東京二期会が2018/19シーズンラインアップを発表

 東京二期会が「2018/19シーズンラインアップ」を発表した。7月26日に行われた記者会見には、中山欽吾理事長、山口毅事務局長兼企画制作部長のほか、テノールの小原啓楼と女優の大和悠河の計4名が登壇した。
(2017.7.26 東京文化会館 Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE)

会見から 左より)山口 毅(事務局長兼企画制作部長)、中山欽吾(理事長)、大和悠河(女優)、小原啓楼(テノール)

 2018/19シーズンに上演予定の作品は、《アルチーナ》(18年5月)、《魔弾の射手》(同7月)、《三部作》〜《外套》《修道女アンジェリカ》《ジャンニ・スキッキ》(同9月)、《後宮からの逃走》(同11月)、《金閣寺》(19年2月)の5作品。全演目が新制作となる。

 《アルチーナ》は、若手歌手を中心に起用する「二期会ニューウェーブ・オペラ劇場」シリーズの一環として行われ、《ジュリオ・チェーザレ》でもタクトを振った鈴木秀美がピリオド楽器のオーケストラを率いる。演出は1983年生、オランダ出身で近年チューリッヒ歌劇場他で活躍著しいヘンデルのスペシャリスト、フローリス・ビッサーが務める。

 ハンブルク州立歌劇場との提携公演《魔弾の射手》は、二期会には2013年の《マクベス》以来5年ぶりの登場となるペーター・コンヴィチュニーが演出する。ザミエル役には、元宝塚歌劇団宙組トップスターの大和悠河が抜擢された。オペラというジャンルにとどまらない人材の起用を積極的に行っていきたいという二期会の姿勢が反映された形だ。
 大和は、来夏の公演に向けて、オペラやドイツ語にも慣れるように努力しているといい、「宝塚の舞台に立つのが小さい頃からの夢だったが、それが叶ったいま、新たな夢はオペラの舞台に立つこと。マリア・カラスが大好きで宝塚時代からよく聴いていたので、夢の第一歩を踏み出せて嬉しい。宝塚で培った男役の美学、そして卒業してからミュージカルや舞台で目指した女としての私、その両方を今回の舞台でお見せできるのではないか。私のすべてを見に来てほしい」とオペラ・デビューへの想いを語った。
 山口事務局長によれば、コンヴィチュニーから女優を起用したいという要望があり、「音楽、特にオペラに対する理解があり、男性・女性両方の表現をもっているという条件にピッタリな大和さんを推薦したところ、ひと目で気に入ってくれた」という。今回の新演出では、台詞部分は日本語での上演となる。指揮者は、近年ザルツブルク音楽祭でも活躍し、コンヴィチュニーとタッグを組むことが多いアルゼンチン出身のアレホ・ペレス。

 メトロポリタン・オペラでの世界初演から18年でちょうど100周年を迎えることになるプッチーニの三部作《外套》《修道女アンジェリカ》《ジャンニ・スキッキ》が上演される9月の公演は、アン・デア・ウィーン劇場やデンマーク王立歌劇場で上演されて好評を博したプロダクション。指揮は、二期会デビューとなるベルトラン・ド・ビリー、演出は14年の《イドメネオ》が記憶に新しいダミアーノ・ミキエレット。

 《後宮からの逃走》では、下野竜也がタクトを振り、メトロポリタン・オペラなど、オペラと演劇の両分野で活躍するギー・ヨーステンが日本での初演出を担当する。
 三島由紀夫の原作を黛敏郎がオペラ化した《金閣寺》は、フランス国立ラン歌劇場との共同制作。宮本亜門の演出で18年春にストラスブール他で世界初演された後、19年2月に日本初演を迎える。指揮は、現代音楽に造詣が深く、パリ・オペラ座と共にすでに来日もしている若手のマキシム・パスカル。

 このほか、上記5演目に先行して、2017/18シーズンの掉尾を飾るのは《ローエングリン》(18年2月)と《ノルマ》(同3月)の2演目。前者では、15年10月の《ダナエの愛》で好評を得た準・メルクル(指揮)、深作健太(演出)コンビが実現。《ローエングリン》でタイトルロールを務める小原は、「若杉弘先生の指揮による1979年の上演以来2度目となる演目で、選ばれたのは光栄だが、先輩方が築かれた日本人による上演の歴史を考えると、重責を感じる。個人的には、最近『大地の歌』や《フィデリオ》などしっかりとした声が求められる役を歌うことが多く、自分が目標としている名歌手ジェームス・キングのレパートリーに似通っているように思うので、彼をイメージしながら歌っていきたい」と意気込みを語った。
 《ノルマ》以降のキャストについては、随時二期会ウェブサイトで発表される予定。

左より)大和悠河(女優)、小原啓楼(テノール)

東京二期会
http://www.nikikai.net/