□ □ □左:ステファン・ドニガ 右:ディアナ・ジパドイツで研鑽を積む若きソプラノが届ける“歌曲の花束”ディアナ・ジパ ヴァイオリンリサイタル ジョルジェ・エネスク没後70周年記念初来日のデュオが運ぶルーマニアの風竹田舞10/17(金)19:00 東京/南大沢文化会館 主ホール 10/18(土)14:00 東京/サローネ・フォンタナ 10/19(日)14:00 神奈川/高津市民館 問 Asterism music@asterism.tokyo https://asterism.tokyoフレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ シリーズ67 竹田舞音ソプラノ・リサイタル9/23(火・祝)15:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット問 横須賀芸術劇場046-823-9999 https://www.yokosuka-arts.or.jp78音(ソプラノ)取材・文:長井進之介文:林 昌英 ルーマニアの生んだ無二の大音楽家、ジョルジェ・エネスク(エネスコ)。没後70年の今年、その作品の本質を伝えるべく、ルーマニア出身のヴァイオリニスト、ディアナ・ジパが初来日を果たす。 ブカレストを中心に活動するジパの演奏は、多くの動画で確認できるが、とにかく驚くほど上手い。濃厚でありながら澄み切った美音、メロディを隙なく歌い込む歌心とそれを実現する両手の堅実な技術、楽曲に深く入り込む集中力。間違いなく一聴に値する名手だ。ピアノは彼女の動画の多くで共演するステファン・ドニガで、デュオとしての完成度も万全。 竹田舞音は東京藝術大学大学院オペラ専攻を修了し、カールスルーエ音楽大学国家演奏家資格課程を卒業。現在、日本とドイツを拠点に活躍中のソプラノだ。2024年に第93回日本音楽コンクールで第1位とともに複数の特賞を受賞し、さらに注目を集めるようになった彼女の魅力が詰まったリサイタルがヨコスカ・ベイサイド・ポケットで開催される。 独・英・仏・日と多彩な言語の歌曲が並ぶ、色とりどりのプログラムである。 「歌曲は短いものがほとんどですが、それを花束のように集め、お聴きくださる方にお渡しする…というイメージで選んでいきました。声楽家であると伝えると、『オペラを歌っているの?』と聞かれることが多く、まだ歌曲の魅力があまり浸透していない印象を受けます。ぜひ歌曲の世界もこんなに素晴らしいんだ、と感じていただきたいのです。 山田耕筰や中田喜直などの耳なじみのある曲はもちろんですが、ヴォルフやガーニーなど、“掘り出し作曲家”との新しい出合いも体験していただきたいです」 竹田の歌唱は、声はもちろんのこと、言葉さばきも美しく、作品の世界観を丁寧に伝えてくれる。多くの優れたリート歌手を輩出してきたカールスルーエ音楽大学ではどのようなことを プログラムはポルムベスク「望郷のバラード」、バルトーク「ルーマニア民族舞曲」などを配する民族色濃厚な名曲集。やはり注目は大枠に置かれたエネスクの2曲で、美しい逸品「協奏的即興曲」、ファンタジーとエネルギーの詰まったヴァイオリン・ソナタ第3番という最高の選曲。 エネスクやルーマニアに関心のある方、ヴァイオリンを愛する方はチェックしてほしい。学んだのだろうか。 「バリトンのハンノ・ミュラー=ブラッハマン先生に師事し、とくにディクションを徹底的にご指導いただきました。 『それが出来ていないと、あなたはよその国から来た歌手としか見てもらえないよ』と、本当に丁寧にあきらめることなくレッスンしてくださったことは私にとっての大きな財産になっています。とくにドイツ語の“S”の発音はいまでも楽譜に出てくるたびに注意されていたことを思い出しますね」 リートは声楽とピアノによる最小の室内楽といえるアンサンブル。竹田の歌を支えるのは同じくカールスルーエで学んだ左近允(さこんじゅう)茉莉子だ。 「左近允さんが弾いてくださればそれだけで安心して歌える、というくらい信頼しています。 同じドイツの景色を見て、ドイツ語に触れていたというのも大きいですね。 それぞれが作り上げた音楽が重なり合うことで、私の色がもっと鮮やかになり、形が見えてくるという感覚があります」 シューマンからマーラー、シェーンベルク、ラヴェル、そして日本歌曲まで──その幅広いレパートリーを通じて、歌曲の楽しさと奥深さの両方を味わえるリサイタルとなりそうだ。 「お好きな曲やご存知の曲はもちろんですが、聴いたことのない作品との出合いもぜひ楽しんでいただきたいです。美術館をふらっと歩いていた時に“これはなんだ?”と感じるような作品に心惹かれたりすることもありますよね。 そういう体験をしていただけたらとてもうれしいです」Interview
元のページ ../index.html#81