eぶらあぼ 2014.3月号
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ぴっくあっぷ174 日米開戦前の米国で、毎朝15分のラジオ番組を10年以上担当するほどの人気を得ていた木琴奏者・平岡養一。2005年に同氏の愛器を譲り受けてマリンバ奏者から転身し、昨年は同氏との繋がりを描いた著作『木琴デイズ』も上梓した通崎睦美が、その音楽人生に捧げるような選曲で録音した渾身の1枚。愛奏曲を題材にした高橋悠治の「飼いならされたアマリリス」や伊佐治直によるファンタジックな曲想のタイトル曲など個性的な委嘱作品が盛り沢山だが、山田耕筰らに師事した台湾出身の伝説の作曲家・江文也が平岡に書き下ろした「祭ばやしの主題による狂詩曲」なども必聴。(東端哲也)スパイと踊子/通崎睦美◎モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタK.305第1楽章 ◎当摩泰久:アマリリス ◎野田雅巳:五〇年 ◎高橋悠治:飼いならされたアマリリス ◎伊左治直:スパイと踊子 ◎江文也:祭りばやしの主題による狂詩曲 他通崎睦美(木琴) 西脇千花(ピアノ)本村睦幸(リコーダー) タイトルの「下り龍」とは平野義久の地元、和歌山県新宮市に伝わる祭りのクライマックスで、松明を持った無数の男たちが山を駆け下りる場面を指す。音楽のスプラッターを思わせるこの激しい躍動を、ヴィルタス・クヮルテットが見事に描ききった。往年のラサール四重奏団の表現主義音楽と、クロノス・クァルテットのようなモダンなテイストが高度な融合を遂げたかのようである。瞬間ごとに変貌する音楽のなまめかしい姿を克明に記していく彼らの鋭い感性は、武満作品でも存分に発揮されている。密度の濃い2作品の後には、美しくアレンジされた日本民謡で癒しをもたらしてくれる。(江藤光紀)Descending Dragon/ヴィルタス・クヮルテット◎平野義久:Descending Dragon ◎武満徹:ア・ウェイ・ア・ローン ◎幸松肇:弦楽四重奏のための日本民謡組曲第3番ヴィルタス・クヮルテット[三上亮、水谷晃(以上ヴァイオリン)、 馬渕昌子(ヴィオラ)、丸山泰雄(チェロ)] 祖国チェコの音楽普及に力を入れるマルティン・カルリーチェクが、ヤナーチェクへの強い共感とともに綴るアルバム。作曲家が困難な人生を送っていた40代後半からの10年間に書き残したピアノ作品が集められている。ピアノ・ソナタ「1905年10月1日街頭から」は、クリスタルな音で伸びやかに鳴らされる和音が、不思議とそこはかとない暗鬱な空気を生み、心に触れる。「草陰の小径にて」や「霧の中で」では、一つひとつの小曲を通して移ろいゆく複雑な心の機微を描く。演奏機会の少ない小品も収録。民族的共感を持つものにこそ実現し得る、自然発生的な音楽がそこにある。(高坂はる香)ヤナーチェク・リサイタル/マルティン・カルリーチェクヤナーチェク:◎ピアノ・ソナタ「1905年10月1日街頭から」 ◎草陰の小径にて第1集 ◎同第2集 ◎霧の中で ◎思い出 ◎キリスト様はお生まれになったマルティン・カルリーチェク(ピアノ) 巨匠クラウディオ・アラウ最後の弟子、杉谷昭子によるピアノ小品集シリーズの第3弾。「愛」をテーマに精選された15の名曲が収録されている。彼女のピアノは、晩年のアラウを彷彿とさせる穏やかなテンポで、フレーズを慈しむようにしっとりと歌い込んでいく。また、ルバートが巧みで、過剰なエスプレッシーヴォや沈滞に陥ることが皆無なのも流石だ。中でも白眉は、チレア「フェデリーコの嘆き」や、プッチーニ「星は光りぬ」をはじめとしたオペラ・アリアの美しい編曲の数々。これらは杉谷が敬愛する20世紀の名テノール歌手、フェルッチョ・タリアヴィーニの十八番だという。(渡辺謙太郎)アモーレ〜珠玉のピアノ名曲選VOL.3/杉谷昭子◎シューマン:献呈 ◎チレア:《アルルの女》より「フェデリーコの嘆き」 ◎プッチーニ:《トスカ》より「星は光りぬ」 ◎《ジャンニ・スキッキ》より「私のお父さん」 ショパン:◎ノクターンop.72-1「遺作」 ◎ワルツop.64-1「子犬」 ◎同op.64-2 ◎カタロニア民謡:鳥の歌 他杉谷昭子(ピアノ)収録:2013年10月、東京オペラシティリサイタルホール(ライヴ)マイスター・ミュージック MM-2171 ¥2816+税収録:2013年7月、和光市民文化センター サンアゼリアコジマ録音 ALCD-7182 ¥2800+税収録:2012年12月、相模湖交流センターナミ・レコードWWCC-7743 ¥2500+税収録:2013年7月、横浜、ひまわりの郷アスタエンタテインメントPOCE-3443 ¥2381+税CDCDCDCD

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