eぶらあぼ 2013.12月号
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 前回に続いて原則3から書きます。ちょっとマニアックな説明になっているのではないかと申し訳なく思っておりますが、もし実際に音楽室を作られる場合には、ぜひ建築士さんや工務店さんなどの専門家に見ていただいて、具体的な施工としてはどうするか考える際のたたき台になってもらえればという思いで続けます。〈原則3 平行面をなるべく避ける〉 音は壁にぶつかると跳ね返りますが、平行面があるとエネルギーの続く限り同じ周波数の空気の振動が行ったり来たりすることになります。そうなると干渉がおきて、振動を強めあうところ、弱めてしまうところというムラができます。このムラが響きに色を付けてしまうのです。ただ実際に個人宅の音楽室を変形で作るのは難しい場合も多く、ここは極度に神経質にならないように、とのことでした。一番耳に影響のある音の高さを考えると2センチ角程度の大きさの凸凹が壁についているというのも悪くはないそうです。 同じような理由で、角材の配置も等間隔ではないほうがよいそうです。ただこの場合は完全にランダムである必要はなく、広狭広狭など、とにかくあるパターンの繰り返しであっても等間隔でさえなければOKということでした。〈原則4 吸音は部屋の四隅で〉 部屋が長方形だったりすると、縦方向・横方向ともに、ある特定の音を強めてしまうところが生じます。どういう高さの音が強められるかは部屋のサイズで決まります。そういう共鳴音は倍音成分の中でも比較的低音域が耳に着くことが多く、かつ理屈上、壁に沿って強めあうところができますので、縦方向と横方向の共鳴音が両方とも強めあう場所は、壁のぶつかり合う四隅になる、というわけです。ですから、ここでがっちりと低音を吸収すると、ぼけの少ないクリアで澄んだ音質を得ることができるのです。 低音は波長が長いので、どうしても吸音材はある程度の厚みが必要です。永田先生は最低30センチと仰っていました。四隅に吸音材を積むのもよいですし、拙宅は天井の両端を斜めにおろし、その部分だけ天井をすのこにして、その裏に吸音材を張りました。両端だけ斜めにおろしましたから、中央部では天井の高さを維持しつつ、壁際では余裕で40センチほどの吸音層を取ることができます。〈原則5 反射面と吸音面の両方を考える〉 白色や鏡が光を反射し、黒が吸収してしまうように、壁の材質によって音が跳ね返される壁、吸収される壁があります。光で考えれば全反射にするとぎらついた部屋になりますし、全吸収にすると暗すぎます。音も同じく、反射と吸収が適度なバランスを持っていることが大事とのこと。実際には壁には本棚やCDラックなどがありますので、そういうものをうまく使えば、個人宅の音楽室のサイズでは、意図的な吸音壁は全体の壁面積の1/5~1/4程度でよいのかもしれません。大ざっぱに言えば拙宅の比率はそんな感じじゃないかと思います。 さらに続きます。文:上杉春雄#26 木造音楽室設計の基本5原則 その3informationバッハ平均律にみる世界観XI講師:中野 雄(音楽プロデューサー) 上杉春雄(ピアニスト)★2014年1月25日(土)13:00・新宿/朝日カルチャーセンター 朝日JTB・交流文化塾問:朝日カルチャーセンター03-3344-1945http://www.asahiculture.com/shinjuku/春畑セロリ(作曲家)と上杉春雄の「音楽薬膳」★2014年1月26日(日)14:00・横浜市栄区民文化センターリリス問:コレーゲステーション(FAX)045-821-3926/  045-591-1588※詳細はWEB(www.uesugi-h.jp)でご確認くださいphoto by Takahiro Hoshiai1988年にサントリーホールでデビュー・リサイタルを行い、東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)より4枚のアルバムを発売。オーケストラ・アンサンブル金沢、東京フィル、読売日響などのオーケストラや、池辺晋一郎、川本嘉子らと共演、NHK「芸術劇場」でも活動が紹介される。バッハの平均律全曲演奏会は高い評価を得た。東京大学大学院修了。医学博士。HP:http://www.uesugi-h.jp/うえすぎ・はるお181

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