eぶらあぼ 2014.1月号
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155 英文タイトルの「隠されたオーケストラ」とは? その心は、6人の奏者が弾くオルガン。独創的な取り組みを通じ、鍵盤楽器の世界に新たな地平を拓いてきたブリツィを筆頭に6人のオルガニストが、3つの演奏台を持つ珍しいオルガンをオケの代わりに使い、ショパンとシューマンの名ピアノ協奏曲を伴奏する“前代未聞”の試みに挑戦した。ソロのピアノも、オルガンと同年に作られたエラール製を使うこだわりよう。微細な強弱変化に難のあるオルガンに対峙して、がっしりと大づくりにする岡田と、メリハリを効かせるカテーナ、ソリストの対応が二者二様なのも面白い。未体験の響きの世界だ。(寺西 肇)ショパン&シューマン:ピアノ協奏曲集 6人のオルガン奏者による伴奏版◎ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ◎シューマン:ピアノ協奏曲岡田博美(ピアノ)コスタンティーノ・カテーナ(ピアノ)クラウディオ・ブリツィ(オルガン、指揮、トランスクリプション)ヴォルフガング・アーベントロート(オルガン) 他 実力派チェリスト、山崎伸子が行っているリサイタル・シリーズのライヴ第6弾。当公演はピアニストの選択が注目点だが、今回は名手・清水和音との意外にも初の本格的共演が実現した。演目は古典から近代のウィーンもの。しからば熟達者同士の端整にして雄弁な王道演奏となるのは必至。すべてが盤石で、しかも生命力に溢れている。「アルペジオーネ」の自然な歌い回しをはじめ、山崎のチェロには品格とコクがあり、的確なバランスでいながら“音が立つ”清水のピアノも見事。中でもピアノの比重が高いR.シュトラウスは、二重奏ソナタ本来の醍醐味を満喫させる。(柴田克彦)山崎伸子 with 清水和音 チェロ・リサイタル Vol.6◎ベートーヴェン:「魔笛」の「娘か女房か」の主題による12の変奏曲 ◎シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ ウェーベルン:◎2つの作品 ◎3つの小さな作品◎R.シュトラウス:チェロ・ソナタ 他山崎伸子(チェロ)清水和音(ピアノ) 大バッハへと繋がる、北ドイツ楽派へ多大な影響を与えた17世紀オランダの巨人スヴェーリンク。その偉業の割に知名度が低いのは、自筆譜や初版譜などの一次資料が一切遺っていないため。イタリアを拠点に欧州各地で活躍する名手・渡邊が、そんな“謎の作曲家”に光を当てる。録音に使用したオルガンは、1624年建造の名器。奇を衒わず、正攻法で作品と音色の美しさを前面に。中全音律の音の伸びが心地よい。そこに底鳴りするミュゼラー(ヴァージナルの一種)で添える、小品の効果も絶妙。バロック期の鍵盤音楽の基礎を築いた大作曲家の真価を再発見する、第一歩となろう。(寺西 肇)J.P.スヴェーリンク鍵盤作品集/渡邊孝J.P.スヴェーリンク:◎半音階的ファンタジア ◎わが青春の日は既に過ぎたり ◎緑の菩提樹の下で ◎涙のパヴァーヌ(J.ダウランド) ◎第9旋法によるトッカータ 他渡邊孝(オルガン、ミュゼラー) 最初に収録されている7分ほどの「耿」は西村が高校2年生の頃の作品。しかし習作というには成熟しており、続く最新作「沈黙の声」と並べると40年以上の時を超えて流れるセンスが感じられる。近年の西村作品には官能性がますます強く現れているが、本アルバムの中核をなす2つの室内交響曲「沈黙の声」「メタモルフォーシス」もそうした傾向をはっきりと示している。細かい音の綾が織りなすハレーションの中で歌い上げられるのは、狂おしい歓喜だ。その旋律は、“東洋のワーグナー”とでも呼びたくなるような息の長い波動を持っており、聴き手はこの波にのって光のかなたへと運ばれていく。(江藤光紀)沈黙の声〜いずみシンフォニエッタ大阪プレイズ西村朗西村朗:◎耿(こう) ◎室内交響曲第4番「沈黙の声」 ◎室内交響曲第3番「メタモルフォーシス[変容]」 ◎ベートーヴェンの8つの交響曲による小交響曲飯森範親(指揮)いずみシンフォニエッタ大阪収録:2012年5月、イタリア、トラーパニ、サン・ピエトロ教会カメラータ・トウキョウ CMCD-28293 ¥2940収録:2012年11月、津田ホール(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7738 ¥2835収録:2012年8月、ドイツ、タンガーミュンデ、聖シュテファン教会コジマ録音 ALCD-1140 ¥2940収録:2013年2月,2007年12月、大阪、いずみホール(ライヴ)カメラータ・トウキョウ CMCD-28290 ¥2940CDCDCDCD

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