eぶらあぼ 2013.10月号
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86【CD】『ロマンティック・メロディーズ』日本コロムビアCOCQ-85022 ¥2940 この9月に2年ぶりのCD『ロマンティック・メロディーズ』をリリースした高嶋ちさ子。前作『アダージェット』につづくクラシック集は、ヴァイオリンの美味しいメロディばかりを集めたような、ファン垂涎の一枚だ。 「コンサートでも、クラシックの名曲はお客さんの反応がいいのです。こちらの姿勢も少し違って、ポップスは、みなさんも曲に対するそれぞれの思いで聴くから、こちらがあまりごり押ししても仕方がない。だけどクラシックは、曲に対する自分の思いを乗せてわかりやすくお客さんに伝えなければなりません。ただ音符を並べて弾いてもダメで、自分のほうからメロディを引っ張り出しに行く感じでしょうか」 CDは、単なる名曲アルバムではなく、初めて知るような作曲家の名もあるし、よく知った名曲に「うーむ」と唸らせるような新しさを感じさせる編曲の作品も収められている。 「収録曲は、誰でも知っている曲、私が好きな曲、そしてインターネットで見つけて気に入った曲など、さまざまです。比較的珍しいところだと、配信サイトで見つけて、カナダの作曲家本人に直接問い合わせて楽譜を送ってもらったビル・ブリッジスの『ケルトの歌』や、私がマイアミのオーケストラにいた時にも弾いたポール・シェーンフィールドの『カフェミュージック』あたりでしょうか。聴いてくれたヴァイオリン・キッズたちの新しいレパートリーになればうれしいですね」 年末にかけて、やはり2年ぶりとなる、「12人のヴァイオリニスト」を率いての、全国30公演のツアーも始まっている。 「ツアーでは、前半をニュー・アルバムからの数曲で構成しています。自分の子供たちがまだ幼く、なるべく家を空けないようにしていますので当日移動も多くなり、ツアーは体力勝負です。でも最近は、12人のみんながすごく気をつかってくれて、彼女たちだけで結構音楽を作ってくれています。『あとは私が入るだけ』のような状態になっているので、気分的にはとても楽ですね。とはいっても、甘やかしてはいけませんので(笑)、ツアー中に担当パートを変えたり、ソリストを当日舞台の上でじゃんけんで決めたりというような新機軸も用意しています。緊張感を保ったステージをお楽しみに!」 ステージでの彼女のトークの鉄板クォリティは、説明不要。しかし決して聴き逃してはならないのが、メロディに対するナチュラルな執着心だ。ぜひ先入観なしに、CDを、コンサートを聴いてみてほしい。美しい歌を、必ず感じるはずだ。取材・文:宮本 明高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト★9月28日(土)・オリンパスホール八王子、10月26日(土)・大阪/ザ・シンフォニーホール、27日(日)・かつしかシンフォニーヒルズ、12月17日(火)・サントリーホール、22日(日)・愛知県芸術劇場コンサートホール 他公演情報は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.j-two.co.jp/chisakoさまざまな美しいメロディを存分に高嶋ちさ子(ヴァイオリン)インタビュー その圧倒的な歌声と表現力こそ、“世界の至宝”と呼ぶべきものだろう。連綿と続く伝統を礎とした、ロシア合唱芸術の粋を現代に伝える国立モスクワ合唱団。1972年、ロシア合唱界の権威であるウラディーミル・ミーニンによって組織され、古典作品や民謡はもちろん、現代作品の初演にも積極的に取り組んで、ロシアを代表する名人集団として、国内外にその名を轟かせている。日本にも1986年以来、たびたび来日を重ね、合唱芸術の神髄と奥深さを伝え続けている。今回も、芸術監督のミーニンに率いられての来日ツアー。まずは、ラフマニノフの記念碑的作品である「晩祷」から厳選したロシア合唱芸術の真髄国立モスクワ合唱団9曲に、「ヴォルガの船曳き歌」「カチューシャ」などロシア民謡を組み合わせたステージ(10/11)を。そして、「黒い瞳」「赤いサラファン」「トロイカ」など、日本の音楽ファンにも馴染み深く、独特の陰影が琴線に触れるロシア民謡を特集するステージ(10/16)も。人の声が持つ、限りない生命力に勇気づけられる体験が待っていることだろう。文:笹田和人★10月11日(金)、16日(水)・東京オペラシティコンサートホール ●発売中問ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演は上記ウェブサイトでご確認ください。ウラディーミル・ミーニン国立モスクワ合唱団

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