eぶらあぼ 2013.10月号
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64ダン・エッティンガー (指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団  近年、漆原啓子と練木繁夫がデュオを組み、素晴らしい成果をあげている。2人は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタに取り組み、2009年から11年にかけて全曲録音を行っただけでなく、12年3月には、《東京・春・音楽祭》において、1日でベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲を演奏した。その日の演奏は、まさに2人の音楽的な充実ぶりを伝えるものであった。特に、漆原のヴァイオリンには、若い頃から培った技量に音楽表現の幅や深さを加え、気品すら感じられた。1981年にヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝し、早くから注目されてきたが、経験を積んだ今こそが彼女を聴くべきときだと思われる。 2014年1月のデュオ・リサイタルでは、2人が手掛けてきたベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタから第5番「春」と第7番が演奏される。漆原はよく考えられたヴィブラートで多彩な音色を披露することだろう。リサイタルの後いまが“旬”のデュオに期待漆原啓子 (ヴァイオリン)&練木繁夫(ピアノ)デュオ・リサイタル 半はフランス音楽で、フランクのヴァイオリン・ソナタ、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。フランクでは、2人のベートーヴェン演奏からの進化型が聴けるだろう。オーケストラの音をイメージするという練木のピアノも楽しみ。「序奏とロンド・カプリチオーソ」や「ツィゴイネルワイゼン」では、漆原のヴィルトゥオジティが満喫できるに違いない。文:山田治生アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2013/14後期★2014年1月25日(土)・東京オペラシティ コンサートホール  ●発売中問 ジャパン・アーツぴあ 03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp 豪快さと歯切れのよさを備えた指揮で、毎回大きな反響を呼んでいるダン・エッティンガーが、東京フィルの常任指揮者として3年目を迎える今秋、リムスキー=コルサコフの豪華絢爛な音楽絵巻「シェエラザード」に挑む。「アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)」を題材にした交響組曲で、作曲者の創作意欲が生涯で最も湧き上がっていた頃に書かれた作品だ。主人公のシェエラザード姫を象徴したコンサート・マスターが奏でる甘美なヴァイオリン・ソロや、管楽器の華々しいソロなども含め、イスラエル生まれの俊才が、この多彩でエキゾティックな傑作をどのようにまとめ上げるかに期待が高まる。 そして、今回の公演でもう一つのお楽しみは、トルコの鬼才ピアニスト、ファジル・サイをソリストに迎えたラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調」。同時期に書かれた「左手のためのピアノ協奏曲」の重厚さとは対照的に、古典的な優雅さや叙情性にあふれてい俊才たちが紡ぐエキゾチシズムるのが特長だ。作曲者自身、「モーツァルトやサン=サーンスと同じ美意識で書いた」と述べているように、実に明快で見通しのよい構造で書かれている。それだけに演奏者の技量や資質が問われる難曲。スリリングな煌きを放って疾走するサイのピアノは、エッティンガー&東京フィルの情熱的かつ献身的なサポートを受けながら、鮮烈で純度の高いラヴェルを聴かせてくれるに違いない。文:渡辺謙太郎第839回 サントリー定期シリーズ ★10月25日(金)・サントリーホール第840回 オーチャード定期演奏会 ★10月27日(日)・Bunkamuraオーチャードホール●発売中問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jpファジル・サイⒸMarco Borggreveマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます)ダン・エッティンガーⒸ三浦興一練木繁夫漆原啓子 Photo:篠原栄治

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