eぶらあぼ 2025.9月号
64/149

竹山 愛©N.Ikegami荒木良太©N.Ikegami©James Bort森野美咲©Yuki Suwaジョナサン・ノット©K.Miura/TSOジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団古典とモダンの対置で名匠の本領発揮ダヴィッド・フレイ ピアノ・リサイタルフランスの鬼才の美学に貫かれた、時空を超えた鍵盤音楽の旅10/30(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/東京オペラシティシリーズ 第147回9/20(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 https://tokyosymphony.jp61文:柴田克彦文:飯田有抄 2014年から音楽監督を務める東響とのコンビも最終年に入った今シーズン、ジョナサン・ノットは、集大成に相応しいプログラムを展開している。 その1つが7月のブリテン「戦争レクイエム」。この20世紀の深刻作を緊張感漂う中にも柔らかく表現し、「モダン音楽を古典のように演奏する」彼の本領を発揮した。 その点で注目されるのが、9月の東京オペラシティシリーズ。 古典のハイドン&モーツァルトとモダンなリゲティの作品が並ぶ本公演は、まさにノットならではのプログラムだ。 ハイドンは交響曲第83番。 円熟の手腕が示された「パリ交響曲」の第2作で、「めんどり」の愛称でも知られている。モーツァルトは交響曲第41番「ジュピター」。18世紀の同分野の最高峰に位置する堂々たる傑作だ。まずは両古典だけでもノットの表現が注目される。 対するリゲティの最初はフルート、オーボエと管弦楽のための二重協奏 ニューヨーク・タイムズ紙で「グールドくらい極めて個性的なピアニスト」と評されたフランスのピアニスト、ダヴィッド・フレイが実に14年ぶりに来日する。 東京で初となるリサイタルの開催ということもあり、これがどれほど嬉しいニュースであるかは、なかなかピンと来づらいかもしれない。 だが、これまで彼がリリースしてきたバッハの「ゴルトベルク変奏曲」や「パルティータ」、ショパン作品集、シューベルトの「楽興の時」といったアルバムに刻まれた、その研ぎ澄まされた感性と、繊細極まりないタッチに触れたならば、実演を聴ける機会の到来は心躍るニュースとなるだろう。 しかもプログラミングが非常にユニークだ。前半はスカルラッティ、クープラン、ラモー、ヘンデル、J.S.バッハらのバロック時代の作品である。ただしヘンデルとバッハの作品は、フェインベルク、ストラーダル、ケンプといった曲。これはトーン・クラスター的な作品であり宇宙的な音楽でもある。ソリストは、フルートが竹山愛、オーボエが荒木良太と、最近東響首席となったフレッシュな顔ぶれ。超絶技巧も要する曲なので、二人の妙技に熱視線が注がれる。もう1つは「マカーブルの秘密」。オペラ・アリアに基づく歌に演技をまじ19~20世 紀 に活躍したピアニストたちによる編曲作品である(ヘンデルは組曲HWV434「メヌエット」、バッハは無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番やトリオ・ソナタ第5番など)。フレイの多彩な表現力が、時代を行き来する音響空間を生み出してくれそうだ。後半はワーグナーの世界へと飛ぶ。 演奏機会の珍しいピアノ・ソナタWWV85、ビューローおよびリスト編曲による《トリスタンとイゾルデ》からえた小品で、23年3月都響公演におけるコパチンスカヤの怪演も記憶に新しい。今回はウィーン在住の気鋭ソプラノ・森野美咲の歌が興味津々。もちろん十八番リゲティにおけるノットの表現も大いに楽しみだ。そして古典とリゲティを併せて聴いてどんな感触を得られるか? ぜひとも生で体験したい。の編曲作品である。抒情性に満ち、闇と光とを無段階的に描き出すフレイのピアニズムを、ぜひお聴き逃しなく!

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る