左:アンソニー・ロマニウク 右:柴田俊幸 ©sightways©Eichi Uemura“いま、ここで”生まれる現在進行形のバッハ“夭折の天才”貴志康一の未発表曲2曲を世界初演!Interview柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ) & アンソニー・ロマニウク(チェンバロ 他) 日本ツアー2025豊田喜代美(ソプラノ)豊田喜代美 ソプラノリサイタル 公式演奏歴五十周年記念ドラマティックソング 感謝をこめて次代につなぐ「貴志康一」の歌曲9/23(火・祝)14:00 サントリーホール ブルーローズ(小)問 二期会チケットセンター 03-3796-1831 https://nikikai.jp/66取材・文:岸 純信(オペラ研究家)文:小室敬幸 即興演奏は、民族音楽やジャズなどの領域であって、楽譜に基づいて演奏をおこなうクラシック音楽に関係のないスキルなのだろうか? J.S.バッハをはじめとする多くの作曲家たちやSP時代の偉大な演奏家には即興の名手が多かったのだから、答えは否である。 現代にこの感覚を蘇らせてくれるのが柴田俊幸とアンソニー・ロマニウクだ。彼らのライブは、直前のリハーサルまで曲順が決まらなかったり、曲そのものが変更になったりと、とにかく実際に演奏しながら最善の形を探っていく。そして演奏がはじまってから共演者同士で刺激を与え合ったり、聴衆の空気感を感じ取っ 「新発見です!」と言われたら、「えっ、何を?」と関心が湧き、「早逝した作曲家の作品が2曲も!」となれば興味も大いに増す。この9月、「公式演奏歴50周年記念」と銘打ち、早逝の作曲家・貴志康一を取り上げるソプラノ・豊田喜代美の胸の内を、まずはじっくり聞いてみよう。 「私は東京生まれですが、母方の祖母が大阪出身で、小さい頃からはんなりとした文化にも親しんでいました。28歳で没した貴志康一の曲は、1987年に初めて歌ったのですが、〈赤いかんざし〉など、送られてきた楽譜を譜読みしたところ、すっと心にそのまま入ってきたんです。詩も曲も本当にまっすぐで、脳が揺さぶられました。お祭りで感じたことを素直に表現されていたり……最初からオーケストラ歌曲で作ってあるのも印象的でした。私がドイツで歌ったときは〈かもめ〉が特に喝采されました。貴志自身は楽譜に『西洋の心に和の感覚を添わせてもらえたなら』とドイツ語で控え目に綴っています」 1909年大阪に生まれ、ジュネーヴに留学しベルリンで成功した貴志は、歌曲作りでは自作の詩を用い、管弦楽伴奏のスコアを書いた。ところが…… 「甲南学園貴志康一記念室からいただいていた自筆譜のコピーを、このリサたりすることで、その場で化学変化が生じ、聴衆の立場からすると今まさに音楽が生まれていくかのような感覚になれるのが、この二人のライブを聴く最大の魅力だ。J.S.バッハを基調に、高崎ではC.P.E.バッハ、グラス、坂本龍一も! 東京ではJ.S.バッハだけだが、二人による編曲作品も加わる。今回の公演の演目を含む新しいCDも必聴だが、彼らの本分は生演奏なのだから絶対に聴き逃がすな!8/21(木)19:00 高崎芸術劇場 音楽ホール8/26(火)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)問 テレビマンユニオン03-6418-8617 https://www.tvumd.com※愛知、東京、兵庫、山口でデュオ/ロマニウク・ソロ公演あり。イタルを機に改めて読みましたら、想像以上にたくさんの曲が入っていまして、〈大島おけさ〉(歌詞:西條八十)、〈春之歌〉(源実朝)の2編を目にして『あれっ? 〈天の原〉の他にも他人の詩に音を付けておられたの?』と気付きました。そして、どちらも未発表の曲と判り、9月のステージで世界初演する運びとなりました!」 演奏家としての誠実さが見つけ出したこの2曲。何としても聴きたいもの! 「ありがとうございます。〈大島おけさ〉の素晴らしく明るい曲調などとても面白いんですよ。ただ、2曲ともやはりオーケストラ伴奏で書かれていたので、ヴァイオリニストの澤和樹さんがヴァイオリン&ピアノ版に編曲され、ご自身とピアニストの渡辺健二さんで伴奏してくださることになりました。大変ありがたく思っております」 なお、当日はほかにも大注目のポイントが。 「実は、今回、貴志康一名義ではない『別名で書かれた歌』がいくつも出てきました。ジャズ風の曲調もあったりで、彼がどんな思いで遺したのかと気になるのです。そこで、生まれて初めて、リサイタルにトークコーナーを設け、この『別名義の曲』もそこでご紹介したく思いますが、昔からそれは緊張しやすい質で、舞台で失神しないよう気を付けます(笑)。ご来場をお待ちしております!」
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