《タンホイザー》第1幕

パンクラトヴァ&フォークトの圧倒的歌唱!

 ミュンヘンでのプレミエを終え、次なる日本公演への期待も高まっているところ。
 ドイツでは、新演出への賛否両論も巻き起こりつつありますが、いずれの評価でも変わることがないのは、音楽の素晴らしさ! マエストロ・ペトレンコの音楽づくりを筆頭に、合唱団、オーケストラ、そしてソリストのいずれもが、大勝利を獲得しています。
 第1幕、まずエレーナ・パンクラトヴァのヴェーヌスとクラウス・フロリアン・フォークトのタンホイザーの印象からご紹介していきます。

Photo: Wilfried Hösl

 カステルッチ演出のヴェーヌスベルクは“愛と肉欲の美”を表現したものと言えるでしょう。そのなかで絶対的な存在感を示すパンクラトヴァ。彼女のヴェーヌスは欲求を隠さない強さで強烈な存在感を見せますが、その声質は美の女神としての高貴さをもつもの。タンホイザーが自身の耽溺を認め、抜け出したいと思っていながらも、どこか抗えない魅惑をもつ存在=ヴェーヌスに必要なものをバッチリ備えていると言えます。
 舞台裏であった彼女は、とてもオープンな人柄。「あなたたち日本人? 私、沖縄に行きたいと思っていたのね。今年はやめちゃったんだけど、どんなところか知ってる?」と話しかけてくるほど。素顔の彼女は、妖艶ということではない、明るくおおらかなキャラクターなのだと感じます。
 一方のクラウス・フロリアン・フォークトは、今回がロール・デビューということで、緊張感も高かったはずですが、ナーヴァスになっていたわけではなさそう。3日前の最終稽古の時点でも、素晴らしく美しい声だと驚きましたが、プレミエ本番では、それがおそらく彼にとって50%くらいのものでしかなかったということをあらためて思い知らされました。終演後、舞台裏で多くのスタッフと成功を喜びあう会心の笑顔は、トップ・スターでありながら、どこか少年のようでもありました。
 

初日のカーテンコールより

【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演
《タンホイザー》
作曲:R.ワーグナー
演出:ロメオ・カステルッチ
指揮:キリル・ペトレンコ
9月21日(木) 3:00p.m.
9月25日(月) 3:00p.m.
9月28日(木) 3:00p.m.
会場:NHKホール

■予定される主な出演
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ

※表記の出演者は2017年1月20日現在の予定です。
http://www.bayerische2017.jp/tannhauser/