eぶらあぼ 2025.10月号
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124ベートーヴェン・フォー・スリー〜交響曲第1番 他/エマニュエル・アックス&レオニダス・カヴァコス&ヨーヨー・マフランス音楽と気晴らし DANCE×HAIKU×SPORTS /末高明美&アリアンヌ・ジャコブ鹿が谷川の流れを慕いあえぐように/ Ueno Bass ClefR.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」/沖澤のどか&京響現代の巨匠・達人たちによるベートーヴェン集の第4弾。交響曲の編曲は緻密な音色変化の工夫を楽しめるが、オリジナルのトリオ作品の密度はやはり格別で、自ずと生まれる力感、訴求力を実感。この3人には特別な表現をしてやろうといった顕示欲は微塵もなく、表面的には地味ですらある。“滋味につながる”という境地とも違い、あくまで淡々と丁寧にベートーヴェンに臨む。無理せずとも、各自の音、表現、ニュアンスが伝われば十分、という揺るぎない確信。オーラ満点の「カザルス・トリオ」から約1世紀、現代のカリスマ、ヨーヨー・マのトリオは、巨匠像の変化を音で伝える。 (林 昌英)常任指揮者となって2年半、沖澤のどかと京都市交響楽団による初ディスクである。冒頭から低弦が突き上げるように唸り、響きの充実がコンビの充実を即、物語る。注目すべきは曲が重厚さに引きずられないこと。各パートが何をすべきかの意志と方向性が明確で、この壮大な交響詩を運ぶ歩みが滞らず、細部と俯瞰のバランスが良い。身振りの大きな楽曲の向こう側に仕込まれた、音の自画像を描くシュトラウスのユーモアや諧謔、喜怒哀楽がくっきり浮かび上がってくる。この素晴らしく精彩あふれる演奏を聴いたら、当コンビの今後にも期待が高まるほかない。「英雄」の旅路はまだ始まったばかり。(矢澤孝樹)サティの「スポーツと気晴らし」にちなんだタイトルを持つ本作は、フランスで研鑽を積み、欧州のピアノ教育に詳しいピアニスト末高明美と、フランス国内外で活躍を続けるアリアンヌ・ジャコブのソロとデュオを収める。DANCE(ヒナステラの「アルゼンチン舞曲集」など)、HAIKU(ガニューの「6つの一茶の俳句によるピアノ曲」など)、SPORTS(サティ作品)という3部構成からなるユニークな選曲。日常生活の中の「気晴らし」を音楽で表現したという。気負いのない素直な音楽作りで、かつ生き生きと、小粋に響かせる演奏はまさにそのコンセプトを体現する。心を軽やかにしてくれる一枚だ。(飯田有抄)気鋭のユーフォニアム奏者・佐藤采香をはじめとする東京藝大出身の俊才たちが結成した低音金管グループのデビューCD。こうしたいわゆる「バリ・テューバ・アンサンブル」(当グループはユーフォニアム2、テューバ2)は、熱心な愛好家以外の一般ファンに新たな音世界を知る楽しみを与えてくれる。本盤は、彼らが5年の活動を通して委嘱し、好評を博してきた若手作曲家の作品中心だが、聴くと豊穣な音楽揃い。新旧の四重奏曲はもとより、テューバのデュオと、佐藤采香編のハイドンや鈴木英史編の「パガニーニの主題による変奏曲」は、とりわけ耳に新鮮だ。  (柴田克彦)エマニュエル・アックス(ピアノ)レオニダス・カヴァコス(ヴァイオリン)ヨーヨー・マ(チェロ)沖澤のどか(指揮)京都市交響楽団会田莉凡(ヴァイオリン)末高明美 アリアンヌ・ジャコブ(以上ピアノ)R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」ベートーヴェン:交響曲第1番(ピアノ三重奏版、シャイ・ウォスネル編)、ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」、同第4番「街の歌」ソニーミュージックSICC 30922 ¥2860(税込)日本コロムビアCOCQ-85636 ¥3500(税込)ドビュッシー:ボヘミア風舞曲/ヒナステラ:アルゼンチン舞曲集/ガニュー:6つの一茶の俳句によるピアノ曲/エルサン:「ピアノのためのエフェメール」より/サティ:ジムノペディ第1番、「スポーツと気晴らし」より 他コジマ録音ALM-9284ハイドン(佐藤采香編):弦楽四重奏曲第32番「鳥」より第1楽章/山田大:2本のテューバのためのインヴェンション/福丸光詩:鹿が谷川の流れを慕いあえぐように/ラフマニノフ(鈴木英史編):パガニーニの主題による変奏曲 他Ueno Bass Clef【佐藤采香 山崎由貴(以上ユーフォニアム) 石丸菜菜 田村優弥(以上テューバ) 】妙音舎MYCL-00063 ¥3410(税込)配信CDCDCD

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