eぶらあぼ 2013.10月号
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98 アジアは広い。2002年より開催されている《アジア オーケストラ ウィーク》に足を運べば、一口にアジアのオーケストラといっても、そこには多様な文化が息づいていることが実感できるはず。今年は3ヵ国から3つのオーケストラが参加する。 まず、フィリピンからはマニラ・フィルハーモニー管弦楽団が登場。マニラ・フィルは、今回指揮を務める音楽監督ロデル・コルメナールが1996年に設立した若いオーケストラ。プログラムはフィリピンの作曲家ルーシオ・サン・ペドロのパストラール組曲、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」(ピアノ:ディンドン・フィエル)、チャイコフスキーの交響曲第4番。“お国もの”と超名曲の組合せが、楽団のキャラクターを雄弁に伝えてくれそうだ。 アジア太平洋地域の一員として、ニュージーランドからはサザン・シンフォニアがやって来る。サザン・シンフォニアはニュージーランド南端のオタゴ地方に位置する中核都市ダニーデンのオーケストラ。ニュージーランド南端のオーケストラということは、世界最南端のプロ・オーケストラということでもある。設立は1965年。サイモン・オーヴァーの指揮、スティーブン・ドゥ・プレッジのピアノにより、アンソニー・リッチーの「パリハカの思い出」、グリーグのピアノ協奏曲、ブラームスの交響曲第2番が演奏される。アンソニー・リッチーは1960年ニュージーランド生まれの作曲家で、こちらも“お国もの”と有名曲が並べられる。 そして、日本からは山形交響楽団が登場する。山形交響楽団は1972年に設立された東北初のプロ・オーケストラ。たびたび東京公演を開催しているので、首都圏の聴衆にとっても比較的なじみ深い地方都市のオーケストラといえるだろう。音楽監督の飯森範親の指揮のもと、サリエリの歌劇《ファルスタッフ》序曲、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(ヴァイオリン:松田理奈)、ブルックナーの交響曲第1番という意欲的なプログラムを披露する。 以上の東京オペラシティコンサートホールでの3公演に加えて、今回は盛岡市民文化ホールにて山形交響楽団とサザン・シンフォニアの合同演奏会も開催される。いずれの公演にも新鮮な発見が満ちあふれているにちがいない。文:飯尾洋一マニラ・フィルハーモニー管弦楽団 ★10月5日(土)  サザン・シンフォニア ★10月6日(日)山形交響楽団 ★10月7日(月) 会場:東京オペラシティコンサートホール山形交響楽団&サザン・シンフォニア 合同演奏会 ★10月8日(火)・盛岡市民文化ホール ●発売中問日本オーケストラ連盟03-5610-7275 http://www.orchestra.or.jpオーケストラを通して知るアジアアジア オーケストラ ウィーク 2013 世に「総合芸術」と呼ばれる舞台はあまたあれど、その実、含まれるジャンルに偏りがあったり、あるいは、ごく一部の主役を引き立てるためのものだったりすることも少なくない。だが、合唱舞踊劇O.F.C.では、舞踊・独唱・合唱・楽団のすべてが主役であり、かつ、音楽を具現化するという意味では、脇役でもある。 中世の神学生たちが遺したとされる詩に、オルフが作曲を施した「カルミナ・ブラーナ」。佐多達枝演出・振付によるO.F.C.版は、1995年の初演以来、高い評価を得ており、今回8回目を迎視覚と聴覚を多角的にゆさぶる合唱舞踊劇 O.F.C. 「カルミナ・ブラーナ」「グロリア」える。大きな特長は、シンプルな舞台上で、ダンサーが肉体を躍動させるのみならず、独唱・合唱のメンバーもまた、その身を様々に動かすこと。観客は視覚・聴覚を多角的に揺さぶられ、ドラマティックな世界に引き込まれていく。 今回はプーランクの「グロリア」も、17年ぶりに、佐多の新演出版として併演。合唱舞踊劇の幅広さ・豊かさが味わえる夕べとなりそうだ。文:高橋彩子★10月29日(火)・東京文化会館 ●発売中問O.F.C.事務局03-3367-2451 http://homepage2.nifty.com/ofcPhoto:スタッフ・テスロデル・コルメナールサイモン・オーヴァーマニラ・フィルハーモニー管弦楽団飯森範親ⒸYuki Hasuimoto

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