BRAVO DIGITAL ACADEMY創設に寄せて

Special Message

本アカデミー創設にあたり、頂戴したメッセージを掲載いたします。(敬称略・順不同)

小林賢治(シニフィアン株式会社 共同代表)

母が音大卒だったこともあり、我が家では幼い頃から音楽に触れる機会が多かった。家では、母のピアノ教室の生徒さん達がいつも何かしらの曲を弾いていたし、車で旅行するとなれば、BGMとしてかかっていたのはブラームスの交響曲第1番やブランデンブルグ協奏曲だった。

そうした環境だったから、自分もピアノやバイオリンを小さい頃から習ってはいたが、その年頃の子供達によくあるように、練習時間になればなんだかんだと駄々をこねて練習を回避し、レッスン直前に慌てて準備して何とか帳尻を合わせるような、「親に習い事を押しつけられた」生徒でしかなかった。

そんな自分の音楽との向き合い方が大きく変わったのは10歳の時だった。私の住んでいた街で、第九の市民合唱団が新たに創設されるという。初回ということで、指揮者は山田一雄先生、オーケストラは大阪フィルハーモニー交響楽団という気合の入った布陣だった。音大の声楽科卒だった母は、合唱団募集のチラシを見るや否や、一も二もなく応募していたが、「あんたも歌えるんちゃう?」と私にも声をかけてきた。「え、ドイツ語とか全然わからへんし…」と躊躇する自分に、いかにも関西のおばちゃんらしい軽いノリで、「大丈夫!カタカナで覚えたらええねん!音感ええし、なんとかなるわ!」と押し切られてしまった。

“フロイデ・シェーネル(ウムラウトは割り切って書くのでこうなってしまう(笑))・ゲッテル・フンケン…” 合唱団用の楽譜に、こんな感じでカタカナのルビを振っていく。子供の記憶力というのは大したもので、このような意味不明な言葉の羅列でも、覚えてしまえるのである。本番が近づく頃には、大人達と一緒に全て暗譜で歌えるようになっていた。

人生で初めてGP(Generalprobe、本番前の最後の通し稽古)でフルオーケストラを前にし、緊張よりも興奮と胸の高まりが抑えられなくなり、早く本番を迎えたいと気持ちが高鳴っていたのを覚えている。本番では、ボーイソプラノとして、テノールとソプラノの境目の最前列に立っていた。歌っていてとにかく楽しかった、ということをとにかく強烈に覚えているのだが、楽しさの一方、最後のPrestoになってからの合唱の部分、“ザイト・ウムシュルンゲン・ミリオーネン・ディーゼン・クス・デル・ガンツェン・ヴェルト…”のところに入って、「あぁ、もう終わってしまうのか」と思うと、途端に寂しさが襲ってきて、この素敵な時間がもっと続いて欲しい、と願いはじめた。そして、Maestosoになって“トホテル・アウス・エリージウム”と歌うところで、感極まった10歳の自分の涙腺は爆発してしまった。

曲が終わってからも、自分はただただ泣いていたのを覚えている。第九という偉大な音楽に涙したのか、山田先生の気迫あふれる指揮に感動したのか、あるいは、この楽しい時間が終わってしまったことがただただ悲しかったのか、どれが当時の感情として強かったのかは今となっては思い出せない。ただ、音楽と向き合うことで、人生で初めて、自然と心が打ち震え、人前で涙が止まらなくなるということを体験した。

その経験が、自分と音楽との向き合い方を決定的に変えた。「集団で一つの音楽を作り上げる」ことの魔力にすっかり取り憑かれた自分は、その後、吹奏楽、オーケストラ、ボサノバ・バンドなど、音楽を愛する仲間達と共に音楽を奏でることをやり続け、言葉にあらわし尽くせない多くの感動を味わうことができた。

いま、コロナ禍によって、プロであれアマチュアであれ、音楽を愛するもの達は未曾有の危機に直面している。しかし、人類はこれまでいかなる伝染病に対しても、孤立ではなく協働をもって立ち向かってきた。演奏会を開くことが難しい環境下でも、テクノロジーを活用してライブ配信で音楽を聴衆に届けるなど、これまでにない新たな試みがうまれている。BRAVO DIGITAL ACADEMYは、対面のレッスンが難しくなっている中、音楽を学ぶ機会を幅広い人々に届ける素晴らしい機会を提供してくれるだろう。音楽を愛する人々がコロナに立ち向かうために、本サービスが大きく発展していくことを、心より願います。


小野壮彦(So Good Group 代表)

小学生のころから洋楽や、海外の映画・小説にどっぷりと漬かっていた私は、欧米の文化に強い憧れを持つ、少し風変わりな少年でした。念願が叶い95年にカナダに短期留学することができたのですが、そこで得た様々なインスピレーションは、私のその後の人生を大きく変えてしまいました。

得られたのは、上手く言えませんが「手をいっぱいに伸ばして、大きく叫べば、願いは、とても遠くまで届く。なんでもやろうと思えばできる」という感覚です。

憧れていた、遠くの国の街並みの中で佇む自分がいる。テレビでしか見られなかったスターやチームを目の前にショウを見られる。行動すれば、それは目の前に現れなる。

近年は、いろいろな国で仕事をさせていただき、徐々に客観的に自国を観ることができるようになってまいりましたが、日本人は、人として大変なポテンシャルがあること、さらに、「Japan」という記号が、いつのまにか、海外の人々にとって情緒的な価値をまとうようになっていること。これらを強く感じるようになりました。そんな原体験もありまして、私は今、まずはスポーツ(サッカー)選手から、世界的な存在となるための国際的な活動支援がしっかりとできる、マネジメント会社So Good Groupを設立したのです。

時が進み、まさかの伝染病が突如世界を覆ってしまうなど、悲しいことがありましたが、一気にリモート・コミュニケーション・テクノロジーの社会実装が進むなど、それにはポジティブな副産物もありました。不自由が革新を生むということなのでしょう。

そのような折、Bravo Academyさんのような、まったく新しい音楽学習体験を提供しようという、熱い情熱を持つ企業様が、これまでの慣習を突き破ることに成功され、価値ある体験をテクノロジーの力で、次の時代を担う方々に届けることとなられた。このこと自体が、私たちに、こんな大変な時代であっても、夢を追いかけていい。ロマンティストでいていい。という安心感を与えてくれたのではないでしょうか。