eぶらあぼ 2025.10月号
73/149

©Studio LASP11/1(土)14:00 TOPPANホール問 ムジカキアラ03-6431-8186 https://exnovo.jp11/5(水)18:30 那覇文化芸術劇場なはーと(小)12/5(金)18:00 五反田文化センター音楽ホール問 クレオム info@creomu.com70エクス・ノーヴォ vol.22 《倫理的・宗教的な森》全曲演奏シリーズ(全4回)最終回「証聖者の晩課」文:長井進之介17世紀ヴェネツィアの栄華〜モンテヴェルディの傑作群が壮麗に響く 文:那須田 務Absolute-MIX Presents 2025 2台ピアノとパーカッションで巡るバーバリズム・アーカイヴピアニスト矢沢朋子が探求する“モダーン・トライバル”  「倫理的・宗教的な森」はモンテヴェルディの宗教曲の集大成。キリスト教の典礼音楽と非典礼的(倫理的)な音楽からなる曲集を「森」に喩える詩的な発想もすばらしいが、なんといっても人の声の魅力を楽器とともにこれほど美しく、壮麗に表現しえた音楽は他にないだろう。ただ、全37曲の大部なうえに作風や内容が極めて多彩なこともあって、日本では全曲はおろか抜粋でもなかなか聴く機会がない。 福島康晴と古楽アンサンブル「エクス・ノーヴォ」は昨年6月からそんな初期バロックの名作の全曲演奏に取り組んでいる。しかも収録曲をただ並べるのではなく、「宗教的マドリガーレとミサ曲」「諸聖人の晩課」等のテーマを設定し、全曲を網羅するという興味深い内容で私たちを楽しませてくれてきた。 そしていよいよこの11月に最終回を迎える。 今回は「証聖者の晩課」(注:証聖者= 矢沢朋子は、桐朋学園大学を卒業後、パリのエコール・ノルマルで研鑽を積んだピアニストである。オリヴィエ・メシアンの夫人イヴォンヌ・ロリオやクロード・エルフェといった現代音楽のスペシャリストたちに師事。 アメリカでも現代音楽の研究を重ね、2001年に帰 国。 そ の 後 も 国 内 外 の 作 曲家と様々な形でコラボレーションを行い、現在はマルチメディア・プロジェクト“Absolute-MIX”、音 楽レー ベ ル“Geisha Farm”を主宰するなどその活動はさらに幅広さを増している。 2011年からは沖縄を拠点に多彩な音楽発信を行っており、平石博一など知られざる名作曲家の作品の普及にも努めている。 その矢沢が今回行うのは、2台のピアノと打楽器のコラボレーションによるコンサートだ。この編成で最も有名かつ難曲でもあるバルトークの「2台ピアノとパーカッションのためのソナタ」を中心に据え、尾高殉教していない聖人や福者のこと)をテーマとし、典礼で歌われるアンティフォナ(交唱)や詩編とともに、〈主は言われた 第1番〉や〈マニフィカト 第1番〉など6曲が演奏される。 アンティフォナは通常のグレゴリオ聖歌ではなく、ボローニャ等で活躍したカッツァーティの作で本邦初演。エクスの歌手は美声と賞はじめ数多くの賞を獲得するなど日本を代表する作曲家である権代敦彦による同編成作品の新作初演も行われる。 アイスラーやノーノと並ぶ前衛音楽の作曲家、コーネリアス・カーデューの「ブーラヴォーグ」、日本が世界に誇る三善晃の「響象」といった作品も並び、ピアノという楽器の奏法の多様性と音色の可能性の探求が行われていく。 ロシア・ピアニズムの研究者であり多彩なレパートリーを誇るピアニストの比嘉洸太、多くの受賞歴を誇る注目の打楽器奏者の新野将之、琉球交響楽団 打楽器奏者の屋比久理夏との共演で実現する新たな音世界は聴き逃せない。完ぺきな様式感をそなえた実力者揃いだが、シリーズ最多の16名。 器楽も4本のトロンボーンや通奏低音にはオルガンやハープの他、2本のテオルボが用意される。 晩秋のTOPPANホールにモンテヴェルディの名作とともに17世紀イタリアの豪華絢爛たる「夕べの祈り」が響きわたる!

元のページ  ../index.html#73

このブックを見る