eぶらあぼ 2013.10月号
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52原:リクライニング・コンサートには、皆さんにもご出演いただきましたが、椅子の背もたれを倒して寝てしまってもいいコンサートなんて前例がありませんでした。客席を可動式のリクライニング・シートとして設計したからこそ実現できましたけれど、そういうニーズがあるのか、そしてお客様やアーティストの反応はどうなのかという心配もあったんです。長谷川:お客様も気持ちよく寝ていらっしゃる方がいて、独特の雰囲気がありますね。林:なにしろ最後列まで全員の顔が見えますから、どのくらい寝ていらっしゃるのかもわかるんです。三舩:リクライニング・シートに座っていても、結局姿勢を正して通常のコンサートと同じように聴いている方もいらっしゃいますから、それぞれのスタイルで自由に聴いていただければ。長谷川:寝息をたてている方もいらっしゃいますけれど、こちらから「起きてください」とは言えませんよね。私は、ご自宅でお好きなCDをのんびりと聴いているときのように、リラックスしていただければいいと思うんです。原:最初の頃は寝息が聞こえることに対する苦情もありましたけれど、ある時からリクライニング席のブロックとそうでない普通の席のブロックを前後で分けたんです。お客様のご希望があれば鼻を挟むクリップも貸し出そうと、用意していたこともあるんですよ。全員:(爆笑)林:コンサートですから、完全に「今日は寝に来ました」という方はいらっしゃらないでしょうし、静かな寝息もコンサートの一部だと思えるような雰囲気づくりができれば、このホールならではのスタイルになりますね。原:第100回となる来年1月のリクライニング・コンサートには、ギターの大萩康司さんとサックスの平野公崇さんも加えて、皆さんにも出演していただきます。三舩:Hakuju Hallならではの顔ぶれですし、内容が濃い1時間になるでしょうね。長谷川:私たちも、また2年前の復興支援コンサートを思い出したりしながら楽しみたいですし、こんな楽器と声の組み合わせが揃うんですから、オリジナルの曲を作ってもいいんじゃないかしら。林:あ、それも私賛成です。いらしてくださるお客様には、音楽を聴いて元気になっていただきたいです。今後もユニークな企画が盛りだくさん長谷川:ホールも素晴らしいですけれど、楽屋に椅子式のヘルストロン(運営会社である白寿生科学研究所が製作している家庭用の医療機器)が置いてあるのもうれしいんですよ。リハーサルから解放長谷川陽子(はせがわ・ようこ)チェリスト。9歳からチェロを始め、15歳で第54回日本音楽コンクール第2位入賞、高校3年でリサイタルおよび協奏曲デビューと、早くからその才能を開花。桐朋音楽大学在学中にリリースしたデビュー・アルバム『珠玉のチェロ名曲集』はクラシック・ヒット・チャート第1位に。世界各国のオーケストラとの協演やリサイタル、CD録音と幅広く活躍する一方、その好感度の高さから企業広告への出演も多い、実力と人気を兼ね備えたチェリスト。ホール内部 ⒸAlbert Abut 写真Nacása&Partners Inc三舩優子(みふね・ゆうこ)ピアニスト。東京に生まれ、6才から12才の間をニューヨークで生活。桐朋学園大学在学中の1988年に、第57回日本音楽コンクール第一位に入賞。90年には文化庁派遣研修員としてジュリアード音楽院に留学、カーネギー・ホールなどでのリサイタルを経て、92年に帰国。以降、国内外の主要オーケストラとの協演やリサイタルなどで活躍。CDのリリースも多数。繊細な美しい音色とダイナミックな演奏で聴衆を魅了している。

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