eぶらあぼ 2025.9月号
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→C 山本耕平(テノール)東京オペラシティ B古今の作曲家たちの内なる声が時を超えて語りかける□ □ □ □ □ □ □レナード・スラットキン ©Lewel Liアレクセイ・ヴォロディン ©Kaori Nishida群馬交響楽団 × 高崎芸術劇場 GTシンフォニック・コンサート vol.4レナード・スラットキン オール・アメリカン・プログラム巨匠がいざなうアメリカ音楽の旅12/7(日)14:00 高崎芸術劇場問 高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900/群馬交響楽団事務局027-322-4944https://www.takasaki-foundation.or.jp/theatre/59文:岸 純信(オペラ研究家)文:林 昌英 昨年80歳を迎えたアメリカの巨匠、レナード・スラットキン。 彼が指揮台に立てば、高水準で活力あふれる演奏が約束され、会場が幸せな空気に満ちる。レパートリーは広いが、母国アメリカ音楽はやはり特別な注目となる。その待望の「オール・アメリカン・プログラム」が冬の高崎で実現する。 公演は12月7日の「GTシンフォニック・コンサート」。3年前から始まった群馬交響楽団と高崎芸術劇場の共催によるシリーズで、クラシックからジャズやポピュラーまで、シリーズを通して多彩なジャンルを聴けることが特長。アメリカ・プロはその趣旨にもぴったりだし、それを好調の群響と最高のマエストロの共演で聴けるのはうれしい。 セットリストは4曲。開幕はバーンスタイン「キャンディード」序曲で颯爽と。続いてはガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」。このピアノをロシア出身のアレクセイ・ヴォロディンが弾くのも テノール山本耕平の歌には「逞しさ」がある。 音色が濃く息遣いが力強いので、声がスムーズに放たれるのだ。今年2月のモーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》で騎士ドン・オッターヴィオを演じたとき、悪の象徴ドン・ジョヴァンニに対して山本は「善のシンボル」として輝き、「悪ばかりがのさばってほしくはない」という人々の理念を歌声一つで表した。 その姿勢は客席を深く揺さぶったよう。この役で、いつもの倍もの熱狂的な拍手を浴びたからである。 その山本がこの秋、米子と東京で開催されるB→Cシリーズに出 演する。まずはプログラミングに驚いた。彼の日ごろとは大きく異なる境地が展開しているからである。例えば、17世紀イングランドのパーセルの耽美な歌曲から20世紀の無調オペラ《ルル》の名場面(鋭い声の技を誇るソプラノ・高橋維が共演という贅沢さ!)。そして、18世紀のバッハの悲痛な「ヨハネ受難曲」か意表を突く。 重厚な名奏を幾度も聴かせてきたロシアの達人が、アメリカの名匠と奏でるガーシュウィン、さまざまな意味で注目の一曲となる。  後 半は、シンディ・マクティー のスピード感ある小曲「サーキット」。彼女はスラットキンのパートナーでもあり、ら現代人黛敏郎のドイツ語オペラ《金閣寺》の苦悩のモノローグまで…「声の異種格闘技」に2回戦連続で挑むのだろうか? しかし、山本自身はこう語る「近現代のオペラのテノールは低音から高音まで使いながら演劇的な充実も必要となってくる役も多く、自分がかつてバリトンだったことや器楽奏者だったことがつながっているなと」。 なるほど。 全ての道のりを活かそうというタフな心構えのもとに彼の今日の芸術性があるのだろう。となれば、「これはもう聴くしかない!」と書くのみ。ステージの成功を信じて。9/27(土)15:00 鳥取/米子市文化ホール メインホール問 米子市文化ホール0859-35-4171 https://www.yonagobunka.net/culturehall/10/7(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp最良の理解者の指揮で聴ける好機だ。そしてコープランド「アパラチアの春」組曲。ヴィヴィッドな生命力と心温まる抒情性を楽しめる傑作で、マエストロの得意演目。スラットキン・ファンが各地から参集するに違いない、注目のステージだ。

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