eぶらあぼ 2013.9月号
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35★11月26日(火)・サントリーホール、12月4日(水)・すみだトリフォニーホール、12日(木)・横浜みなとみらいホール ●発売中問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 11/22(金)・神奈川/フィリアホール、11/24(日)・所沢市民文化センターミューズ、11/30(土)・兵庫県立芸術文化センター、12/2(月)・武蔵野市民文化会館、12/6(金)・三原市芸術文化センター総合問合:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 昨秋、《オール・リゲティ・プログラム》で話題を呼んだ東京フィル。この10月の東京オペラシティ定期では、没後1年を迎えるハンス=ヴェルナー・ヘンツェ特集という、またしても意欲的なプログラムが組まれた。 曲目はピアノ協奏曲第1番(独奏は小菅優!)と交響曲第9番。指揮は沼尻竜典、交響曲第9番の合唱は東京混声合唱団が務める。同じヘンツェの作品とはいえ、この両作品の作曲時期には半世紀近い隔たりがある。ピアノ協奏曲第1番は1950年、ヘンツェ24歳の年の作品。急→緩→急の古典的な協奏曲の枠組みのなかに独自性が盛りこまれた躍動感あふれる作品だ。1950年といえば戦後前衛音楽の名作が次々と書かれる“前夜”のような時期。ヘンツェを通して伝えられる時代の息吹を感じたい。決して難解で高踏的な音楽ではなく、むしろ開放的なダイナミズムに驚かされるのではないだろうか。ヘンツェのメッセージとは?沼尻竜典(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団 一方、交響曲第9番は1997年、71歳で書かれた作品だ。「第九」で合唱を要するとなれば、いやでもベートーヴェンを思い起こさずにはいられない。作品の題材となったアンナ・ゼーガースの小説『第七の十字架』では、ナチス政権下のドイツで強制収容所から脱走した7人の物語が描かれる。ではヘンツェ版「第九」が掲げるのは人類愛や理想主義なのだろうか? 答えは当日のコンサートホールにある。少なくとも起伏に富んだドラマティックな作品であることはたしか。文:飯尾洋一第82回 東京オペラシティ定期シリーズ★10月10日(木)・東京オペラシティコンサートホール ●発売中問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp沼尻竜典小菅 優ⒸMarco Borggreve ベートーヴェンの最後の3つのソナタに、クリスチャン・ツィメルマンは一体何を読み取り、どのように再現するのか。次の来日公演で、それを確かめられる機会がやってくる。 ツィメルマンの初来日は、1975年のショパンコンクール優勝から3年後の21歳のとき。以来35年が経ち、彼は今年で56歳、ベートーヴェンの没した年齢を迎える。これまで32番のソナタを取り上げたことはあったが、30番・31番と3曲を併せて演奏するというのはやはり特別なこと。しばしば作曲家の記念年を意識してレパートリーを組むツィメルマンが、今こうしてベートーヴェン晩年のソナタをまとめて取り上げることには、おそらく理由があるのだろう。 演奏者の高い集中力が影響してか、ツィメルマンの演奏会では、客席にも特別な緊張感が漂う。作品に真摯に向き合い、すべての音を徹底的に大切にするピアニスト。演奏は考え抜究極のベートーヴェン体験クリスチャン・ツィメルマン(ピアノ)かれていながら、究極の自然さをもって流れる。それに身を任せ、注意深く聴いていると、ふと奇跡的な音が鳴る。 今回は、ベートーヴェンが辿りついたひとつの境地を示す作品を通して、そんな特別な音を何度聴くことができるだろうか。たびたび登場する天からの啓示のような音楽を、ツィメルマンならばどのように表現するのだろうか。そしてすべてを聴き終えたとき、自分は何を感じるのだろうか。ツィメルマンとベートーヴェンの後期3大ソナタという待望の組み合わせに、さまざまな想いを巡らせずにはいられない。当日まで、想像を大いに膨らませて待ちたい。文:高坂はる香ⒸKASSKARA/DG

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