©NIPPON COLUMBIA左より:ユルンヤーコブ・ティム/アンドレアス・ティム/浜野範子Interview12/5(金)19:00 王子ホール問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 https://www.bflat-mp.comHakujuの歌曲 ♯4 小林沙羅 ソプラノ ―記念イヤーに贈る 山田耕筰&北原白秋―10/22(水)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://hakujuhall.jp53取材・文:室田尚子文:柴田克彦 チェロ2本とピアノの三重奏は実に珍しい。その稀少な響きを体験できるのが、ユルンヤーコブ&アンドレアスのティム親子とピアノの浜野範子によるトリオリサイタルだ。1949年ドイツ生まれの父ユルンヤーコブは、世界最古の民間オーケストラ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の首席奏者を長年務めたほか、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団のメンバーやバイロイト音楽祭オーケストラの首席奏者としても活躍した正統派の名手。1975年生まれの息子アンドレアスは、ベルリン・コンツェルトハウス管の準首席奏者を務め、ソロでも腕をふ 日本のオペラシーンになくてはならないトップ・ソプラノである小林沙羅は、日本語の新作オペラにも数多く出演するなど「日本の歌」をライフワークとしている歌手でもある。 そんな小林が〈Hakujuの歌曲〉シリーズに登場。「美しい響きと歌曲にちょうど良い大きさのこのホールでいつか!と思って温めてきた」という、山田耕筰作曲・北原白秋作詞の作品のみのプログラムによるリサイタルを開催する。この二人は、小林にとっては特別な思いのある作曲家・作詞家だそう。 「幼い頃から家の中ではレコードがかかっていたり、家族が合唱していたり、と歌があふれていたのですが、その中でも特に心に残っているのが山田耕筰・北原白秋による〈待ちぼうけ〉でした。 祖母がよく歌ってくれて、“ころりころげた木の根っこ~”というところが大好きでした。 また大学院に入って間もない頃、東京文化会館主催の新作オペラ《隅田川》(千住明作曲・松本隆台本)の狂女役のオーディションを受けたのですが、その時に〈からたちの花〉を歌いました。小ホールの美しい響きを感じながら歌ったあの瞬間は、私の音楽人生を方向付ける大事な瞬間の一つだったようるっている。内外で多彩な活動を行う浜野は、2012年から父と共演を重ね、このトリオでも15、17年に演奏した経験の持ち主。ゆえに今回は、互いを熟知した奏者による親密な音楽が期待される。 プログラムは、バリエール、ポッパー、ピアッティによる貴重な2本のチェロ作品と、フォーレやシューマン等の有名曲の組み合わせ。これは、ドイツ伝統の響きと清新な音色を併せて味わえる、またとない機会だ。に思っており、今でも忘れることができません」 そんな小林が今回取り上げるのは、前述した思い出の2曲をはじめ〈この道〉〈ペチカ〉といったよく知られている名曲、またあまり知られていない小品など。さらに、滅多に聴くことのできない歌曲集「芥子粒夫人(ポストマニ)」が含まれているのが目を惹く。 「この作品は北原白秋がインドの民話に着想を得て書いた物語詩です。 鼠が魔法使いにお願いして自分の姿を次々と変えてもらいます。猫になったり犬になったり、最後はポストマニという名前の美しい娘になり、王子様と結婚しますが…。 まるで絵本を読んでいるように物語が展開していく、ドイツリートでいうバラードのような歌曲集となっています。私の声や歌い方にも合っているのでずっと以前からいつか挑戦したいと思っていましたが、大作なのでこれまではなかなか実現できませんでした。今回ついに皆さまに聴いていただくことができるのがとても嬉しいです」 20年来のパートナーであるピアノの河野紘子とは「お互いのクセややりたい音楽の方向性もよくわかっているので、阿吽の呼吸で演奏することができる」とのこと。河野の持つ高いテクニックに支えられ、小林沙羅が紡ぎ出す山田耕筰と北原白秋の世界は、日本歌曲の真髄に迫るコンサートとなるにちがいない。ユルンヤーコブ・ティム & アンドレアス・ティム(以上チェロ) & 浜野範子(ピアノ) トリオリサイタル Vol.3伝統の響きと清新な音色が重なり合う小林沙羅(ソプラノ)歌姫がつづる山田耕筰&北原白秋の世界
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