eぶらあぼ 2014.2月号
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189 金聖響と神奈川フィルが取り組んできたマーラー・シリーズが、第10番をもって終了した。筆者は数年前に実演で両者の「復活」を聴いたが、最後のロマン派としてのマーラー像を描こうとする金のリードに対し、オケは風通しのよいアンサンブルと軽めのサウンドで応えていた。その方向性が進んで艶やかな弦、まとまりのよい木管、たっぷりと歌う金管がゆったりとしたテンポの中で像を結び、透明感をもった広がりのある世界が出来上がっている。よくこなれている上に乱れらしい乱れもなく、高い集中力を保った佳演で、近年のこの団体の著しいレベルアップを実感させられた。(江藤光紀)マーラー:交響曲第10番/金聖響&神奈川フィル◎マーラー:交響曲第10番(デリック・クック補筆完成版)金聖響(指揮)神奈川フィルハーモニー管弦楽団 岩本は兵庫県出身で東京芸大に学び、国際的に活躍するピアノの新星。ロシア作品に思い入れを抱く彼女は、デビュー盤でセルゲイ・ボルトキエヴィチ(1877〜1952)の世界に挑んだ。無調へと流れる時代の中で、ひたすら美しい旋律を紡ぎ続けた異色の作曲家。日本初録音を含む6つの作品は、時にショパンを髣髴させる憂愁とロマンに、時にスクリャービン的な幻想に満たされたかと思えば、骨太なフーガ風の楽想も飛び出してくる。岩本は、この変幻自在なスコアへ正面から対峙。クリアな音色とタッチで真摯に紐解くことで、忘れられた作品群に光を当て、その魅力を掘り下げていく。(笹田和人)ボルトキエヴィチの世界 ピアノ作品集/岩本きよらボルトキエヴィチ:◎カプリッチョ ◎クリミアのスケッチ ◎10のエチュードより ◎4分の3拍子で ◎ピアノ・ソナタ第2番 ◎エチュード岩本きよら(ピアノ) 2011年に結成されたこのデュオはイスラエル人とパレスチナ人による異例のコンビ。それぞれソリストとしても活躍している二人だが、ひとたびピアノを突き合わせて演奏すれば、お互いに掛け替えのない相手にめぐり会ったかのように強く反応し合う。しかもそれは4手が2手のようにシンクロするのではなく、互いに競い合って2つの個性がより強く輝きだすようなイメージだ。何より20世紀ロシアの3巨匠が生んだ2台のピアノのためのいずれも個性的な3曲にふさわしく、実にエキサイティング。そんなワクワクするような美しい対話を体感できるデビュー盤だ。(東端哲也)デビュー/デュオ・アマル◎ショスタコーヴィチ:2台ピアノのためのコンチェルティーノ ◎ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ〜2台ピアノ版 ◎ラフマニノフ:組曲第1番「幻想的絵画」デュオ・アマル ヤロン・コールベルク(ピアノ) ビシャラ・ハロニ(ピアノ) 第一線の作曲家にして名ピアニスト、野平一郎のドビュッシー・シリーズ第1弾。初のシリーズというのは、キャリアからみて意外だが、それだけ満を持しての録音でもある。演奏は、帯に記された「繊細・精緻でクリスタルな音色、しかも骨太なドビュッシー像」が真に的確な形容。野平は、細身でクールな音響体にはせず、まさに骨太で雄弁な音楽を展開する。熱を帯びた語りの音楽とも、分析的な地点を超えた音楽ともいえようか。それは耳なじみの「アラベスク第1番」や「月の光」を聴けば明解にわかるし、前奏曲集も終始耳を惹き付ける。今後も引き続き要注目!(柴田克彦)ドビュッシー作品集Vol.1/野平一郎ドビュッシー:◎2つのアラベスク ◎前奏曲集第1集 ◎ベルガマスク組曲野平一郎(ピアノ)収録:2013年2月、横浜みなとみらいホールオクタヴィア・レコードOVCX-00073 ¥3000+税収録:2013年4月、相模湖交流センターBeltaレコードYZBL-1036 ¥2381+税収録:2013年8月、武蔵野市民文化会館(小)カメラータ・トウキョウCMCD-28297 ¥2800+税収録:2012年8月、品川区立文化センターナミ・レコードWWCC-7741 ¥2800+税CDCDSACDCD

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