eぶらあぼ 2014.2月号
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191 80歳を迎えてなお、旺盛な創作を繰り広げる一柳の近作から、コンチェルトを集めた一枚。聴きものは何と言っても最初のピアノ協奏曲第4番「JAZZ」。山下洋輔が切れ味するどい音と超絶技巧で、鍵盤上を所狭しと駆け回る。この派手な即興性はクラシック専門のピアニストにはなかなかできないだろう。一柳もガーシュインばりにずいぶんと思い切ったメロディーを書いている。舘野泉による左手のための同第5番「フィンランド」は対照的に、ほの暗さの中に力強さを秘めた音楽だ。種谷睦子のソロによる「マリンバ協奏曲」は、オスティナート音型でマリンバならではの運動性をよく引き出している。(江藤光紀)一柳慧:協奏曲集〜80歳記念盤一柳慧:◎ピアノ協奏曲第4番「JAZZ」 ◎同第5番「フィンランド」〜左手のための ◎マリンバ協奏曲山下洋輔(ピアノ)舘野泉(ピアノ)種谷睦子(マリンバ)藤岡幸夫(指揮)関西フィルハーモニー管弦楽団 福岡が生みロシアが育てた国際的ピアニスト・田中正也によるリスト&ショパン作品集。15歳で単身モスクワに移住し、ロシア・ピアニズムをその身体に染み込ませ、ロシア、イタリア、日本、フランスでのコンクールで優勝・入賞を果たして来た田中。リストの長大なソナタでは、そんな田中の表現力とテクニックが余すところなく披露されている。情熱的であるが、決して勢いに任せることなく知的に丁寧に音楽を紡ぐ。芯のあるアタックがあるかと思えば、夢見るような甘い音色も繰り出され、上腕までしなやかに使う身体を想起させる。彼の音楽に対する真摯な姿勢を伝える一枚だ。(飯田有抄)田中正也 plays リスト&ショパンリスト:◎ピアノ・ソナタ ◎鬼火 ◎ラ・カンパネラショパン:◎練習曲作品10-4 ◎ポロネーズ第6番「英雄」 ◎子守歌田中正也(ピアノ) メジャー・レーベルの筆頭格ともいえるドイツ・グラモフォンからリリースされたにもかかわらず、わずか300枚しか発売されなかったという幻のハーモニカ・アルバムの復刻盤。アメリカ人のジョン・セバスチャン(1916〜1980)はオーマンディ&フィラデルフィア管との共演歴などを誇るヴィルトゥオーゾ・プレーヤー。バッハ、ラヴェル、ミヨー、そしてホヴァネスまでをカバーし、最後には自作曲までも収録するなど、盤石なテクニックに加えて芸も幅広い。特にチェンバロとのバロック作品の相性が抜群だ。1958年の録音だがサウンドの鮮度も驚くほど高い。(大塚正昭)ハーモニカ/ジョン・セバスチャン◎ヴェラチーニ:ソナタ第1番 ◎テレマン:同第1番 ◎J.S.バッハ:ブレー〜イギリス組曲第2番から ◎ミヨー:水夫の歌〜ハーモニカとオーケストラのための「イギリス組曲」から ◎ホヴァネス:7つのギリシャ民族舞曲から ◎ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ ◎セバスチャン:フラメンコ風練習曲 ジョン・セバスチャン(ハーモニカ)レナート・ジョシ(チェンバロ、ピアノ) 巨匠デュトワも絶賛する新進マリンバ奏者の当レーベル・デビュー盤。タンゴとジャズをテーマにした作品が収録されており、このジャンルとマリンバの相性の良さを再認識できる。冒頭のピアソラ「リベルタンゴ」をはじめ、彼女の演奏は常に温かく落ち着いているが、音色の印象は“青”。まるで静謐な深海にいるような浮遊感に包まれる。また当盤はソロだけでなく、ピアノなどの他楽器との美しい掛け合いを楽しめるのも聴きどころ。中でも、注目の若手作曲家、挟間美帆の新曲で見せるソプラノ・サックス&コントラバスとのスタイリッシュなトリオが素晴らしい!(渡辺謙太郎)Passion/塚越慎子◎ピアソラ:リベルタンゴ コセンティーノ:◎タンゴマニア ◎タンゴ・バロッコ ◎ビジョルド:エル・チョクロ ◎ピアソラ:オブリビオン(忘却) ◎挟間美帆:アメリカ組曲 他塚越慎子(マリンバ)三枝伸太郎(ピアノ) 他収録:2010年〜2013年、大阪、ザ・シンフォニーホール,いずみホール(ライヴ)カメラータ・トウキョウ CMCD-28285 ¥2800+税収録:2013年8月、千葉、白井市文化会館ナミ・レコードWWCC-7742 ¥2500+税収録:1958年5月、ベルリン、イエス・キリスト教会TOWER RECORDSPROC-1349 ¥1143+税収録:2013年7月、コピスみよしオクタヴィア・レコードOVCC-00106 ¥3000+税CDCDCDCD

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