eぶらあぼ 2013.9月号
46/191

43 今年の10月3日はスクロヴァチェフスキの90歳の誕生日だ。そしてまさにその日彼は、読売日本交響楽団を振って、ベルリオーズの「ロミオとジュリエット」(抜粋)とショスタコーヴィチの交響曲第5番を披露する。とにかく元気だ。2010年読響の常任指揮者を退任後も毎年来日している点や、指揮台上の動きといった身体的な元気さもさることながら、何より音楽自体の元気さが凄い。この年齢の巨匠となれば普通、悠然たるテンポで枯れた演奏になるものだが、彼はそうではない。いつも動的なエネルギーと前進性溢れる剛直にして明晰な音楽を創出し、純粋な感銘を与える。そこが真に敬服すべき点だろう。 今回はまず、ショスタコーヴィチの交響曲第5番が大注目だ。十八番の一人である同作曲家の作品は読響でも数回取り上げており、中でも09年の交響曲第11番は峻厳・激烈な名演だった。さらに第5番は、1961年のミネ驚異の巨匠の革命的バースデイスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ (指揮)読売日本交響楽団アポリス響、90年のハレ管との録音で、引き締まった快演を残している得意の作品。彼の現代作曲家の視点から斬られた音楽は、社会主義的な高揚感や暗さを離れて、シリアスでモダンな20世紀音楽たる姿を露にし、壮絶かつ新鮮な感動をもたらすに違いない。また「ロミオとジュリエット」は、11年にカンブルラン&読響が精緻な美演を聴かせた作品。後任のフランス人シェフが磨いたサウンドを、巨匠がどう料理し、いかなる新味を堪能させてくれるのか、こちらもすこぶる興味深い。 まあ何にせよ、90歳の誕生日に日本まで来てハードな曲を振るとは…感服!文:柴田克彦第564回サントリーホール名曲シリーズ★10月2日(水)・サントリーホール第3回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ※★10月3日(木)・東京オペラシティコンサートホール第67回みなとみらいホリデー名曲シリーズ★10月6日(日)・横浜みなとみらいホール●発売中問読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp※第1部:読響メンバーによる室内楽、第2部:上記2公演と同プログラム。 未曾有の大震災が東日本を襲った2011年3月。数多くのコンサートが中止となった。東京都交響楽団でもエリアフ・インバル指揮でバルトークの代表作の演奏会を予定していたが中止された。その演奏会が、プログラムはそのままにソリストの一部を変更して行われることになった。庄司紗矢香がソロを弾く「ヴァイオリン協奏曲第2番」、歌劇《青ひげ公の城》(演奏会形式)である。 バルトークといえばハンガリー、ルーマニアなど東欧の音楽を研究し、その音楽要素を自作の中で花開かせた。特にこの「ヴァイオリン協奏曲第2番」は1937〜38年というヨーロッパが政治的に緊張していた時代に書かれた曲で、バルトークらしい色彩感あふれるオーケストレーション、ハンガリー的な音楽要素を含み、彼の傑作として知られる作品だ。ヨーロッパで活躍する庄司は作品に深く共感し、その細部にまで光をあてるだけにインバルバルトークの魅力を存分にエリアフ・インバル(指揮)東京都交響楽団&都響とのコラボレーションに注目だ。 歌劇《青ひげ公の城》は1911年の作品。登場人物は青ひげ公(バリトン)とユディット(ソプラノ)のふたり。フランスの作家ペローなどがまとめた幻想的で、残酷な物語を、豪華なオーケストレーションが彩る一幕物オペラだ。今回ユディットを歌うソプラノのイルディコ・コムロシはこの役のスペシャリストで、青ひげ公を歌うマルクス・アイヒェはワーグナー歌いのバリトンとしても定評がある。本場で活躍する強力な新キャストを迎えた公演に期待が募る。文:片桐卓也第762回定期演奏会 Aシリーズ★12月19日(木)・東京文化会館第763回定期演奏会 Bシリーズ★12月20日(金)・サントリーホール●9月6日(金)発売問都響ガイド03-3822-0727http://www.tmso.or.jpエリアフ・インバルⒸSayaka Ikemoto庄司紗矢香ⒸJulien Mignotイルディコ・コムロシマルクス・アイヒェ読売日本交響楽団スタニスラフ・スクロヴァチェフスキⒸ読響

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です