eぶらあぼ 2013.10月号
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この人いちおし224【CD】『最後のトレモロ』朴葵姫(ギター)バリオス:◎フリア・フロリーダ ◎ワルツ第3番 ◎蜜蜂 ◎大聖堂 ◎最後のトレモロ ブローウェル:◎特徴的舞曲 ◎11月のある日 ◎2つのキューバのポピュラーソング ◎グレネ(ブローウェル編):キューバの子守唄 ◎モンテス:別れの前奏曲 ◎キネ・シネシ:澄み切った空 ◎ピアソラ:天使のミロンガ日本コロムビア COCQ-85023 ¥2940 9月18日(水)発売朴パク 葵キュヒ姫(ギター)Kyuhee Park南米の空気を感じたい 注目のギタリスト、日本コロムビア移籍第2弾アルバムは新大陸で花開いたスパニッシュ・ラテンの音楽世界。 「南米の音楽は様々なルーツで構成されていて、先ずはスペインからの影響による旋律重視のヨーロッパ的音楽、それから呪文のような簡単なフレーズを繰り返す原住民(インディオ)の音楽、そしてアフリカからやって来た打楽器の演奏に乗せて歌う音楽、これら3つの要素のうちでどれが目立つかはそれぞれ地域によって異なります。またリズムの形が多彩で国によって違うのも大きな特徴ですね。でも共通しているのは誰もが楽しめ、口ずさみたくなるような音楽ということ。作曲法としても素朴なメロディが使われています。まだ訪れたことのない国ばかりですが、ぜひ実際に旅して、人々が暮らしている環境を自分の目で見て、その空気を感じたい。特にパラグアイとキューバ、そしてアルヴァロ・ピエッリ先生の故郷であるウルグアイに行ってみたいです」 パラグアイの作曲家、バリオスの楽曲を「フリア・フロリーダ」「ワルツ第3番」「蜜蜂」など、5作品収録。 「小学4年生の時、ジョン・ウィリアムスのCDでバリオスの『森に夢みる』を聴いて感動して、自分でも演奏し始めました。今回収録した『大聖堂』はその頃からずっと弾いている大好きな作品のひとつ。彼は『パラグアイ舞曲』のようにリズムが印象的なものも書いていますが、ここでは美しい旋律のロマンティックな作品を集めました。恋人への想いとかバリオス自身のいろんな感情が込められていると思います」 超絶技巧を駆使した「蜜蜂」も聴き所のひとつ。 「ミツバチが飛んでいる様子をイメージして、そのスピード感をどう表現するか意識しました。テクニック的には、速く弾きたければ先ずゆっくりと始めることが大切だと思います。そして、自分が完璧に弾ける速さを見つけたら、指の動きを脳にインプットして、徐々にスピードを上げていくのがこの難曲の攻略法かもしれません」 キューバ生まれの巨匠、ブローウェル作品も「特徴的舞曲」「11月のある日」など、たっぷり。 「初めて聴いたのは『舞踏礼賛』。当時は小学5年生くらいでしたから、コンテンポラリーな作風に違和感を覚えました。その後中学で現代音楽を聴くようになり、彼の色々な作品を自分で弾くうちに、その魅力がだんだんわかってきました。ブローウェル作品には、ギターだけが出せる響きやテクニックがたくさん散りばめられていますね」 アルゼンチンのギタリスト、キネ・シネシの「澄み切った空」では演奏家としての新たな一面も垣間見せる。 「実はリズム感あふれるノリノリな曲も大好き、ピエッリ先生仕込みですから(笑)。これからもコンサートなどでどんどんとりあげていきたいと思います」 ラストを飾るのは彼女の“代名詞”ともいえるトレモロを駆使した、バリオス作曲の本アルバム表題曲。 「そう言っていただけるのは嬉しいことですが、トレモロは自分の中では決して特別なものではなく、他のテクニックと同様に、美しい音を届けるために欠かせない大事な手段のひとつです。最後まで楽しんでいただけたら幸いです」 2014年にはヴィラ=ロボスやジスモンチなどブラジル音楽を中心にした続編をリリース予定とか。楽しみだ!取材・文:東端哲也

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