eぶらあぼ 2014.2月号
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52富永 峻吉田恭子 ヴァイオリン・リサイタル Vol.14★3月7日(金)・紀尾井ホール ●発売中問 ムジカキアラ03-5739-1739他公演2/15(土)・名古屋/宗次ホール(052-265-1718) 年間を通して全国各地で様々な企画公演に引っ張りだこの彼女にとっても、特別な意味をもつ紀尾井ホールでの自主リサイタル。これまで秋に行われてきたが、14回目は3月に開催が決まった。共演は長年コンビを組んでいるピアニスト、白石光隆。こだわりのプログラムに込められたテーマが毎回楽しみなこの演奏会、今回はブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番が鍵のようだ。 「第3楽章の旋律に自身の歌曲『雨の歌』を引用したこのソナタは、フェリックス・シューマンが24歳で亡くなった直後に書かれていて、息子の死を悲しむクララを慰めるかのようなブラームスの愛と優しさがひたひたと滲み出ています。歌曲が持つ“魂を濡らす雨”という歌詞も素敵で、降るたびに気持ちも温かくなるような春の雨のイメージが3月の演奏会に相応しいと思ったのです」 何よりも“歌う楽器”としてのヴァイオリンの魅力に惹かれて、それを「今回のテーマ」とした。 「最初にヘンデルのソナタ第4番を持ってきたのも、彼がオラトリオやオペラをたくさん書いていることと、この曲がヴァイオリンから“歌心”を引き出すのに最適だと私が考えているニ長調だから。偉大な作曲家の有名なヴァイオリン協奏曲の多くはニ長調で書かれていますしね。あと“自由にして孤独”と親友ヨアヒムに言わしめたブラームスと、旅を愛し生涯独身を貫いたヘンデルにはどこか相通じるものがあると思います」 ブラームスとサン=サーンスには似ている境遇が。 「そんなヘンデルとオルガニストというところで繋がるのがサン=サーンスで、マザコンなところは歳上の女性好きなブラームスとも繋がる(笑)。ハバネラを選曲したのは、キューバ出身のヴァイオリニストと演奏旅行中、初冬のブレストで雨に降り込められたホテルでこの作品の着想を得たというエピソードが好きだからなのです」 毎回恒例のちょっぴりマニアックな楽曲として、今回彼女が選んだのはショスタコーヴィチ「24の前奏曲」など。 「スターリンによる最初の弾圧より前に書かれただけあって、この作品には孤高の天才作曲家の伸び伸びとした自由さが溢れていて弾くのが楽しいですし、音の数は少ないですが深いメッセージを感じます。最後にヴィエニャフスキの華麗なるポロネーズ第2番を持ってきたのは、彼も旅する作曲家であり、ヴィルトゥオーゾでありながら聴衆の心を揺さぶる“歌心”を持っていると思ったからです」 歌・自由・孤独…その知的探究心とイマジネーションを名器グァルネリ・デル・ジェスにのせて。いざ紀尾井町へ!取材・文:東端哲也“歌心”に浸ってください吉田恭子(ヴァイオリン)インタビュー 閑静な住宅街の一角に存在する、芸術溢れる異空間「sonorium」。豊かな響きと白壁を生かし、ビジュアルとサウンドのコラボレーションの可能性を追求してきたシリーズ『映像と音楽』が5年目に。注目は、幼少時からポルトガルやスペインに暮らし、ドイツでも学び、数々の国際コンクールで入賞を果たしたピアノの富永峻(とみながしゅん)による《イベリア半島のピアノ曲》。スペインとポルトガル、それぞれの美しい風景や街並みの映像と共に、両国を代表する作曲家の佳品を堪能する。「音楽のメッセージは、映像や言葉で補完される」と富永。「今回は、民族性の高い楽曲を選び、両作曲家のメッセージを多角的に表現sonorium 共催シリーズ2014 『映像と音楽』国それぞれの個性を際立たせたい」と話す。他にも、オリジナル楽曲で構成するAYANO(2/8)やピアノの光田健一(6/21)、チェロの佐藤翔らのフランス室内楽(5/18)、珍しいフィンランド歌曲を集めたバリトンの井上雅人(7/20)、ピアノと作曲の竹井良らによる《トスカ》のハイライト(7/27)と、個性的な全6公演が開催される。文:笹田和人イベリア半島のピアノ曲 ★2月22日(土) ●発売中問 オフィスTOMINAGA 03-3380-6847他公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.sonorium.jpⒸ岩切 等

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