eぶらあぼ 2025.10月号
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122ハイドン:交響曲集 Vol.30/飯森範親&日本センチュリー響わが歌、わが人生/杉山知勢子シュッツ&鈴木大介 play シューベルト/カール=ハインツ・シュッツ&鈴木大介ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番、ピアノ協奏曲 ニ長調/菊池洋子&山下一史&大阪響ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番、ピアノ協奏曲 op.61a(ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版)2015年に日本センチュリー響が首席指揮者の飯森とスタートさせたハイドンマラソンも、いよいよ山頂まであと一歩のところまできた。ここに収録されたのはハイドン40代の壮年期に書かれた3曲でその筆運びにも充実ぶりがうかがえるが、演奏も作曲家の語法を熟知した両者ならではで、音楽の愉悦を心ゆくまで味わわせてくれる。ヴィブラートは薄くフレーズは歯切れよく、音の輪郭をくっきり浮かび上がらせる。リズムは快活で、弾力のあるサウンドにチェンバロがスパイスを加える。「ラ・ロクスラーヌ」はトランペットやティンパニも入ってひときわ賑やか。爽やかに駆け抜ける現代のハイドンだ。(江藤光紀)杉山知勢子は武蔵野音楽大学および同大学専攻科を修了後、様々な分野で活躍。近年は歌曲演奏に力を入れているメゾソプラノだ。第20回奏楽堂日本歌曲コンクールでは奥田良三賞を受賞するなど、その歌唱と表現は高く評価されている。本盤はそんな杉山の日本歌曲に対する深い愛情が結実した一枚である。山田耕筰に橋本國彦、團伊玖磨といった作曲家による名曲を集め、それぞれの世界観を丁寧に伝える。とりわけ山田の「AIYANの歌」では言葉の繊細な扱いと深い情念が結びつき、鮮烈な印象を残す。日本歌曲のスペシャリスト、塚田佳男のピアノがそれを支え、時にはさらに色濃いものへと導いていく。(長井進之介)ウィーン・フィルの首席フルート奏者と日本を代表するギタリストを主軸にした好アルバム。レアなシューベルトの四重奏曲(マティーカなる作曲家の作品の編曲)では、ウィーン・フィルの精鋭2名と共に、愉悦感溢れるアンサンブルが展開される。C=テデスコのソナチネ(オリジナルの二重奏)は、第2楽章の哀切な音楽と第3楽章の名人芸が印象的。後半のシューベルトの歌曲集(シュッツ&鈴木編曲)は、この編成に合った楽曲が巧みに選ばれており、シュッツの純朴で温かな表現も相まって清新な感触を味わえるし、シューベルト歌曲のメロディの魅力を再発見させられる。(柴田克彦)ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集シリーズ第2弾。菊池洋子のウィーン風ともいえる軽やかなピアニズムと、山下一史が指揮する大阪響のどっしりと構えたサウンドが、鮮やかなコントラストを成してお互いを引き立てる。このシリーズはカデンツァも凝っているのだが、ピアノ協奏曲第2番では、イグナツィ・フリードマン作を使用。突如として華やかさを香り立たせる効果も。ヴァイオリン協奏曲からの編曲である協奏曲ニ長調では、より彫りの深い演奏になった。ピアノはさらに自由に、しかも立体的に響きを作り出し、オーケストラは内側からふつふつと沸き上がる熱気でそれを受け止める。(鈴木淳史)飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団杉山知勢子(メゾソプラノ)塚田佳男(ピアノ)菊池洋子(ピアノ)山下一史(指揮)大阪交響楽団ハイドン:交響曲第63番「ラ・ロクスラーヌ」(第1稿)、同第62番、同第66番収録:2023年12月、ザ・シンフォニーホール 他(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00890 ¥3850(税込)橋本國彦:牡丹、薄いなさけに、母の歌/磯部俶:松の花/山田耕筰:AIYANの歌/平井康三郎:三つの輓歌―亡き子に―/團伊玖磨:東京小景/高田三郎:ひとりの対話コジマ録音ALM-7318 ¥3300(税込)シューベルト:フルート ギター ヴィオラとチェロのための四重奏曲、「美しい水車屋の娘」より(シュッツ&鈴木編)/カステルヌオーヴォ=テデスコ:フルートとギターのためのソナチネ 他カール=ハインツ・シュッツ(フルート)鈴木大介(ギター) ロベルト・バウアーシュタッター(ヴィオラ) タマーシュ・ヴァルガ(チェロ)収録:2019年8月、草津音楽の森国際コンサートホール 他(ライブ)カメラータ・トウキョウCMCD-28394 ¥3080(税込)収録:2024年8月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)キングレコードKICC-1632 ¥3300(税込)SACDCDCDCD

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