eぶらあぼ 2013.9月号
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58 桐朋学園音大を経て、ジュネーヴ音楽院で名匠ジャン=ピエール・ヴァレーズに学んだヴァイオリニストの宮崎陽江。2008年から毎年、東京と札幌で行っている帰国公演が今年も行われる。今回は、「このシリーズを始めてからずっと目標だった」という協奏曲に挑む。演目には、モーツァルトの第5番「トルコ風」、そして演奏機会の大変稀なフォーレの協奏曲などが並ぶ。 「一昨年から昨年にかけて、“踊り”をテーマに掲げて活動してきました。そこで今年は、“踊り”と並ぶ音楽の大事な要素である“歌”に着目してみようと思ったのです。まずは、オーストリアのモーツァルト。オペラ的とよくいわれる彼のヴァイオリン協奏曲の中から、異国情緒と遊び心に満ちた第5番『トルコ風』をお届けします。そしてメインに選んだのが、フランスのフォーレの協奏曲。第1楽章のみの未完作品ですが、幅広いパッセージや、細やかな動きなど、若々しさが魅力的な名曲だと思います。“フランス歌曲の雄”である彼がヴァイオリン協奏曲を書くとどうなるのか。なぜ、彼はこの作品を人間の声ではなく、ヴァイオリンのために書いたのか。そのような思いを巡らせながら聴いていただけたらと思います」 この2曲に挟まれた形で演奏されるのが、パガニーニ「イ・パルピティ」。これは、ロッシーニの歌劇《タンクレディ》のアリア〈こんなに胸騒ぎが〉による序奏と主題と変奏曲。 「オーストリアとフランスだけだと対立してしまうので、その間にイタリアのオペラを題材にしたこの作品を補助線のように置いて、3曲を同一線上に並べたいと思ったのです。『鼓動』(イ・パルピティ)を意味する題名の通り、シンプルで心地よい歌とリズム感が素敵ですね。長大な序奏部分のカットも、移調(イ長調→変ロ長調)も行わず、原曲のありのままの姿をお伝えします」 共演は指揮が矢崎彦太郎。管弦楽は東京公演を東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、札幌公演を札幌交響楽団がそれぞれ務める。 「矢崎先生も2つのオーケストラとも、今回が初共演になります。矢崎先生と東京シティ・フィルはフランスものを中心とした旺盛な活動で知られています。作品や作曲家の真髄に迫るその音楽作りは、かねてから知っておりましたので、共演が叶ってとても幸せです。私の演奏以外に、モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』序曲や、フォーレ『マスクとベルガマスク』組曲もプログラムに含まれていますので、併せてたっぷりとお楽しみください」取材・文:渡辺謙太郎宮崎陽江 ヴァイオリン協奏曲の夕べ★10月1日(火)・札幌コンサートホールKitara(小)問 オフィス・ワン011-612-8696★10月7日(月)・紀尾井ホール問 コンサートイマジン03-3235-3777●発売中フォーレ未完の協奏曲に注目!宮崎陽よう江え(ヴァイオリン)インタビュー アンサンブル名はきっと“wishful thinking(希望的観測)”のシャレなのだろうけれど、いっさいの楽観や願望など抜きで、素直に感嘆せざるを得ないオランダの5人組女声アンサンブル、ウィッシュフル・シンギング。ヨーロッパの名門合唱コンクールを圧倒的な評価で制した完璧なハーモニーはもちろんのこと、類まれなプレゼンテーション能力も特筆もの。彼女たちの公式動画チャンネルを視ると、どのライヴ映像も聴衆の気持ちをがっちりと掴んで、客席が大盛り上がりになっているのがわかる。歴史的な正統派合唱曲はもちろん、“ハモネプ系”ポップス・アレンジまで何でもござれ。美しいハーモニーと絶妙なユーモアウィッシュフル・シンギング2011年に初来日した際には軽井沢の合唱フェスティバルへの参加と川口での公演が一部の合唱関係者の間で衝撃的な評判となったが、今回いよいよ待望の東京公演が東京文化会館の《プラチナ・シリーズ》の一環として実現する。場や空気を直接共有してこそ楽しみが2倍3倍に膨れあがるタイプのグループだけに、ぜひ会場で体験したい。文:宮本 明Music Weeks in TOKYO 2013 プラチナ・シリーズ 1 ウィッシュフル・シンギング★10月18日(金)・東京文化会館(小) ●発売中問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp※10/16(水)には東京都江戸東京博物館1階ホールにてウィッシュフル・シンギングによるワークショップも開催。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。ⒸPatrick Post

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