eぶらあぼ 2025.10月号
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©高村佳園Interview京都コンサートホール開館30周年記念事業/第29回 京都の秋 音楽祭ピエール・ブーレーズ生誕100年記念事業ブーレーズへのオマージュ11/8(土)14:00 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(小)問 京都コンサートホール075-711-3231 https://www.kyotoconcerthall.org42永野英樹(ピアノ)取材・文:八木宏之も、ブーレーズのレパートリーに含まれていました。ブーレーズとラヴェルの書法は、どちらも緻密で、研ぎ澄まされていて、少し冷たいテクスチャーを持っています。続けて聴けば、両者の似たところを見つけられるかもしれません」 共演者には、フルートの上野由恵、クラリネットの上田希、ヴァイオリンの上敷領藍子、チェロの一樂恒といった、コンテンポラリー・ミュージックに精通する名手や京都ゆかりの演奏家が集う。 「上野さんと上田さんとはすでに共演したことがあり、上敷領さんと一樂さんとは今回が初共演となります。 上野さんと上田さんはコンテンポラリー・ミュージックの豊富な演奏経験をお持ちですし、上敷領さんと一樂さんも京都が誇る素晴らしい演奏家と伺っていますので、ブーレーズやシェーンベルクでご一緒できるのを楽しみにしています」 コンテンポラリー・ミュージックはライブで体験してこそ、その真価に接することができると永野は強調する。この公演に集うのは、ブーレーズやシェーンベルクに初めて触れる人にも、その魅力を存分に伝えることのできる音楽家ばかりである。ブーレーズの作品は難しそうなのでちょっと、という人にこそ、永野という最高のナビゲーターとともに、新たな音楽の扉を開いてほしい。 ピエール・ブーレーズの生誕100年にあたる今年は、いつも以上にブーレーズの作品を聴く機会に恵まれてい る が、11月8日 に 京 都 コン サ ートホールで開催される「ブーレーズへのオマージュ」は、そうしたアニバーサリー公演のなかでも、特に注目すべきものである。というのも、この公演のキーパーソンであるピアニストの永野英樹は、アンサンブル・アンテルコンタンポランのソロ・ピアニストとして、生前のブーレーズと数多く共演し、その美学を深く理解している音楽家だからである。 プログラムには、ブーレーズ初期の代表作である「12のノタシオン」や「フルートとピアノのためのソナチネ」のほか、ラヴェルの「夜のガスパール」やシェーンベルクの室内交響曲第1番(ウェー ベ ルンの 編 曲による室 内 楽版)など、ブーレーズゆかりの作品が並んでいる。 「今回はブーレーズを起点に、彼と関係の深い作曲家の作品を組み合わせてプログラムを構成しました。 ブーレーズの室内楽作品は数が少なく、それらは初期に集中しているのですが、この時期の作品には、新しいことに挑戦しようという彼の意志が強く現れています。『ソナチネ』はそうした作曲家の“厳しさ”が感じられる難曲です。『ノタシオン』は最初期の作品で、ブーレーズの入門曲としても知られていますが、後年確立される書法の萌芽がすでに見られますし、なによりこの作品を聴くと、ブーレーズがピアノという楽器を熟知していたことがよくわかります。 シェーンベルクの室内交響曲第1番は、ブーレーズがもっとも頻繁に取り上げていた、指揮者としての中核的レパートリーでした。今回演奏する室内楽版の編曲者であるウェーベルンも、彼が大切にしていた作曲家です。  今 年 生 誕150年を迎えるラヴェル生誕100年!ブーレーズに多方面から光を当てる好企画

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