eぶらあぼ 2014.3月号
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50 ワールド・ドクターズ・オーケストラ(WDO)は、世界40ヵ国以上で活躍する医師らにより、2007年にドイツ・ベルリンで創設。これまで、100人を超えるメンバーが世界各地に集まって12回のコンサートを開催し、「国籍や政治・経済的理由から、医療を受ける上で差別があってはならない」との理念のもと、収益を国際支援団体などに寄付してきた。福島と東京で開く今回のステージは、東日本大震災の復興支援コンサート。WDOの提唱者で音楽監督のシュテファン・ヴィリッチの指揮により、ベートーヴェンの交響曲第7番と、川久保賜紀(ヴァイオリン)と向山佳絵子(チェロ)をソロに迎“真の音楽の歓び”を知るワールド・ドクターズ・オーケストラ 2014 日本初公演えて、ブラームスの二重協奏曲を披露。さらに、テレビ番組の劇伴作品でも知られる和田薫の弦楽オーケストラのための作品「響画」、復興応援ソングの「花は咲く」が添えられる。また、東京公演では、日野原重明・聖路加国際病院理事長によるオープニング・スピーチも。真の音楽の歓びとは?その答えを知るステージになるだろう。文:笹田和人★3月21日(金・祝)・いわき芸術文化交流館アリオス(入場無料)(いわき事務局090-6225-9833)、23日(日)・東京芸術劇場(東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296) http://wdojapan.comシュテファン・ヴィリッチワールド・ドクターズ・オーケストラワンダフル one アワー 第9回★4月17日(木)15:00 19:30・Hakuju Hall ●発売中問 Hakuju Hallチケットセンター  03-5478-8700http://www.hakujuhall.jp 豊潤な音色と完璧な技巧、何よりも深い音楽性で聴衆を魅了するチェロの名手ウェン=シン・ヤンが、Hakuju Hallの人気シリーズ《ワンダフル one アワー》に登場。今回は、スイス人作曲家フーバーによる無伴奏作品「無限の転移」(1976)を核に据え、シューマン「民謡風の5つの小品」とショスタコーヴィチのソナタを配した、密度の濃いプログラムを聴かせる。 これまで同ホールへ3度登場し、バッハなど無伴奏で名演を披露したヤン。「今までの無伴奏と、今回のステージとの架け橋になるように『無限への転移』を中心に。シューマンの洗練された旋律は、後に続くフーバー作品への新しい響きへの“転移”を、さらに、ショスタコーヴィチへの“転移”をも、そっと後押ししてくれます」と説明する。 共演の占部由美子は、ミュンヘン音楽大学で多くのクラスの伴奏ピアニストを務め、同大の教授を務めるヤンとは同僚。 「彼女は、私の授業でも素晴らしい伴奏を務めてくれています。レパートリーは広く、私は何度も室内楽で共演し、音楽の愉悦を共有してきました。今回の共演も、たいへん光栄で、幸せに思います」 ところで、魅力的な音色を生むコツとは。 「技巧や自己制御は、音楽的解釈を表現する手段に過ぎません。ずっとその修練に明け暮れ、今もそれを怠りませんが、聴衆は技術の披瀝ではなく、演奏家固有の表現や解釈に期待しているのだと、常に肝に銘じています。そして、指や弓を動かす前に、自分は皆さんに何を伝えたいのか、明確に頭に描くのです」 9歳の頃、チェロを始めた。 「素晴らしい先生に巡り合えたことが、大きかった。課題の曲を練習し、彼女のピアノに合わせて弾くのが、楽しみで…。子供には、たとえ技術の修練でも、音楽を楽しむことが重要です」 そして今、自らも後進の指導に力を注ぐ。 「競争は激化し、高度な技術も要求される厳しい時代。でも、音楽への情熱があるなら、迷わず挑戦し、色々と吸収してほしい。その経験は、決して無駄にはならないでしょう」 ここ数年、特に19世紀の技巧的な作品の発掘に力を傾注している。  「技術的・音楽的に得るものが大きい。若い人にもぜひ、取り組んでほしいですね」 最後に「自分にとって音楽とは」と尋ねると、「人生であり、情熱。自分の愉悦であると同時に、音楽とその将来に、大きな責任をも負っています。私の使命は、音楽という素晴らしい贈り物を、聴衆に届け続けることだと思っています」と、素敵な答えが返ってきた。取材・文:寺西 肇キーワードは“転移”ですウェン=シン・ヤン(チェロ)インタビューマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます)Ⓒwww.wildundleise.de

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