eぶらあぼ 2013.10月号
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ぴっくあっぷ226 九州交響楽団首席を務めるウクライナ出身の気鋭の名手が、名クラリネット奏者ドゥレクリューズの手になる内容の濃いエチュードに挑むデビュー盤。古今の名曲に材を取った14の無伴奏作品を、それぞれ一篇の音楽として、しっかりと聴かせるためには、美しい音色と高い技術だけでなく、鮮烈な感性の裏付けが必要だ。そこに至るには「原曲の色彩感や背景を学び、作曲家の精神に触れることが必要」とデムチシンは語る。確かに、奥行きの深い彼の演奏は、聴き手に原曲へと自然にアクセスさせ、遂には原曲のイメージ自体を肉付けしてしまうほど。多角的なアプローチを裏付ける。(寺西 肇)ドゥレクリューズ:古典・現代作品の主題による14の大練習曲/タラス・デムチシン◎ドゥレクリューズ:古典・現代作品の主題による14の大練習曲タラス・デムチシン(クラリネット) ドゥダメル&ベルリン・フィルのコンビによる注目の初録音。R.シュトラウスの3つの傑作交響詩を、力任せな“音の洪水”ではなく、安定感を終始保って彫琢しているのが特徴だ。「ティル〜」で主人公の態度がコロコロ変わる場面の精緻な描写など、多彩な表情をバランスよく組み立てており、構成面にまったくと言っていいほど隙がない。また、「ツァラトゥストラ〜」や「ドン・ファン」の冒頭で求められる情熱や輝きも充分に兼備。ベルリン・フィルの懐の深さをうまく活用した語り口は、ドゥダメルが若手から巨匠へと変貌しつつあることの確かな証しと言えるだろう。(渡辺謙太郎)R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき/ドゥダメル&ベルリン・フィルR.シュトラウス:◎交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 ◎交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 ◎交響詩「ドン・ファン」グスターボ・ドゥダメル(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 古典期のフルートの巨人クヴァンツ考案の楽器を、同時代のC.F.フライヤーが“ライセンス生産”した、浜松市楽器博物館所蔵の2キーの貴重なトラヴェルソ(18世紀後半)と、そのレプリカを使い収録。有田はこれまでにも2度、複数の楽器を使用しての録音で、これら名器での演奏を披露したが、当盤ではこのスタイルのみを集中して使い、その魅力を徹底的に掘り下げる。オリジナル楽器ならではの陰影を巧みに利用し、若きエマヌエル・バッハの作品に特有の多感なニュアンスを、余さず鮮烈に表現。幅広い時代の楽器の特性を知り尽くした有田にしか成し得ない、名演に仕上がった。(寺西 肇)C.P.E.バッハ:フルート・ソナタ集〜浜松市楽器博物館コレクションシリーズ47◎C.P.E.バッハ:フルート・ソナタWq.123〜128, 131,134有田正広(フルート)有田千代子(チェンバロ) 19世紀末から20世紀半ばのパリの香気を伝えるドビュッシー、ミヨー、プーランクのピアノ作品集。椎野伸一の奏でるプーランクの「ノヴェレッテ」は明快なタッチが魅力的。ドビュッシーの「映像」は安定したテンポにのせて、多層的な音色でポエジーを呼び覚ます。ミヨーの「春」の録音は貴重であり、作品の繊細なイマージュが描き出される。椎野はソロ・リサイタルの他、室内楽、協奏曲、放送出演、そして東京学芸大で後進の指導にあたるなど堅実なキャリアを積んでいるが、意外にも本作が彼のソロCDアルバム第一弾であり、意欲作だ。(飯田有抄)イマージュ・ド・パリ/椎野伸一プーランク:◎3つのノヴェレッテ ◎メランコリー ドビュッシー:◎映像第1集・第2集 ◎忘れられた映像 ◎ミヨー:春 Ⅰ集・Ⅱ集椎野伸一(ピアノ)収録:2013年2月、秩父ミューズパーク音楽堂コジマ録音ALCD-3098 ¥2625収録:2012年4月,2013年1,2月、ベルリン、フィルハーモニー(ライヴ)ユニバーサルミュージック UCCG-1632 ¥2600収録:2012年4月、アクトシティ浜松音楽工房ホールコジマ録音 LMCD-1976 ¥3045収録:2013年4月、笠懸野文化ホール日本アコースティックレコーズNARC2096 ¥3000CDCDCDCD

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