シエナ・ウインド・オーケストラ ©kenji Shimizuセバスティアン・ヴァイグレ ©読響佐渡 裕 ©Takashi Iijima北村 陽第652回 定期演奏会 10/21(火)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp11/7(金)19:00 文京シビックホール問 シビックチケット03-5803-1111 https://www.b-academy.jp/hall/55文:オザワ部長(吹奏楽作家)文:柴田克彦 10月の読響定期は、常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレが振る、凝った内容のロシア・プログラム。最初のグリンカ「カマリンスカヤ」は、“ロシア音楽の祖”が民族音楽を用いて作曲した、国民主義的な管弦楽曲の草分けであり、次のハチャトゥリアン「チェロと管弦楽のためのコンチェルト・ラプソディ」は、ロストロポーヴィチのために書かれた明快な20世紀作品だ。後半のショスタコーヴィチの交響曲第15番は、1971年に完成された作曲者最後の交響曲で、《ウィリアム・テル》その他の引用でも知られている。すなわち前半は民族的な作品の源流と発展を続けて味わえるし、後半は一転してモダンなロシア音楽を堪能できる。しかもグリンカ作品からショスタコーヴィチ作品への流れは、ロシアの調性音楽の変遷を示してもいる。 ドイツの指揮者ヴァイグレは、お国ものと併せてロシア音楽に力を注ぎ、同国作品の重層感を明らかにしている。 吹奏楽ファンにとって、佐渡裕が指揮するシエナ・ウインド・オーケストラのコンサートは、いつも特別な響きを持って心に届く。 いまや日本を代表するマエストロが2002年から首席指揮者を務めるシエナ・ウインド・オーケストラ。 ぴったり合った呼吸とあつい信頼関係がその音楽を唯一無二のものへと昇華させてきた。 シエナの代名詞である華やかで輝かしいサウンドには、近年豊かな円熟味が加わり、その表現力はとどまるところを知らない。 この 両 者 で20年 以 上 続く人 気 シリーズが「ブラスの祭典」だ。 今回のプログラムで特に胸が熱くなるのは、アルフレッド・リード作曲の「吹奏楽のための交響的素描『オセロ』」が演奏されることだ。ここ数年、吹奏楽コンクールの自由曲などでリード作品の人気が再燃。中でもシェイクスピアの悲劇が織りなす壮大なドラマを描いその点で前半2曲はピッタリだし、後半は一筋縄ではいかない交響曲の秘めたる魅力を感知させてくれるに違いない。なおショスタコーヴィチの15番は、ソロの多い室内楽的な音楽ゆえに、高機能で辣腕揃いの読響の本領が存分に生かされる。またチェロ独奏の北村陽への期待も大きい。 若手世代随一たこの傑作を、佐渡&シエナがどう表現するのか。卓越したアンサンブルで聴く「オセロ」は、きっと至福の体験となることだろう。 また、『ロード・オブ・ザ・リング』として映画化されたトールキンの小説を題材とするヨハン・デ・メイ作曲「交響曲第1番『指輪物語』」にも注目だ。重厚で壮大なファンタジー世界が、シエナの音の名手にして近年急激にスケール感や深みを増している彼は、22年ハチャトゥリアン国際コンクールの第2位受賞者だけに、今回の作品は打ってつけ。しかも極めてテクニカルなこの曲は、若き実力者の爽快な演奏でこそ醍醐味を味わえる。これは全てに手応え十分のコンサートになりそうだ。楽によってホールの中にいきいきと描きだされるに違いない。 そして、お馴染みのアンコール「星条旗よ永遠なれ」は、来場者が持参した楽器で演奏に参加できる夢の企画。マエストロの指揮のもと、プロ奏者たちとともに音を奏で、ホールが一体となる。 まさしく吹奏楽の「祭典」をぜひ会場で体感してほしい。セバスティアン・ヴァイグレ(指揮) 読売日本交響楽団ロシアの歴史的快作を堪能する佐渡 裕(指揮) シエナ・ウインド・オーケストラ演奏会 《ブラスの祭典2025》輝かしい金管サウンドでドラマティックな二篇を
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