《タンホイザー》驚きの「美」のポイント!(2)

 ミュンヘンでの新演出プレミエ《タンホイザー》の、目にも耳にも驚くべき「美」のポイントを3つの視点から紹介する第2回目は「見る美」。舞台裏の情報も合わせてご紹介します。

 このプロダクションでは、強力な印象をもたらす視覚的アプローチが次々と繰り広げられます。先にも記した冒頭場面に続く第1幕では妖しい蠢めきがヴェーヌスベルクの魔性を表します。

引き止めるヴェーヌス(エレーナ・パンクラトヴァ)の魔性に抗うタンホイザー(クラウス・フロリアン・フォークト)
Photo: Wilfried Hösl

タンホイザー(クラウス・フロリアン・フォークト)
Photo: Wilfried Hösl

 ヴェーヌスをはじめ、彼女をとりまくヴェーヌスベルクの“怪しい魅力”を醸し出しているピンクの物体の正体はコレ! 手につくことはなく、変幻自在。総重量は70キロにおよびます。

バイエルン国立歌劇場《タンホイザー》ヴェーヌスの素材

  

 また、第2幕「歌の殿堂」は、重厚な装置を用いるわけではないのに、たしかに「歌の殿堂」たる広がりと美しさそのものが出現し、こんな方法があったのか?!と思わせられます。

タンホイザーとエリーザベトが再会するのは、幻想的な美しさの広がりのなかで。
Photo: Wilfried Hösl

第2幕、カーテン状の舞台美術が醸し出す大らかな空気の流れと合唱の響きが渾然一体となって歌合戦の場へと盛り上がる。
Photo: Wilfried Hösl

第2幕準備中の舞台裏。美しさの鍵を握るのはジョーゼットの布。計200メートル超が使われる。

 最終幕は、純粋な祈りにふさわしいシンプルな静けさ。幕切れに向かい、舞台後方に出現する文字は、この物語を、古き太古の昔から続くものとして俯瞰する演出のコンセプトに通じているものといえるでしょう。

後方の文字は「時」の流れを表すもの。同時に、タンホイザーとエリーザベトの亡骸も変化していく。
Photo: Wilfried Hösl

近くで見るとぞっとするほど細密に作られている亡骸。

【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演
《タンホイザー》
作曲:R.ワーグナー
演出:ロメオ・カステルッチ
指揮:キリル・ペトレンコ
9月21日(木) 3:00p.m.
9月25日(月) 3:00p.m.
9月28日(木) 3:00p.m.
会場:NHKホール

■予定される主な出演
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ

※表記の出演者は2017年1月20日現在の予定です。
http://www.bayerische2017.jp/tannhauser/