eぶらあぼ 2025.9月号
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ケント・ナガノ ©Sergio Veranes Studio萩原麻未 ©Marco Borggreve成田達輝 ©Marco Borggreveケント・ナガノ(指揮) 読売日本交響楽団初登場で聴かせる円熟の「グレイト」ごほうびクラシック 第15回成田達輝 & 萩原麻未 ヴァイオリン & ピアノ デュオ・リサイタル名曲に映すふたりの絆と想い第144回 横浜マチネーシリーズ 9/21(日)14:00 横浜みなとみらいホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp11/1(土)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net56文:鈴木淳史文:林 昌英 ケント・ナガノが読響の指揮台へ初登場。 常設の在京プロ・オーケストラを指揮するのも39年ぶりという。ハンブルク州立歌劇場の音楽総監督を退任したばかりの日系アメリカ人指揮者が、日本との新たな関係を築く第一歩となるかもしれない演奏会だ。 一曲目の野平一郎の「織られた時IV ~横浜モデルニテ」は世界初演となる。 現代曲に魅せられて指揮者の道へ進んだナガノだが、野平のオペラを指揮した経験もあり、作曲家とは懇意の仲だとか。 連作シリーズの第4弾となるこの作品は、初演の地となる横浜がテーマ。作曲家によれば、その音楽的素材や発想の背後には船の汽笛が聴こえるという。 続く、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番では、ベネデット・ルポが登場。情熱を交えつつ心地よくピアノを歌わせるイタリアのピアニストが、ハ短調のモーツァルト作品の詩情をしっとりと 週末の午後を一流アーティストの演奏で過ごす、第一生命ホール「ごほうびクラシック」。11月はヴァイオリンとピアノのデュオで、成田達輝と萩原麻未が登場する。公私のパートナーとしてさまざまに充実の度を深めている彼らが、バランスよく筋の通った流れによる小品集で、ぜいたくな時間を贈る。 ヴィエニャフスキ「華麗なるポロネーズ第1番」で鮮烈に開幕したのち、エルガー「愛のあいさつ」、クライスラー「シンコペーション」「美しきロスマリン」とディライトな小曲が並ぶ。そしてテレビCM等でもおなじみのドヴォルザーク「4つのロマンティックな小品 第1曲」の旋律美に癒されてから、そのメロディが使われるクライスラー「ドヴォルザークの主題によるスラヴ幻想曲」を楽しむ。民俗的なムードも残るなか、ラヴェル「ツィガーヌ」で超絶技巧とロマの情熱を堪能。続いて渋谷慶一郎「On the Edge for Violin and Piano」、エイミー・奏でてくれるだろう。 後半は、シューベルトの交響曲第8番「グレイト」だ。ケント・ナガノは、最近リリースされたハンブルク州立歌劇場管とのブラームス録音でも、声部をまろやかに溶け合わせ、たっぷりと和音を響かせる重厚な演奏を聴かせていた。読響との共演でも、豊饒にして風格のあるシューベルトを期待したいところだ。 読響の横浜マチネーシリーズは、サントリーホールでの名曲シリーズと同一プログラムを組むことが多いが、この演奏会は横浜みなとみらいホールでの一回公演のみ。聴き逃せない。ビーチ「ロマンス」を。ビーチはアメリカで最初に成功した女性作曲家といわれ、近年再評価が進んでいる。「ロマンス」は伸びやかでどこか切ない旋律に心洗われる名品で、成田と萩原のいまの思いを伝えるかのよう。最後はサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」で、再びロマの世界とヴァイオリンの技巧に包まれ、華やかに幕を閉じる。 民俗性あふれる有名曲を要所におき、心地よい楽曲を間に配する。気楽に楽しめながら、流れにストーリーも感じさせる絶妙なプログラムで、成田と萩原の美音と名技にひたる。

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