ2014.4月号
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52第659回 東京定期演奏会 ★4月25日(金)、26日(土)・サントリーホール ●発売中問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp特別演奏会 ★5月5日(月・祝)・東京オペラシティ コンサートホール ●発売中問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp 若く才能があるがまだキャリアの入り口にいる、日本では知られていないが海外では高い評価を得ている―そうした指揮者を発掘し、指揮台に立たせる人選眼には昔から定評のある読響だが、この5月に来日するダニエル・スミスも読響のスカウト力が光る公演となりそうだ。 オーストラリア出身でフルーティストとして出発したが、ヤルヴィ父子(ネーメとパーヴォ)やジャンルイジ・ジェルメッティ、ヒュー・ウルフらに指揮を学び、ここ数年、ショルティ国際(2位)、フィテルベルク国際(1位)、マンチネッリ・オペラ国際(1位)など主要指揮者コンクールを続々と制覇している。ローマ歌劇場のアシスタント・コンダクターとしてオペラの経験も豊富なこの若き俊英、当然のことながら各国の楽団からヨーロッパで大活躍の新鋭、初登場!ダニエル・スミス(指揮) 読売日本交響楽団客演依頼も殺到し、hr響(フランクフルト放送響)、マリインスキー管、ペーザロ・ロッシーニ・フェスティヴァルなどがすでに先鞭をつけた。そこに名乗りを上げたのが我らが読響、というわけなのだ。 映像資料などからは、笑顔を絶やさず楽団と客席を自分のフィールドに巻き込み、正確なリードで音楽を盛り上げていく個性の一端が垣間見える。晴れの東京デビューは5月5日、子供の日の特別演奏会。曲目も「未完成」「運命」「新世界」と、入門者にも優しいファミリー向けの選曲になっている。まずはお手並み拝見というところだが、そのフレンドリーな雰囲気で玄人筋のみならずクラシック初心者ファンの心をわしづかみにしてくれるかもしれない。文:江藤光紀“ヤマカズ”の魅力満開のプログラム山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 2009年のブザンソン指揮者コンクール優勝後、「21世紀のヤマカズ」というキャッチフレーズにはおさまらないのではないかと思えるほど、山田和樹は世界的なキャリアを足早に駆け上っている。その魅力を解析してみよう。まずオーケストラを短時間で自分の色に染め上げる力。山田が振ると角がとれた柔らかい音が出てくる。スイス・ロマンド管が彼を首席客演指揮者に抜擢したのも、このセンスがフランス語圏の好みにあっているからではないか。次に古典から現代までを網羅するレパートリーの幅広さ。耳の良さはピカイチで、複雑な無調作品でも見事に切り分ける。難しい曲になるほど闘志が燃え上がるらしく、時に炎のような激しいバトンテクニックを見せる。意外な選曲で聴きなれた曲の新しい“食べ合わせ”を提案したり、知られざる名曲を愉しく聴かせるプログラミングの妙にも注目したい。 4月の日本フィル定期は山田の長所が満開になりそうだ。『永遠の煌めき』というタイトルのもと、不死鳥伝説を描いた「火の鳥」全曲(ストラヴィンスキー)とニールセンの「不滅」が取り上げられるが、両曲ともに20世紀初頭に書かれている。「火の鳥」では山田の色彩感と耳の良さが存分に発揮されるだろう。一方、ニールセンの「不滅」は第一次大戦の不穏な気分を反映してか、調性が安定せず時に無調を思わせるが、最終部では2人のティンパニ奏者が協奏しダイナミックなクライマックスを迎える。この辺りでヤマカズはソフトな顔をかなぐり捨て、燃Ⓒ山口 敦え上がる闘志をむき出しにしてくれるのではないか。ノリのよい日本フィルが、どう応えるかも見所だ。文:江藤光紀

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