eぶらあぼ 2025.9月号
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9/7(日)10:45 東京オペラシティ コンサートホール(16:15終演予定)問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp©Hiro Ferrari©H.Ozawa横山幸雄 ベートーヴェン・プラス Vol.11ラヴェルとの組み合わせで再発見する作曲家の新たな姿佐藤正浩(神戸市混声合唱団音楽監督)神戸市混声合唱団 秋の定期演奏会「人間の顔〜戦後80年に捧ぐ」9/14(日)15:00 神戸文化ホール問 神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349 https://www.kobe-bunka.jp/hall/57終戦80年、関西屈指のプロ合唱団が届ける平和への祈り 取材・文:岸 純信(オペラ研究家)文:長井進之介 日本を代表するピアニストの一人である横山幸雄。卓越した技術、スケールの大きい音楽づくりによって感動を、多彩かつ意欲的な企画によって驚きを聴衆に与えてきた。 多岐にわたる彼の活動の中でも目を引くのは“全曲演奏”。ショパンの独奏曲全曲演奏がギネス世界記録に認定された後、横山は「ベートーヴェン・プラス」を開始した。 ベートーヴェンによって作品番号が与えられた全曲と、他の作曲家の作品を組み合わせるというコンセプトによるコンサートシリーズである。 戦後80年も経つのに各地で戦火は止みそうにない。そこで、近年大活躍の指揮者・佐藤正浩が、神戸市混声合唱団とともに「歌声で訴えかける平和」を世に問うことに。抱負を訊ねてみた。 「9月に取り上げる4作はすべて無伴奏曲です。メインはプーランクの『人間の顔』を。 詩人エリュアールとの交流から第二次大戦中に書かれました。長年この作曲家に取り組んできた自分には大切な一作です」 圧迫された人々の苦しみを描くカンタータ「人間の顔」は、飛び切りの難曲。なればこそ、修練を積むプロ集団のハーモニーで聴いてみたい。 「ありがとうございます。僕自身は高校 生 の 段 階で合 唱に目覚めました。訓練された個々人の声が合わさり、束になり、マスになったときの重厚感や崇高さに魅力を感じました。音色も無限ですし、オーケストラの響きとは全く違う膨らみ、耀き、呟きがありますね!」 続いて、もう一つのメイン曲はシェーンベルクの「地には平和を」。1911年の初演で「作曲者最後の調性作品」と謳われている。 「まさに、シェーンベルクが12音主義、無調に向かうぎりぎり手前の時期の作で、ニ長調の調性のもとに音やハーモニーの複雑さがあり、声の使い方を極限まで活かした名作です。 作曲者 今回は「悲愴」、「月光」、「テンペスト」、「ワルトシュタイン」、「熱情」という5大ソナタを軸に、生誕150年を迎えたラヴェルのピアノ独奏曲全曲というプログラム。両者は国も時代も大きく違うが、楽曲を緻密に作り上げていく姿勢、溢れるドラマ性など、共通点も見出すことができる。今回のリサイタルによって改めて彼らの相違点と共通点が浮かび上がってくることだろう。は『 平 和に対 するユ ートピア』を描きたかったのでしょうね。 なお、今回 演 奏 する他 の 二 つ、プーランクの『フランスの歌』とリゲティの『ルクス・エテルナ』も、音楽の趣きはそれぞれ異なっていまして…」  確 かに。 わらべうたのような味わいの「フランスの歌」と… 「 は い。『 ルクス・エテルナ』はメロディが無いですよね(笑)。 誤解を恐れず言えば、音遊びとか音の実験工房といった感覚で迫る曲でしょう。一方、シェーンベルクやプーランクは、楽曲の最後に光を当てる形で書いていて、そこで人間の希望や理念を表しているようです。お聴き逃しなく願います」 最後にひとつ質問。「和を尊ぶ」コーラスの世界だが、福島県の会津出身のマエストロとしては、団員勢の関西人特有の押しの強さをどう思う? 大阪出身のインタビュアーとしては敢えてお訊ねを。 「いま、市民文化振興財団の面々が笑ってます(笑)。基本は、一人ずつ話をしっかり聴くことかな。 大変ですが(笑)。でも、いろいろなタイプの『人の声』が集まった時の感動こそが、いまも自分を合唱の世界に引き留めていますので、ご来場の皆さまには、プロの全力投球ぶりを体感して下さればと思っています!」Interview

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