ミハイル・プレトニョフ ©Irina Shymchak左より:深セン交響楽団/林 大葉/篠㟢和子 ©Satoru MITSUTA/寧 峰想いをつなぐプレトニョフのコンチェルト中国深セン交響楽団 2025年 日本公演躍動するアジアの響き、ついに日本初上陸!10/31(金)19:00 ロームシアター京都 メインホール問 otonowa 075-252-8255 https://www.rmf.or.jp11/4(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール11/8(土)14:30 京都コンサートホール問 タクティカート03-5579-6704 https://tacticart-concert.com64文:山田治生文:渡辺 和 ローム株式会社の創業者であり、ローム ミュージック ファンデーションの設立者でもある佐藤研一郎(1931~2020)の意志を引き継ぐために2022年1月にスタートした「Ken Sato Memorial Concert」。これまではピアノ・ソロの公演であったが、記念すべき5回目ではピアノ・コンチェルトが披露される。また、Vol.5からVol.9まで は、1980年 の ショパンコンクールで入賞し、近年は同コンクールの審査員も務めている海老彰子がプロデュースを手掛け、世界的な音楽家を招聘していくという。 Vol.5は、ミハイル・プレトニョフが登場。 彼は1978年のチャイコフスキー・コンクールに優勝した一方で、1990年に指揮者としてロシア・ナショナル管弦楽団を創設。しかし、2022年のロシアのウクライナ侵攻後、プレトニョフはスイスを活動拠点とするようになる。ロシアとの往来が困難になり、自ら作った楽団の音楽監督を辞め、スロヴァキア 経済成長へと舵を切った中国政府が、香港と境を接した小さな港町を経済特区深圳(しんせん)市としたのは1980年のこと。 新たな巨大都市を創るにあたり、政府は文化インフラ整備も重視。特区2年目のまだ何もない市に深セン交響楽団が設立された。 英国文化圏の香港フィルでさえ、プロ化したのはやっと1974年である。 賛否両論ある中国の都市開発だが、ヨーロッパ型楽団を不可欠な文化資産と判断したのは大英断だった。 それから43年、深圳は「中国のシリコンバレー」として香港を凌駕するに至る。2007年には巨大な総合アーツセンターの一部を成す磯崎新アトリエ設計の音楽専用ホールが完成。 永田音響が音響設計、「サントリーホールを手本にした」と関係者が隠さぬ最高水準の「深圳音楽庁」を本拠地に、深セン響も巨大都市のシンボルのひとつになった。 今や世界に演奏家を輩出する中国音楽界にあって、深セン響も含めメジャーのブラティスラヴァでラフマニノフ国際管弦楽団を創設。その名称は、ラフマニノフがロシア革命によって祖国を離れざるをえなかった音楽家であったことから付けられたのであろう。 今回、プレトニョフは、高関健指揮京都市交響楽団とともにモーツァルトのピアノ協奏曲第24番と同第26番「戴冠式」を演奏する。 悲劇的なハ短調の第24番は、ドイツ・カンマーフィルとの録音も残す、プレトニョフの得意のレパートリー。華やかな第26番をどうオーケストラは達者な外国人を集めた即席団体ではない。中国で生まれ、国内で音楽基礎教育を受けた演奏家たちと共に、地に足を付けた成長を遂げつつある。武満作品をベートーヴェンと同じ人類の古典と信じる21世紀の正統的モダンオーケストラは、祖国とベルリンで学び2012年にショルティ国際指揮者コンクールで優勝、深セン響音楽監督に任命され9シーズン目となる林大演奏するのかも注目である。プレトニョフのピアニストとしての今を知るコンサートが楽しみだ。葉(リン・ダーイエ)の指揮棒の下、自国作曲家新作を含め西洋音楽語法の普遍性を信じ、正統的なクラシック音楽を響かせる。2022年から深セン響の駐団芸術家として関係を深めるハープの篠㟢和子と、中国初のパガニーニ国際コンクール優勝を誇り室内楽でも活躍するオールラウンダー寧峰(ニン・フェン)のヴァイオリンも、世界に開く新興都市の響きに花を添えよう。Ken Sato Memorial Concert Vol.5〜世界の巨匠が奏でる極上のモーツァルト〜
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