eぶらあぼ 2013.10月号
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(テノール)、そしてN響メンバーによる室内オーケストラとの、異色のコラボレーション企画だ。オペラ歌手たちがクラシックの名曲を届けるのに加え、五木は自らの代表作をオーケストラ編曲版で披露する。 オーケストラとの共演ではやはり歌い方も変わるという。「私はマイクを使って歌いますが、オーケストラと合わせるときには、できる限り生の声を聴かせる気持ちで臨みます。楽器の生の音に自分の歌声を溶け込ませるという感覚です。以前、『第九』日本語バージョンのバリトンパートを歌ったこともあります。ハーモニーのひとつとなって歌うという普段と異なる感覚には、なじむまで時間がかかりましたが、のめり込んで一生懸命勉強しましたね」 クラシック音楽については、奥様(元女優の和由布子)のほうが詳しく、自宅でもよく流れているそうだ。一方、五木自身が夢中なのは、楽器を演奏すること。ヴァイオリン、チェロ、フルート、サクソフォンなど20種類ほどを操り、腕前も相当なものとして知られている。「好きな気持ちが高じて、一通りの楽器を演奏するようになりました。特に、弦楽器の特別な哀愁を感じる音がたまらなく好きです」 舞台、作曲、レコーディングと実に多忙だが、休みたいと思うことは基本的にないという。「結局、音楽が好きなんですよね。歌っているときでも、楽器を演奏しているときでも、音楽のことを考えているときでも…音楽に関わっている時間はまったく苦になりません。責任感はありますが、あまり仕事という意識はなく、楽しいという気持ちが大きいからだと思います」 なかでもライヴのステージの喜びは特別なもの。「その一瞬にすべてをかけて歌う。二度と同じ瞬間はありません。いろいろな形で簡単に音楽が手に入りやすくなった現代、みんなで時間を共有し、感動をそのまま受け止めることができるライヴは、より大切なものになってゆくと思います」 今回は、第一線で活躍するクラシック声楽家たちとの一度きりのコラボレーションとあって、より貴重な時間となりそうだ。「今は、“共演の時代”です。アーティストたちがお互いの持つ良いものを出し合い、新しい世界を創り上げることに、すすんで挑戦するようになりました。幅広い音楽を手軽に聴くことができる時代になって、異ジャHiroshi Itsuki(歌手)1964年(昭和39年)「第15回コロムビア全国歌謡コンクール」で優勝し、プロ歌手となる。70年(昭和45年)「全日本歌謡選手権」で10週勝ち抜きの栄冠を得る。翌71年(昭和46年)3月1日に「五木ひろし」として「よこはま・たそがれ」を発表。この曲の大ヒットにより、数多くの賞を受賞し、一躍ミリオンセラー歌手となる。毎年年末のNHK紅白歌合戦では、71年「よこはま・たそがれ」での出場以来、連続しての出場。また2004年3月には、自身の構成演出による日生劇場ライブコンサートが評価され、文化庁より第54回芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)を受賞。07年11月には紫綬褒章を受章。常にチャレンジを続ける日本歌謡界のトップランナー。あらゆるジャンルで最高の声を披露できる日本を代表する歌手として、多方面から評価を得ている。五木ひろし&豪華オペラ歌手陣+N響メンバーの夢の競演ふれあう時間、楽しく! 彩のチャリティーコンサート vol.2★10月28日(月)18:30・埼玉会館●発売中問:テンポプリモ03-5810-7772http://tempoprimo.co.jpConcertンルを組み合わせることの垣根が低くなったのでしょう。このコラボレーションをきっかけに、普段演歌を聴かない方にも、新しい音楽との接点を見つけてもらえるかもしれません。なつかしい昭和の歌謡曲をクラシックのアレンジにして歌うことで、一種の日本の古典として伝える機会を増やしていけたらと思います。クラシック好きの方にも、ぜひ足を運んでほしいですね」 言葉を伝えることにこだわったその歌唱は、心に沁みる。一度生の歌声を体感すれば、五木の歌が愛され続ける理由がよくわかるだろう。取材・文:高坂はる香 写真:中村風詩人45マークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケットが購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます)五木ひろし腰越満美(ソプラノ)錦織 健(テノール)大島幾雄(バリトン)大島幾雄(バリトン)ト キいろどり

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