eぶらあぼ 2013.9月号
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ぴっくあっぷ168 CD売り上げが17万枚超という大ヒットを続けている佐村河内守の交響曲第1番「HIROSHIMA」。その東京初演を余すところなく記録した映像だ。闇から始まり一筋の希望の光へ至る過程を誠実なカメラワークで捉えている。大友直人&日本フィルの熱演の後、満場のスタンディングオべーションに応え、佐村河内が客席から舞台に上るシーンも実に感動的だ。また、当盤には、田部京子が弾く「ピアノのためのレクイエム」を特典映像に収録。東日本大震災で被災した母娘に捧げられたこの作品は、今後CD化の予定がないため、ファンには嬉しい贈り物になっている。(渡辺謙太郎)佐村河内守 魂の旋律 HIROSHIMA×レクイエム佐村河内守:◎交響曲第1番「HIROSHIMA」 ◎ピアノのためのレクイエム大友直人(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団田部京子(ピアノ) 今年4月に88歳で亡くなったシュタルケルは、LP黎明期に発売されたコダーイの「無伴奏チェロ組曲」によって一躍有名になる。このときのカット部分を復活し70年に再録音した完全版が本盤だ。特殊調弦による独特な効果から、重音によるグリッサンドや特殊なピッツィカートに至るまで、難所の山を正確に、軽々と越えていく。日本の技術者たちとともに精魂を傾けた録音で、チェロの物理的限界を感じさせないしなやかなメロディラインが、生々しい臨場感をもって再現される。2テイク収められた「パガニーニの主題による変奏曲」もチェロとは思えない柔軟性を持って歌われる。不世出の芸術家の記録。(江藤光紀)コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ/ヤーノシュ・シュタルケル◎コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ ◎ハンス・ボタームント=ヤーノシュ・シュタルケル:パガニーニの主題による変奏曲ヤーノシュ・シュタルケル(チェロ) 一曲一曲のアイディアが多彩で、素材がいっぱいに詰まったおもちゃ箱のように愉しい。どれも精巧に織り上げられている上に、楽器の組み合わせやバランスにも配慮がいきとどいていて、腕のいい宮大工の手になる透かし彫りのように、どの細部も生き生きと踊り、どの瞬間も濁らず透明感がある。そんな南聡の音楽の美質は、最初期の「譬えれば…の注解」から近作「波はささやき3」までを収めたこの新譜にもぎっしりと詰まっている。静寂の中から聞こえてくるかそけき響きから、モチーフの目まぐるしい変転に至るまで、変幻自在の音の身振りが聴き手をひきつけてやまない。(江藤光紀)南聡作品集 subtilitas南聡:◎波はささやき3/室内ソナタ ◎帯/一体何を思いついた? ◎折込図Ⅰ ◎鳥籠の中の変貌3/室内協奏曲 ◎譬えれば…の注解横山奏(指揮)本名徹次(指揮)東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 他 埋もれた名曲に光を当てる貴重なシリーズの第5弾。今回の3曲も実に魅力的だ。最注目曲は、国内盤初登場となるリヒャルト・ヴェッツ(マーラーの4歳上)の交響曲。抒情性とスケール感を両立させた音楽は充実著しく、ふっと湧き出る美しい旋律にもいたく心を惹かれる。まさに埋もれた理由が疑われる作品だ。ブルッフの幻想曲風&剛毅な協奏曲も、ソリストの力演と相まって聴き応え充分。スヴェンセンの明快&爽快な交響曲も、ノルウェーの民族色とシューマン風の質感を全編で楽しめる。これらすべて児玉&大阪響の共感度の高さあってこそ。中でも木管ソロの貢献度が光る。(柴田克彦)スヴェンセン、ヴェッツの交響曲第2番/児玉宏&大阪響◎ヴェッツ:交響曲第2番 ◎ブルッフ:2台のピアノと管弦楽のための協奏曲 ◎スヴェンセン:交響曲第2番児玉宏(指揮)大阪交響楽団山本貴志・佐藤卓史(ピアノ)日本コロムビアCOBO-6485 ¥3360収録:1970年12月、ビクター・スタジオ、杉並公会堂カメラータ・トウキョウCMCD-20201 ¥2100収録:2002年9月,2012年10月、文京シビックホール,札幌コンサートホールKitaraコジマ録音 ALCD-97 ¥2940収録:2012年5月28日、ザ・シンフォニーホール(ライヴ)、2013年3月16日、すみだトリフォニーホール(ライヴ)KING RECORDS KICC-1095/6(2枚組) ¥2500CDCDCDDVD

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