Information第613回 定期演奏会 11/29(土)16:00 高崎芸術劇場[群響創立80周年記念]特別演奏会11/30(日)16:00 高崎芸術劇場出演/指揮:飯森範親 ソプラノ:小林沙羅、森谷真理、森野美咲 メゾソプラノ:富岡明子、十合翔子 テノール:宮里直樹 バリトン:青山 貴 バス:久保和範 共演:オーケストラ・アンサンブル金沢 他曲目/菅野祐悟:新作委嘱(2025) マーラー:交響曲第8番 変ホ長調「千人の交響曲」□ 群馬交響楽団事務局027-322-4944 https://www.gunkyo.com35上野 1回1回を積み重ね、10回を終えたときに、オーケストラに何が残るかが大事ですね。今シーズンの日本人作品10曲も、同じように終わった後で何かが残るものになってほしいです。飯森 80周年のシーズンには日本の作曲家の作品を入れようと、どちらともなくそういう話になりましたね。草創期の群響をモデルにした映画『ここに泉あり』(1955年、今井正監督)には山田耕筰さんが出演されている。今の日本のオーケストラがあるのは、山田さんや芥川也寸志さんなど、偉大な作曲家の方々が一緒に歩んでこられたから。僕自身、日本人作曲家の初演を一生懸命やってきました。上野 飯森さんが西村朗さんなどの新作初演を積極的にされてきたことは大きいです。他の方が常任指揮者だったら、今回の企画は簡単には実現できなかったかもしれません。1年目のモーツァルトのとき以上に、他の曲目と組み合わせるのがたいへんでしたが、外国の指揮者にも日本の作品を知っていただくきっかけになればと思います。そのなかで新作の初演として、菅野祐悟さんの作品があります。飯森 僕の長男の円舞(えま)が作曲家を目指していて、菅野さんに相談に乗ってもらったりしているなかで、マーラーの「千人の交響曲」の前の曲を、菅野さんに書いてもらおうという話になったんです。上野 菅野さんはテレビや映画の音楽に加えて、クラシック音楽にも本当に真剣に取り組んでおられる。過去をふり返るだけではなくて、現在(いま)活躍されている菅野さんの作品があることで未来につながりますね。飯森 新作は僕にとっても大きな意義があります。「千人の交響曲」と合わせて、とても祝祭的なプログラムになりましたね。上野 「千人の交響曲」は、群響では初めての演奏です。80周年には末広がりの八がいいから8番をやりましょうと、飯森さんが就任される前から話が出ましたね。このタイミングでできるのはとても嬉しいです。飯森 しかも定期のほかに特別演奏会もあって、高崎だけで2回演奏できるのも嬉しいことです。上野 東京ではやらないと決めていました(笑)飯森 ただ、この曲はほんとうにたいへんです。僕は5回目だけど、毎回初めて指揮するような気になります。たとえば、第2部の歌詞はゲーテの『ファウスト』から採られていて、「生とは何か、死とは何か、人とは何か、人が自然と対峙するにはどうしたらいいのか」というテーマが盛り込まれている。マーラーはこのテキストのイメージを舞台ではなく、音楽で表現している。指揮者はそれを明快にオーケストラと合唱、歌手に感じてもらって、舞台が見えるかのような状況を作らなければいけない。総力を挙げなければならない作品です。上野 群響だけでは人数が足りないので、オーケストラ・アンサンブル金沢との合同演奏としました。うちが60人、金沢が40人、合計100人でちょうどいい。群馬県と石川県はともに温泉の多い県、高崎市と金沢市が友好交流都市で、さらに北陸新幹線など、いろいろなつながりがある。楽員同士も、また事務局のスタッフも交流できる。日本のオーケストラ界ではこうしたつながりが、ますます大切になるとも考えています。飯森 群馬交響楽団80年の歴史の頂点となるものにしたいですね。お客様も全国からお越しいただいて、温泉とあわせて楽しんでいただければと思います。上野 そうですね。群響を聴いたことがないという方も、まだまだたくさんいらっしゃると思います。高崎芸術劇場ができて、ここを拠点に音作りをするようになって、6年目に入りました。今の群響はこういうオーケストラだということを、皆さんに知っていただける機会にしたいです。総勢400人でアニバーサリーを寿ぐ取材・文・構成:山崎浩太郎 写真:編集部
元のページ ../index.html#38