eぶらあぼ 2025.9月号
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大野和士 ©Rikimaru Hotta砂田愛梨 ©Edio Bison金森 穣 ©Kishin Shinoyama松浦 麗昨年のメインコンサートより「ボレロ」 ©サラダ音楽祭実行委員会寺田宗永狩野賢一 ©長澤直子[サラダ音楽祭] TOKYO MET SaLaD MUSIC FESTIVAL 2025音楽祭メインコンサート《Boléro》歌とダンスが引き出すオーケストラ音楽のエネルギー54文:山崎浩太郎サラダ音楽祭 メインプログラム9/14(日)、9/15(月・祝) 東京芸術劇場、池袋エリア音楽祭メインコンサート《Boléro》9/15(月・祝)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 サラダ音楽祭事務局03-6704-9342 https://salad-music-fes.com※音楽祭の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。には歌と踊りの要素が濃厚にあることが、はっきりとわかる。これが、サラダ音楽祭のメインコンサートの面白さなのだ。 今年のプログラムは、はじめにモーツァルトを2曲。 作曲家晩年の傑作オペラ《魔笛》の序曲で幕をあけ、歌手と合唱が共演する「戴冠式ミサ」が続く。このミサ曲はハ長調という、輝かしく力強い調性にふさわしい祝典的な性格を持つ。 ハプスブルク家の戴冠式で好んで演奏されたというこの曲では、砂田愛梨、松浦麗、寺田宗永、狩野賢一という優れた独唱者と、オペラの舞台でも大野と共演を重ねている新国立劇場合唱団が、豊かで美しい歌声を聴かせてくれることだろう。 厳かな響きの声楽曲に対し、後半はダンサーの肉体がステージで躍動する。今年はペルトの「フラトレス」と、ラヴェルの「ボレロ」の2曲。ダンスの演出振付を担当する金森穣によると、「フラトレス」は禁欲を、「ボレロ」は禁欲からの解放をテーマにしているという。前者は2020年と22年、後者は24年に取りあげているが、筆者が20年に前者を観たときには、主役を演じた金森の肉体と衣裳が金剛力士像を想わせて、東洋的な雰囲気が漂っていた。 また後者では、音楽が色彩を増すのに合わせて少しずつ踊りが大きくなり、最後は9人のダイナミックな連舞で、興奮させられた。両者の性格がかなり違うだけに、そのコントラストがそれぞれの魅力と特色を、いっそう明快にするだろう。なお「ボレロ」は、指揮者にとってもオーケストラにとっても、演奏至難の曲として有名だ。大野の着実なリズムのコントロールと、都響の名手たちによる歌いぶりの組み合わせも、ききものである。これらのダンスつき2曲の合間には、ファリャのバレエ音楽「三角帽子」の第2組曲が演奏される。 本来ならバレエがあるべき音楽を、オーケストラだけで躍動させる。これも、大野と都響の腕の見せどころだ。 歌と踊りとオーケストラ。 ぜひ客席で聴いて、楽しんでいただきたい。 サラダ音楽祭。いかにも健康によさそうなこの音楽祭のサラダ=SaLaDの由来は、「Sing and Listen and Dance~歌う!聴く!踊る!」。これをコンセプトとする音楽祭のメインプログラムは、9月半ばの2日間、東京芸術劇場を中心とする池袋エリアで開催される。2018年に開始されて以降すっかり定着し、毎年楽しみにしているファンも多い。 朝から夕方まで、誰もが楽しめるさまざまな催しが各所で盛りだくさんに行われるなかで、文字どおりの中心となるのが、15日の15時から東京芸術劇場のコンサートホールで開催される「音楽祭メインコンサート《Boléro》」だ。このメインコンサートも「SaLaD」にふさわしく、歌とオーケストラとダンスの三つの要素から成っている。 コンサートをとおして演奏するのは、音楽監督・大野和士が指揮する東京都交響楽団。歌の部分を担うのは4人の歌手と新国立劇場合唱団。 ダンスを担当するのはNoism Company Niigataである。声楽とオーケストラが共演すると、オーケストラの楽器も「歌っている」ことが、いっそう明らかになる。ダンスとオーケストラが共演すると、オーケストラのリズムも「弾んでいる」ことが、いっそう聴こえてくる。 そうして、オーケストラだけの演奏を聴くと、そこ

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