eぶらあぼ 2013.10月号
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94【CD】『Moon De+light U』MUNIQUE Inc.MUCD-0004 ¥200010月1日(火)発売 デビューから10年、マリンバの表現の可能性を切り開いてきたSINSKEが、《花鳥風月》と題した記念コンサートを行う。あたたかさと、クールで先鋭的な表情を持ち合わせたマリンバの音色を活かし、多彩なコラボレーションを行ってきたSINSKE。今回満を持して臨むのは、日本舞踊、尾上流四代家元の三代目・尾上菊之丞との共演だ。 「昨年から本番までの1年間、作曲・演奏で日本舞踊の新作公演に携わり、とても濃密な時間を過ごしました。そのときは演出としての参加でしたが、きっかけを下さった菊之丞氏とステージ上での共演を切望し、東京・大阪・福岡公演にゲスト出演していただくことになりました。マリンバは演奏スタイルに“踊り”の要素が強く、音のつながりを視覚的に感じることができる楽器。ふたりの動きがシンクロし、そのイメージが一つの音楽となって羽ばたいていくような舞台にしたいです」 尺八の藤原道山とのデュオ活動をきっかけに、日本の伝統芸能と接する機会が増え、感じるものも変化してきたという。 「マリンバの“木の響き”は日本の伝統的な芸術と調和します。相撲の拍子木もそうですが、木の楽器は日本文化と密接なつながりがあるのですよね。最近は、自分から湧き出すものにも日本を感じるようになりました。同時に、独特の深い間合いなど、邦楽の世界にとてつもないハードルの高さを感じます。素晴らしい演奏には、底の深さが分からない湖のような、肌寒さを感じるような静謐さがあるのです」 ピアノ教師の母を持ち、クラシックを聴いて育ったというSINSKE。桐朋学園大学ではオーケストラの打楽器奏者を目指して研鑽を積んでいたが、3年生のときに後の恩師・安倍圭子の演奏に魅了されてマリンバに転向した。 「昔からブラームスが好きで、交響曲第1番のティンパニに憧れて打楽器を始めました。やはり育ってきた環境は大きく、一番美しさを感じるのはクラシックの世界です」 目の前のものに夢中で挑み続けてここまでやってきたが、この先の10年は「自分の内にあるものを見つめ、自ら指針を出していきたい」と語る。ジャンルを越えた活動ゆえの使命感もある。 「クロスオーバーの音楽家にとって、リスナーをさまざまな世界にお連れして楽しさを伝えることは使命だと思っています。そしてマリンバがよりメジャーになり、生活の中で常に耳に触れる楽器になるよう、活動を続けたいですね」 “花鳥風月”をテーマにした4連作アルバムの完結編にあたるニュー・アルバム『Moon De+light U』も、クラシックからポップスまでを収め、「どんな世代の方でも、ぱっと見て持ち帰りたくなるような親しみやすい内容」となっているそう。10周年記念コンサートに合わせて発売されるこちらも楽しみだ。取材・文:高坂はる香デビュー10周年記念マリンバコンサート花鳥風月★11月2日(土)・ヤマハホール●発売中問ミュニーク03-5786-2244※他全国公演の情報は下記ウェブサイトでご確認ください。http://sinske.jp/リスナーをマリンバでさまざまな世界にお連れしたいSINSKE(マリンバ)インタビュー とんがった音楽ファンの好奇心をくすぐる東京オペラシティのB→Cシリーズ。10月には、現代音楽を中心に活動するソプラノ太田真紀が登場する。同志社女子大学と大阪音大大学院で学び、大学院の時から一貫して現代音楽に取り組んできた新鋭だ。2007〜10年、邦人現代曲を多く演奏する東京混声合唱団に在籍し、11年から1年間はローマに渡り、イタリアの現代作曲家ジャチント・シェルシのエキスパートとして知られる大ベテラン平山美智子のもとでシェルシを研究するなど、自らのレパートリーを見据えたぶれのない現代曲のエキスパートが挑むバッハ東京オペラシティ Bビー・→トゥー・Cシー 太田真紀(ソプラノ)歩み方が頼もしい。演奏曲は、バッハとシェーンベルクという200年を隔てたドイツ音楽の両雄を底流に据えて、シェーンベルクの孫弟子であるシェルシの「山羊座の歌」抜粋、そしてシェルシと同時代のダッラピッコラ。さらに酒井健治の新作初演と細川俊夫の二人の日本人作曲家を加えたラインナップ。これを逃せば次にいつ生で聴けるかわからない貴重な機会だ。文:宮本 明★10月8日(火)・東京オペラシティ リサイタルホール ●発売中問東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jpⒸslot photographic

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