【GPレポート】東京春祭ワーグナー・シリーズ《神々の黄昏》

 東京・春・音楽祭を代表するシリーズであり、春のクラシック音楽界でも屈指の注目イベントが、「東京春祭ワーグナー・シリーズ」である。2010年よりワーグナーの劇場作品をNHK交響楽団(N響)の演奏のもと演奏会形式で上演している。
 3年前からは楽劇『ニーベルングの指環』に1作ずつ取り組み、ついに今年、最後の《神々の黄昏》に到達。例年以上の熱気と注目を集めている。
(取材・文:林 昌英 Photo:M.Terashi/Tokyo MDE)

第2幕より
ハーゲン(アイン・アンガー)

 3月30日に行われた最終リハーサルでは、オーケストラの演奏の仕上がりに注目。本シリーズ《リング》全演目を担当してきたマレク・ヤノフスキの指揮も4年目ということで、その音楽づくりが浸透したためか、彼らしい引き締まったオーケストラの響きはそのまま、表現の幅はさらに増してきた。全体に速めのテンポを設定して、もたれない流れの上で堅実な構築を実現、長時間の演奏がいささかも弛緩しない。

指揮:マレク・ヤノフスキ

 本シリーズ常連の顔であり、今年4月からのN響ゲスト・コンサートマスター就任も発表されたライナー・キュッヒルも、昨年8月までウィーン・フィルハーモニー管弦楽団およびウィーン国立歌劇場管弦楽団コンサートマスターとして活躍した圧倒的な存在感で楽団を牽引。オペラ演奏になじみが薄かったN響も回を重ねるごとにワーグナー奏法を深め、いま国内で考えられる最高水準のワーグナー演奏を聴かせてくれた。

第1幕より
左)グートルーネ:レジーネ・ハングラー 中央)ハーゲン:アイン・アンガー 右)グンター:マルクス・アイヒェ

 歌手陣には変更があり、予定されていた歌手から、ジークフリート役がアーノルド・ベズイエンに、ブリュンヒルデ役がレベッカ・ティーム(本公演は4/1のみ)に変更になった。急な変更で、急遽2人は来日したとのことだったが、ティームは同役をドイツ複数の歌劇場で歌っていて、この日は序盤で雰囲気をつかむと、以降さすがの名唱を聴かせてくれた。
 バイロイト音楽祭出演を重ね、やはりドイツで同役の経験もあるベズイエンも、公演に合わせてコンディションを整えた。

第1幕より
左)ブリュンヒルデ:レベッカ・ティーム 右)ヴァルトラウテ:エリーザベト・クールマン

第1幕より
左)ライナー・キュッヒル(N響ゲスト・コンサートマスター) 中央)ジークフリート:アーノルド・ベズイエン 右)グートルーネ:レジーネ・ハングラー

 その他の歌手陣は予定通りそろい、内外のトップ歌手が集まった贅沢なメンバーが持ち味を発揮。エリーザベト・クールマン、マルクス・アイヒェ、アイン・アンガー、トマス・コニエチュニーといった、東京の上演でおなじみの名歌手たちも、すばらしい仕上がりで期待が高まる。

第1幕より
ハーゲン:アイン・アンガー

 また、本作は《リング》唯一の合唱付き演目ということで、同シリーズ久々の登場となった東京オペラシンガーズも、満を持しての熱唱で舞台を沸かせた。
 東京春祭《リング》の締めくくりにふさわしい高水準の公演になるであろう、期待感がふくらむリハーサルだった。

第2幕より
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー

第3幕より
ブリュンヒルデ:レベッカ・ティーム

第1幕でジークフリートの角笛を吹く、今井仁志(首席ホルン奏者)

客席側から見えるハープは6本。でも、その後ろにも・・・

東京春祭 for Kids「子どものための公開リハーサル」としても行われた本リハーサルの前に音楽博士・北川森央による「おはなし」も

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.8
『ニーベルングの指環』 第3日 《神々の黄昏》
(演奏会形式/字幕・映像付)

■日時・会場
2017.4.1(土)15:00
2017.4.4(火)15:00
東京文化会館 大ホール

■タイムスケジュール
序幕・第一幕 15:00-17:00
 休憩 (30分間)
第二幕 17:30-18:35
 休憩 (30分間)
第三幕 19:05-20:20
終演時刻 20:20 [予定]

■出演
指揮:マレク・ヤノフスキ
ジークフリート:アーノルド・ベズイエン
グンター:マルクス・アイヒェ
ハーゲン:アイン・アンガー
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
ブリュンヒルデ:レベッカ・ティーム(4月1日)、クリスティアーネ・リボール(4月4日)
グートルーネ:レジーネ・ハングラー
ヴァルトラウテ:エリーザベト・クールマン
第1のノルン:金子美香
第2のノルン: 秋本悠希
第3のノルン:藤谷佳奈枝
ヴォークリンデ:小川里美
ヴェルグンデ:秋本悠希
フロースヒルデ:金子美香
管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング、宮松重紀
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲

■曲目
ワーグナー:舞台祝祭劇 『ニーベルングの指環』 第3日 《神々の黄昏》
(全3幕/ドイツ語上演)

■料金
S席 ¥21,600 A席 ¥17,500 B席 ¥13,400 C席 ¥10,300 D席 ¥7,200 E席 ¥4,100 U-25※ ¥2,000
※ U-25チケットは、公式サイトのみでの取扱い

■当日券
4月1日、4日公演は13:30より東京文化会館 大ホール 当日券窓口にて販売予定。
販売席種:S ¥ 21,600(税込)
※現金のみ取扱い