41 全国大会に新潟県の高校がずっと出ていないのも、凛にとっては悔しいことだった。だが、高校生活最後の今年、野球部が7年ぶりに甲子園出場を決めた。エースピッチャーの雨木天空や一塁手の窪田優智はクラスメイトだ。「部活中、窓からグラウンドで練習する野球部の姿が見えると、別の部活なのになんだか一緒に頑張っているような気持ちになるんです」 吹奏楽部は県大会のスタンドで応援演奏をし、《戦闘開始》《ETSU》《Rocket Queen》などの応援曲で野球部を後押しした。「甲子園出場が決まった後、野球部は大スターになりました。そんな子たちと同じクラスだというのが嬉しいです」 凛たちにとって、甲子園球場での演奏は初めてだ。そして、もちろん今年は「吹奏楽の甲子園」と呼ばれる全日本吹奏楽コンクールにも初出場を目指している。自分たちも行こう、行ける――野球部の活躍が吹奏楽部をそんな気持ちにさせてくれた。 野球応援がしたくて中越高校吹奏楽部に入ってくる部員も少なくない。今年度の学生指揮者でフルート担当の小田島新太(3年)もそのひとりだ。 新太は言う。「高校では部活で完全燃焼したかったのと、野球応援に憧れていたのが、中越高校に入った理由です。動画共有サイトで見た応援の演奏がとにかくカッコよくて大好きでした」 新太は長岡市から離れた糸魚川市の出身。高校入学とともに親元を離れ、ほかの部活の生徒とシェアハウスで暮らしながら高校生活を送ってきた。 今年、名古屋先生がコンクールの自由曲に選んだのはオットリーノ・レスピーギ作曲《バレエ音楽「シ♪♪♪バの女王ベルキス」》。オーケストラの曲を吹奏楽用にアレンジして演奏する。曲は新太のフルートソロからスタートする。「最初に楽譜をもらったときは、いきなりソロがあって驚きました。プレッシャーも感じましたが、やるからには全力で演奏しようと思いました」 7月31日の県大会で、中越高校は県代表に選ばれ、今年も西関東大会への出場が決まった。ただ、新太のソロは悔いの残るものだった。「調子が落ちているときで、本番も不安定でした。西関東大会までに基礎から見直し、『自分のソロで魅せてやる』という気持ちで吹きたいです」 勝負の西関東大会は9月7日。夏休みに充実した練習を重ねるのはもちろん、甲子園での応援も大きな刺激になることだろう。 凛や新太たちが決めた今年のスローガンは「革命」。1つ目の甲子園は野球部が決めてくれた。2つ目の甲子園は自分たちの手で――。 中越高校吹奏楽部はまさに部活の歴史を変える「革命」を起こそうとしている。拡大版はぶらあぼONLINEで!→スタンドでの野球応援名古屋愉加先生左より:浅野凛さん、小田島新太さん
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