ヤノフスキが会見〜ウィーン国立歌劇場日本公演2016

 今秋、4年ぶりの来日公演を行うウィーン国立歌劇場の記者会見が行われた。ドミニク・マイヤー総裁と《ナクソス島のアリアドネ》の指揮を執るマレク・ヤノフスキが出席した。マエストロ、ヤノフスキは、4月の「東京・春・音楽祭」の《ジークフリート》公演のための来日中ということで、リハーサルの合間を縫っての出席となった。
(取材・文:吉羽尋子 Photo:M.Terashi/Tokyo MDE)

左:マレク・ヤノフスキ 右:ドミニク・マイヤー総裁

左:マレク・ヤノフスキ 右:ドミニク・マイヤー総裁

 まず、マイヤー総裁から、今回の《ナクソス島のアリアドネ》上演について「R.シュトラウスがウィーン国立歌劇場の総監督を務めたこともあるだけでなく、初演の後に改訂した現行版がウィーンで初演されてから100年に当たる年に日本で上演されることをとても喜ばしく思っています」と紹介。
 誰もが知りたいと思うのは、マエストロ、ヤノフスキが長らく離れていたオペラ公演の指揮をすることになった経緯だろう。マエストロは次のように語った。
「演出先行で音楽を大切にしていないオペラ上演を、私は間違っていると感じたからです」
 奇しくもそのきっかけはドイツの歌劇場での《ナクソス島のアリアドネ》だったという。そして、「ベルリン放送交響楽団と、ワーグナーの全10作演奏を行ってくるなかで、オペラをもう一度振りたいという気持ちが高まったということがあったかもしれません。そうしたときに、2016年と2017年にバイロイト音楽祭での《ニーベルングの指環》、そしてウィーン国立歌劇場日本公演で、それも《ナクソス島のアリアドネ》ということで、何か運命的なものを感じ、この2つだけは特別に振ることにしました」

マレク・ヤノフスキ

マレク・ヤノフスキ

 《ワルキューレ》については、マイヤー総裁自身が「毎年上演される《指環》ツィクルスは、私自身が総裁という立場ではなく、のめり込んでしまいます。何よりも素晴らしいのはオーケストラの響きです!」と笑みを浮かべながら言いきった。指揮のアダム・フィッシャーはじめ、歌手の一人ひとりについても、いかに優れた音楽家たちであるかも紹介された。
 もう一本の《フィガロの結婚》については、前回日本公演でも上演されたが、指揮のリッカルド・ムーティからの強い希望でプログラムすることになったとのこと。マエストロ ムーティの、今回の《フィガロの結婚》への思いは、マエストロと長年の親交があり、オペラ演出家であり、著作の翻訳も手掛けている田口道子より、メッセージとして紹介された。《フィガロの結婚》は、ムーティが初めて指揮をしたモーツァルトのオペラで、特別な愛着があることや、この作品を、長きにわたり信頼しあってきたウィーン国立歌劇場、ウィーン・フィル(ウィーン国立歌劇場管弦楽団)とともに上演できることをとても楽しみにしていることが伝えられた。またキャストに、若いながらもすでに国際的に活躍している人を選んだことについて、オペラにおける“言葉”の重要性によるものである、というのは、マエストロが伝えたかった最大のメッセージと感じられた。
 10月から11月にかけて上演される3作品、いずれも魅力的だ。

左:マレク・ヤノフスキ 右:ドミニク・マイヤー総裁

左:マレク・ヤノフスキ 右:ドミニク・マイヤー総裁

ウィーン国立歌劇場 2016年 日本公演
 
リヒャルト・シュトラウス作曲
《ナクソス島のアリアドネ》(プロローグ付1幕)
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:マレク・ヤノフスキ
10月25日(火)19:00
10月28日(金)15:00
10月30日(日)15:00

リヒャルト・ワーグナー作曲
《ワルキューレ》全3幕
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:アダム・フィッシャー 
11月6日(日)15:00
11月9日(水)15:00
11月12日(土)15:00
東京文化会館

ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
《フィガロの結婚》全4幕
演出:ジャン=ピエール・ポネル
指揮:リッカルド・ムーティ
11月10日(木)17:00
11月13日(日)15:00
11月15日(火)15:00
神奈川県民ホール

問:NBSチケットセンター03-3791-8888
http://www.wien2016.jp