eぶらあぼ 2025.8月号
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左より:ジャン=クリストフ・スピノジ/崔 文洙/砂川涼子 ©Yoshinobu Fukaya奥村 愛 ©Toru Hasumi加藤昌則弾き振りのヴィヴァルディ「四季」とイタリア・オペラの名旋律をすみだクラシックへの扉 第33回9/12(金)、9/13(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィルチケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp65ジャン=クリストフ・スピノジ(指揮/ヴァイオリン)新日本フィルハーモニー交響楽団昼クラシック 2025 奥村 愛 〜ヴァイオリンとヴァイオリニストが辿った道〜 愛用の楽器と歩んだ歳月を彩った名曲たち文:江藤光紀文:東端哲也 秋の到来を告げる9月、新日本フィルの「すみだクラシックへの扉」では趣向を凝らした企画や有名曲のハイライトなどで祝祭的な気分を盛り上げてくれる。 前半はヴィヴァルディの「四季」。ヴァイオリン独奏とオーケストラが春夏秋冬をイメージ豊かに描き出す超名曲だが、このコンサートを指揮するジャン=クリストフ・スピノジと新日本フィルの誇るソロ・コンマス崔文洙が独奏を弾き分ける。スピノジは2010年の初登場以降、新日本フィルとは共演を重ねてきたが、もともとはヴァイオリニストとしてキャリアをスタートさせている。今回は得意のバロック音楽でタクトと弓を持ち替えながら、崔と躍動感あふれる競演を聴かせてくれるだろう。 後半はソプラノ砂川涼子が〈私が街を歩くと〉(ラ・ボエーム)、〈私のお父さん〉(ジャンニ・スキッキ)ほか、イタリア・オペラの名アリアを歌う。砂川といえば藤原歌劇団や新国立劇場の公演の 平日の昼下がり、音楽と心なごむトークをお届けする文京シビックホールの人気企画「昼クラシック」。9月には、瑞々しい演奏で幅広いファン層を持つヴァイオリニスト奥村愛と、共演ピアニストとしても多くのソリストから絶大な支持を集める作・編曲家の加藤昌則が揃って登場。 今回は「ひとりの音楽家がヴァイオリンと出会い、その楽器とどのように向き合い、どのように歩んできたか…」がテーマということで、まずは奥村の“愛器”である1738年イタリア製「カミロ・カミリ」との出会いや旅路について語られるはず。そして、タルティーニ(バロック)やモーツァルト(古典派)からブラームス(ロマン派)、そして本人もヴィルトゥオーゾであったサラサーテまで、作曲家や演奏家の歴史とリンクしたヴァイオリンの名曲たちを披露。その“現代版”として登場するのが、これまでに数多く共演を重ねている加藤であ主要ポジションを担い、今や日本を代表するディーヴァの一人。透明感あふれる歌声が高揚感を一層高めてくれることだろう。 また、これらのアリアの間にはロッシーニの《セビリアの理髪師》《泥棒かささぎ》《ウィリアム・テル》といった傑り、その名コンビ誕生の秘話などにも期待したい。 特に、彼女から正式な委嘱を受ける前に書いてしまったという「Breezing air」(2010年リリースのアルバム『ラヴェンダーの咲く庭で』に収録)や、茨木のり子の詩集『見えない配達夫』に9/19(金)14:00 文京シビックホール(小) 問 シビックチケット03-5803-1111 https://www.b-academy.jp/hall/作序曲が挟まれている。ロッシーニもまた抜群のリズム、テンポ感の持ち主スピノジが得意とする作曲家だ。はじめてクラシックの扉を開く人のみならず新シーズンを新鮮な気持ちで迎えたい人もワクワクする“ガラ風”コンサートになりそうだ。収録された「怒るときと許すとき」からインスピレーションを得て彼女のために作曲したという「燻(くゆ)る煙と共に」(2015年初演)については、ぜひ当事者の二人から詳しい話が聞けるのを大いに楽しみにしたいところである。

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