東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.9 《ローエングリン》

 東京春祭の顔となる一大イベント、「東京春祭ワーグナー・シリーズ」。最高の歌手陣が集結し、演奏会形式でワーグナーの神髄を聴かせるシリーズである。これまで、ワーグナーの10大演目のうち、《ニーベルングの指環》4作を含む7演目が取り上げられてきた。8つ目の演目は待望の《ローエングリン》である。
 実は《ローエングリン》は2011年に予定されていたが、3月の大震災の発生によりやむなく公演中止に至った、いわば同シリーズにおける“幻の演目”(シリーズ通し番号はそのまま継続し、「vol.9」となっている)。そうした経緯があるだけに、いよいよ実現することへの思いはひとしお。

 今回、別格の注目ポイントは、タイトルロールにクラウス・フロリアン・フォークトが登場すること。現代最高のローエングリン歌いと断言して差し支えないであろう、唯一無二の稀有なテノールである。抒情的で柔らかく、常に気品を湛えながら、会場中に響き渡る美声、品格ある甘いマスクと立派な体躯を併せもち、思わずフォークト“様”と呼ばずにはいられないほどのノーブルな存在感・・・特徴のすべてがローエングリン役に完璧にはまっている。日本では新国立劇場に2012年、16年の二度同役で登場し、聴衆の感動と大絶賛をほしいままにした。特に、神秘的な登場の第一声と、「グラール語り」と呼ばれる最終盤の独唱場面は、会場全体が吸い込まれるような、まさに役通りに神がかった時間を作りあげた。

 さらに、フォークト以外の出演者もぜいたくの極み。レジーネ・ハングラー、ペトラ・ラング、エギルス・シリンス、アイン・アンガーと、世界的歌手が並ぶ。特に、2017年10月の新国立劇場における《神々の黄昏》でブリュンヒルデ役を務めて、その情熱的な歌唱と演技を披露したばかりのラングが、オルトルート役で出演するのも注目。ラングは新国立劇場でも2016年に同役を歌い、幕切れ直前の絶唱まで含めて抜群の存在感を披露済みで、今回も全体を引き締めてくれるだろう。

 指揮者にドイツの名匠ウルフ・シルマーが登場するのもうれしい。同シリーズ初回の《パルジファル》をはじめ、「合唱の芸術シリーズ」にも出演するなど、本音楽祭の常連となる名指揮者である。毎年経験を重ねてすばらしい演奏を繰り広げているNHK交響楽団と共に、最高のワーグナーのオーケストラ演奏を聴かせてくれることは間違いない。
 後世に語り継がれる舞台となる可能性が高い本公演。何をおいても必聴となる。

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.9
《ローエングリン》(演奏会形式/字幕・映像付)

2018.4/5(木)17:00、4/8(日)15:00 
東京文化会館 大ホール

■出演
指揮:ウルフ・シルマー
ローエングリン:クラウス・フロリアン・フォークト
エルザ:レジーネ・ハングラー
テルラムント:エギルス・シリンス
オルトルート:ペトラ・ラング
ハインリヒ王:アイン・アンガー
王の伝令:甲斐栄次郎
ブラバントの貴族:大槻孝志 髙梨英次郎 青山 貴 狩野賢一
小姓:今野沙知恵 中須美喜 杉山由紀 中山茉莉
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング、宮松重紀
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田村吾郎(RamAir.LLC)

■料金
S席 ¥22,100 A席 ¥18,000 B席 ¥13,900 C席 ¥10,800 D席 ¥7,700 E席 4,600 U-25* ¥2,500
*U-25チケットは2018年2月9日(金)12:00発売開始

■チケット発売日:11月26日(日)10:00