eぶらあぼ 2013.9月号
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169 外山啓介が昨年全国ツアーで取り上げた「展覧会の絵」をメインに収録。彼は以前、この作品は、創作のもととなった絵画に触れることができるので「360度の視点からの解釈が許されているようで、演奏することが楽しい」と語っていた。その言葉の通り、自らの瞳で捉えたイメージが音となった感のする、新鮮な演奏。意表をつく爽やかさで始まったかと思うと、一転姿を変え、驚くべきコントラストとともに音楽が進む。洗練の影から時折のぞく力強さにもドキリとさせられる。続けて収録されているブラームスは、感情過多になりすぎぬ優しい演奏。外山の表現力の幅の広さを堪能できる。(高坂はる香)展覧会の絵/外山啓介◎ムソルグスキー:展覧会の絵 ブラームス:◎3つの間奏曲作品117 ◎6つの小品集作品118より第2番外山啓介(ピアノ) 浜松市楽器博物館が所蔵する、1810年製ワルターのフォルテピアノを用いた、ベートーヴェンのチェロとクラヴィーアのための作品全集の第2弾。今回は、ソナタ第3〜5番が収録された。これらの作品が書かれた1807〜15年は、交響曲で言えば第3〜8番が完成されるなど、まさにベートーヴェンが自分のスタイルを確立・深化させた時期。小倉と花崎は時代特有の語法に気遣いを見せる一方、第1弾よりも、より“ベートーヴェンらしさ”を強調したダイナミックな演奏を心がけているよう。そして、時にピアノのアクションや弓がもたらすノイズすら、音楽の内側へと採り込んでいく。(寺西 肇)ベートーヴェン:チェロとクラヴィーアのための作品全集Ⅱ〜浜松市楽器博物館コレクションシリーズ46ベートーヴェン:◎チェロとクラヴィーアのためのソナタ第3番 ◎同第4番 ◎同第5番花崎薫(チェロ)小倉貴久子(フォルテピアノ) 都響の首席クラリネット奏者、三界秀美の初ソロ盤。近現代のオリジナル作品に絞った選曲で、ヴォーン・ウィリアムズに始まってヴォーン・ウィリアムズで終わる9曲構成になっている。冷静さと豊かな感情の起伏を併せ持った彼のクラリネットは、ベルク、オネゲル、デニソフのようなほの暗く凝縮感のある音楽に、いい意味での清涼感と潤いを与えることに成功している。また、三界の自作「デュオ・カプリチオーソ」も収録されており、新日本フィルの副主席奏者、澤村康恵と共演。ミニマル的な3部構成で、温かくバランスのよい響きと、清々しい前進性が秀逸だ。(渡辺謙太郎)スパーン・ポイント/三界秀実◎ヴォーン・ウィリアムズ:イングランド民謡による6つの習作より第3曲・第2曲 ◎吉松隆:鳥の形をした4つの小品 ◎ベルク:4つの小品 ◎オネゲル:ソナチネ ◎デニソフ:ソナタ ◎三界秀実:デュオ・カプリチオーソ 他三界秀実(クラリネット)土田英介(ピアノ)澤村康恵(クラリネット) 五嶋みどりと共演するなど国際的に活躍する白石と、チェコ出身の実力派ピアニスト、カルリーチェクによって結成されたデュオの初録音。それぞれの故国から持ち寄った佳品を、2曲ずつ取り上げた。白石は弓の圧をしっかりかけた豊潤さで魅せたかと思えば、伊福部昭のソナタの第2楽章のように、時に透明感でも耳を奪う。一方のカルリーチェクは、自国作品特有の民族性はもちろん、邦人作品がはらむ独特の空気感を繊細に表現。2つの鮮烈な音楽性が出逢いを果たしたが故に、生まれた時代も背景も異にする4つの作品が互いに共鳴し、新たな響きの世界を構築している。(笹田和人)チェコと日本の名曲から/デュオ・ヴェンタパーネ◎スメタナ:わが故郷より ◎伊福部昭:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ◎林光:ヴァイオリンとピアノのためのラプソディ ◎マルティヌー:ヴァイオリン・ソナタ第3番デュオ・ヴェンタパーネ[白石茉奈(ヴァイオリン)、マルティン・カルリーチェク(ピアノ)]2013年5月、稲城市立iプラザエイベックス・クラシックスAVCL-25792 ¥3150収録:2012年9月、アクトシティ浜松音楽工房ホールコジマ録音 LMCD-1975 ¥3045収録:2013年4月、ヨコスカ・ベイサイド・ポケットマイスター・ミュージックMM-2158 ¥2957収録:2012年12月、相模湖交流センターナミ・レコードWWCC-7730 ¥2625CDCDCDCD

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