eぶらあぼ 2014.1月号
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44沼尻竜典《竹取物語》 世界初演★2014年1月18日(土)・横浜みなとみらいホール ●発売中問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000http://www.yaf.or.jp/mmh ドイツ・リューベック歌劇場の音楽総監督に就任するなど、国際的な活躍を展開する指揮者の沼尻竜典が、オペラの作曲に初挑戦。題材は、日本最古の物語「竹取物語」である。横浜みなとみらいホールで自身のタクトにより、世界初演に臨む。オペラの世界を知り尽くしたマエストロの“新作”だけに、大きな話題だ。そして、主役のかぐや姫を演じるのは、日本を代表する歌姫・幸田浩子。「作品を通じて、日本の文化や風土はすばらしいと感じていただけたら」と抱負を語る。 一幕5場のオペラは、和歌のやり取りを通じて心を通わせる、かぐや姫と帝(友清崇)の感情の機微を軸に展開。ほかに、おきな(山下浩司)とおうな(加納悦子)も重要な役として登場する。台本も担当した沼尻は「これほど深遠なドラマのある物語が、平安時代に書かれたのは凄い。現代語による台本は、原作にほぼ忠実に書いた」と説明する。そして、沼尻自身が主役に指名したのが、国際的に活躍するソプラノの幸田だ。 「沼尻さんとは、いつも“オペラ指揮者と歌手”という立場ですが、歌手のことをよく理解して下さっているので安心して歌うことができます。今回は“指揮者で作曲家”の沼尻さんとご一緒できることがとても楽しみです」と幸田。「《竹取物語》は難しい知識がなくても伝わります。沼尻さんから、『子供も大人も皆が楽しめる、聴きやすいオペラを作曲した』とうかがって、日本の自然を題材にした《竹取物語》を世界の人たちに聴いてもらいたいと思いました。音楽で語られる、かぐや姫の世界を、多くの人に楽しんでいただけたらと思います」 欧州でも活躍していた幸田。「月へ帰りたいと願う、姫の心情が理解できるのでは?」との問いに「確かに向こうにいると日本が恋しいし、日本にいるとヨーロッパが恋しい。どちらにいても、互いの国に体の一部を残してきているという感じでしょうか。その意味では、月の世界と、地上のはざまで揺れ動く、姫の気持ちがよくわかります。私に限らず、世界中の人々が同じ気持ちになりうるし、皆さまに共感していただける心情かもしれませんね」 この作品は演奏会形式による初演の後、2015年2月にベトナム・ハノイ市のオペラハウスで、日越共同のキャストやスタッフにより、オペラ形式での上演を予定。 「日本のイメージについて、海外の方にも共通認識を持ちやすい作品でもあると思います。私は東日本大震災以降、日本のうたを歌いたいと強く思うようになりました。ベトナム公演も日本語上演ですが、『日本の文化や自然はいいな』と感じていただけるよう、かぐや姫を通じて“日本の心”を伝えられるような演奏をしたいと思っています」構成・文:寺西 肇日本の文化と風土のすばらしさを感じていただけたら幸田浩子(ソプラノ)インタビュー 「ソロ活動と作曲に専念したい」と30年にわたって在籍した名門リヨン歌劇場管弦楽団を2011年秋に退団、同年のうちに、ベートーヴェンから自作を含めた現代までの作品を取り上げた全6回の連続演奏会を開催し、大反響を巻き起こしたチェリストの津留崎直紀。今回は、彼が「青二才だった僕に、数多くの示唆を与えてくれた」と言う歴史的鍵盤楽器の先駆者・小林道夫の共演を得て、大バッハの「ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタBWV1027〜29」全3曲と、無伴奏フルート作品から編曲した「パルティータBWV1013」を披露する。「僕自身はエポック奏法や、そバッハの精神を求めて津留崎直紀(チェロ)&小林道夫(チェンバロ)ういった楽器か否かという論議にはあまり関心がないし、不毛にも聞こえる」と津留崎。「先人たちが伝えたかったメッセージは、そういった論議を通り越したところにあったのだと思う。だから、今回のコンサートも、チェンバロとモダンチェロで演奏する。しかし、演奏スタイルについては、いかなる時にもおろそかにしないで弾いてきたつもり」と熱っぽく主張する。文:寺西 肇★2014年1月26日(日)・東京文化会館(小) ●発売中問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jp津留崎直紀Ⓒ武藤 章小林道夫マークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます)ⒸKyoko Harada

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