eぶらあぼ2014.4月号
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ぴっくあっぷ174 この1月に世を去ったアバドの“辞世の句”ともいうべきディスクは、半世紀近く前から数多くの名演を送り出してきたアルゲリッチとのモーツァルト。しなやかに流れるオーケストラにピアノが大粒の宝石を散らしていく。大家2人の掛け合いには間然とするところがなく、スケールが大きくゴージャスだ。堂々とした第25番には陽の輝きが生み出す居心地のよさがあり、一方第20番ではソロが両端楽章のもつ秘められた情熱に感応していく。ロマンツァは感傷的に歌うのではなく、そこはかとない気品を湛えた喜遊曲のように進むが、その結果、中間部の木管との激しいやりとりが聴き手の胸を鋭くえぐる。(江藤光紀)モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番・第25番/アルゲリッチ&アバドモーツァルト:◎ピアノ協奏曲第25番 ◎同第20番マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)クラウディオ・アバド(指揮)モーツァルト管弦楽団 橋本京子は、デュオや室内楽でマイスキーやカントロフを始め錚々たる顔ぶれと共演、世界に活動の場を持つカナダ在住のピアニスト。今回の録音はイニシャルがBの作曲家による舞曲ばかりを集めたもの。ピアノが持つオーケストラのような奥行きある響き、潔く刻まれるリズム、即興的で自然な起伏が鮮烈な印象を与える。特にブラームス「16のワルツ」は各曲の描き分けも見事。ホロヴィッツの師としても知られるブルーメンフェルトのマズルカのやわらかさ、一変バルトークで見せるワイルドな響き。彼女の音の引き出しの多さが存分に活かされた、刺激と心地よさに満ちたアルバム。(高坂はる香)4大B+ブルーメンフェルトによる舞曲集/橋本京子◎J.S.バッハ:パルティータ第2番 ◎ベートーヴェン:ウラニツキーのバレエ「森の娘」からロシア舞曲による12の変奏曲 ◎ブラームス:16のワルツop.39 ◎ブルーメンフェルト:3つのマズルカ ◎バルトーク:舞踏組曲橋本京子(ピアノ) クラリネットの定番協奏曲を3曲まとめて収録した、この楽器に親しむものにとって“利便性の高い”一枚。1985年から東京佼成ウインドオーケストラの奏者を務め、ソロや東京クラリネット・アンサンブル等で活躍する小倉清澄が、安定した技巧で華麗かつ優美な独奏を展開している。それにしてもバックが幕張総合高校のオーケストラ部というのは珍しい。同楽団には何と234名の部員が在籍。本作は管楽器が卒業生2名を含む選抜メンバー、弦楽器が2、3年生の演奏とのことだが、終始懸命な健闘ぶり。何よりソロ&オーケストラ全体から発せられる温かな愉悦感が心地よい。(柴田克彦)ウェーバー:クラリネット協奏曲全集/小倉清澄ウェーバー:◎クラリネット小協奏曲 ◎同協奏曲第1番 ◎同第2番小倉清澄(クラリネット)佐藤博(指揮)幕張総合高等学校シンフォニックオーケストラ部 バロックからロマン派に至る作品を、それぞれの時代の語法と楽器を用いて見事に弾き分けてきた桐山。我が国の古楽界きっての名手が、ヒンデミットのヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオラ・ダモーレのためのソナタ作品へ一夜にして挑んだ。そんな野心的なステージのライヴ。実は古楽界の先駆者でもあり、「現代」と言う単純な枠組みで括れない、ヒンデミットが孕む多層性が余さず捉えられているのは、彼に至る各時代へ真摯かつ丁寧に向き合ってきた桐山だからこそ。特に、無伴奏ソナタでは、作品の向こうにバッハの姿が明確にある。気遣いの行き届いた小倉のサポートも見事。(寺西 肇)ヒンデミット:ヴァイオリン&ヴィオラ・ソナタ集/桐山建志ヒンデミット:◎ヴァイオリン・ソナタop.11-1 ◎無伴奏ヴィオラ・ソナタop.11-5 ◎ヴィオラ・ソナタop.11-4 ◎ヴィオラ・ダモーレ小ソナタop.25-2 ◎無伴奏ヴァイオリン・ソナタop.11-6 ◎ヴァイオリン・ソナタop.11-2桐山建志(ヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオラ・ダモーレ)小倉貴久子(ピアノ)収録:2013年3月、ルツェルン音楽祭(ライヴ)ユニバーサルミュージックUCCG-1649 ¥2600+税収録:2013年6月、品川区立文化センターナミ・レコードWWCC-7747 ¥2700+税収録:2013年7月、幕張総合高等学校コジマ録音ALCD-3099 ¥2800+税収録:2013年10月、東京文化会館(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-2173-74(2枚組) ¥3790+税CDCDCDCD

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