eぶらあぼ 2013.10月号
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58 音楽界の未来を担う、若い才能を紹介する王子ホールのシリーズ《transit》。第4弾には、第14回チャイコフスキー国際コンクールの覇者となったアルメニア出身のチェロの新星、ナレク・アフナジャリャンが登場する。室内楽奏者として高い評価を得ているピアノのノリーン・キャシディ=ポレーラとの今回のステージは、日本で初めての本格的なリサイタル。その選曲は、実に個性的だ。前半では、アフナジャリャン自身が「オープニングとして最適」と評するベートーヴェン「《魔笛》の主題による7つの変奏曲」で幕を開け、続いて「チェロのために書ロシアから新星がまた一人ナレク・アフナジャリャン(チェロ)かれた最も驚嘆すべき曲」というショパン「序奏と華麗なポロネーズ」を演奏。そして、後半のブロナー「ユダヤ人〜生と死」では、口笛と歌も披露。「たくさんの人に聴いてほしい」と思い入れもたっぷりのフドヤン「無伴奏ソナタ第1番」に続き、「演奏するのが楽しい」と言うラフマニノフのソナタを取り上げ、最後にロストロポーヴィチの「ユーモレスク」で偉大な先人へのオマージュを捧げる。文:笹田和人transit vol.4 ナレク・アフナジャリャン★10月25日(金)・王子ホール ●発売中問王子ホールチケットセンター03-3567-9990 http://www.ojihall.jpⒸRuth Crafer 1972年に日本音楽コンクールで優勝。翌年に日本フィル「第九」と大阪フィル「森の歌」でソリストとしてデビューしてから40周年。オペラにコンサートに、貴重な日本人バス歌手として、主要なレパートリーのほとんどすべてを歌ってきた。なんといっても大切な経歴が、ロシア民謡まで含めて、ロシア音楽の膨大なレパートリーを、楽譜の入手すら容易ではなかった時代から開拓し紹介してきたこと。この業績に対して、2010年には日本政府かロシア芸術の粋を聴く岸本 力(バス) デビュー40周年記念リサイタルら文化庁長官表彰賞を、2012年にはロシアのメドベージェフ大統領からプーシキン・メダル(ロシア文化勲章)を授与されている。10月の40周年記念リサイタルでも、リムスキー=コルサコフの「プーシキンの詩による5つの歌曲」とプーシキン原作のオペラ《モーツァルトとサリエリ》を歌う。ピアノは村上弦一郎。共演にテノールの小林大作と俳優の森山太(朗読)。深くきれいな響きの熟達バスが描く、プーシキンの世界。文:宮本 明★10月11日(金)・東京文化会館(小) ●発売中問二期会チケットセンター03-3796-1831 http://www.nikikai.net 全80席の贅沢な空間、汐留のベヒシュタイン・サロンで、興味深いデュオ・リサイタルが行われる。 東京芸大在学中、先のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール最年少ファイナリストとなったことも話題となり、ピアノ界のホープと目されている阪田知樹。一方、ピアニストとして活動しながら東京外国語大学を卒業、その後指揮も学び、多方面で活躍する内藤晃。今注目の二人が、リストやドビュッシーが賞賛したことで知られる老舗メーカー、ベヒシュタインのピアノで共演する。 各人のソロによる小品も織り交ぜつベヒシュタインで聴く若い才能阪田知樹&内藤晃 Duo Liveつ、モーツァルトの2台ピアノのためのソナタやチャイコフスキーの「くるみ割り人形」、ラフマニノフの2台ピアノのための組曲と、詩的な旋律から力強い音楽までを披露。知的で華やかな2人のピア二ズムは、それぞれの個性を際立たせながら、絶妙に絡み合うことだろう。 サロン風のスペースで格別な輝きを放つベヒシュタインの音、旬のピアニストの音楽を、存分に味わう一夜となりそう。文:高坂はる香★11月3日(日・祝)・汐留ベヒシュタイン・サロン ●発売中問汐留ベヒシュタイン・サロン03-6432-4080 http://www.bechstein-salon.com内藤 晃阪田知樹

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